2弦の美学
どーもっす。ああ、やっぱ張りたてはいいなぁ。音の粒立ちが最高だよね。ほら、クリーントーンのアルペジオなんて、光の粒が降ってくるみたいじゃない? ポロポロキラキラしててさ。わかんない?まぁ、ニュアンスよ、ニュアンス。
何にせよ、俺の純粋な魅力が一番引き立つよねってハナシ。
ガッツリ
でもさ……クリーントーンの単音な俺の美しさは、別格なわけよ。あれじゃん? 寝起きのスッピンでもめちゃくちゃ綺麗な女、みたいな? それはちょっと違うか……ま、いいや。変な喩えは要らないね。音を聴けばわかるわけだし。
うちのオーナーもさ、やっぱわかってるワケ。
弾き癖なのかもしれないけど、ソロなんかでね、
C(ドミソ)の和音にB♭(シのフラット)が入るでしょ? あそこでキラ〜ン、ってなわけよ! 俺の11フレットを押さえてさ、これ見よがしに
え? ナルシスト? 俺が? いやでも俺、実際美しいじゃん? 音も見た目も。やっぱ「2」と言えば、二枚目とか二の線とか、美形の代名詞的なとこあるじゃない。もう、しょうがないよね。それは事実だから。えっと、あれは何て言うんだっけな、ああ思い出した。細マッチョ? ね、俺細マッチョ系じゃない?
1弦みたいにほっそほそでもなく。3弦みたいにデb…えっと、どっしりでもなく。ねえ、今デブって言いかけたの、ナイショね。絶対言わないでね。シー!! え、4〜6弦? いや、巻き弦の皆さんはちょっと…ジャンルが違うっていうかww
うん。1弦はウザイっすね。やっぱ3弦も言ってました? そうなんだよ。あいつすぐ、グイ〜ッてしてくるから。いや、チョーキングは俺も他の弦もやるけどさぁ。
でも1弦の方が回数は断然多いじゃないですか。その度にグイ〜ッだもん。すっごいグイ〜ッしてくんだもん。てめえ何音上げる気だよ、いい加減にしろこの野郎、何だよやってらんねー!! って、そりゃぁなりますよ! たまにね!!
いや、キレてはないよ。大丈夫大丈夫、ちょっとイライラを思い出しただけ。だってさ、俺1弦と3弦に挟まれちゃうんだから。ギュウギュウっすよ。肩身狭いんすよ。音も出せないのに、ぎゅいんぎゅいん揺らすだけ揺らされてさあ! マジで! コンチキショーって!
マジで? 3弦、心配してくれてるの? 俺の方が大変そうって? えー、うそー。3弦マジいいやつじゃん。デブとか思って悪かったな……あいつもグイ〜ッてされてんのにな。それなのにいつも、ジーッと我慢してるもんな。
今度グイ〜ッてされた時は、俺が守ってやらなきゃだな。うん。それでこそ2の線だし! 『美』担当はツラいっすわ。ま、引きの美学ってのもあるし。あれ、俺いま良いこと言ったな。引きの美学! うんうん。
ねえピックくん、これちゃんと書いといてよ。忘れずにね!
しかし、1弦の野郎は一度がっつりシメとかなきゃいかんな………あっ、今のは書かないで! ただの独り言だから。いいな、ぜってえ書くなよ? 書いたらキレッかんな?
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