第1話 雨の訪問者


仕事を終え、秋彦は、家に帰ってきた。


今日も、雨が降っている。


嫌な予感を感じながらも、玄関の鍵を開け、中に入った秋彦は、家の中に漂う生臭い臭いに、口元を押さえた。


吐き気に、ウェッウェッとなりながら、その臭いの元へ行く。


それは、昨夜、女にもらったコンビニの袋だった。


秋彦は、顔を歪めながら、袋に手を伸ばす。


「腐ってるのか…?」


袋に手をかけ、中を覗いた秋彦は、悲鳴を上げ、その場に座り込んだ。


「うわぁっ!」


コンビニの袋の中には、へその緒のついた血だらけの赤ん坊が入っていた。


「何なんだよ…!」


口元を押さえたまま、指先で袋を掴むと、秋彦は、ゴミ箱へ投げ捨てる。


その時、秋彦の耳元で、女の声が響く。


「私の赤ちゃん…。」


「えっ…?」


声の聞こえた方に、ゆっくりと視線を向けると、びっしょりと濡れた女が青白い顔で、秋彦の左側から、彼の顔を覗き込んでいた。


「ひぃやぁ!!」


悲鳴を上げ、飛び上がった秋彦だったが、フッと洋子の言葉を思い出す。

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