第1話 雨の訪問者


一番奥の四畳半の寝室で、布団を敷き、さて寝るかと布団へ入ろうとした時、寝室の窓をコンコンと叩かれ、秋彦は、ビクッとなった。


カーテンが閉められた窓の外、雨は、まだ激しく降っている。


掛け布団に手を掛けたまま、窓の方を見つめ固まっていると、また、コンコンと叩く音がする。


ゆっくりと布団から離れ、畳の上を這うようにして窓に近付き、秋彦は、カーテンを掴み、ゴクリと息を飲み込むと、勢いよくカーテンを開けた。


「ひゃあ!」


変な声が出て、秋彦は、口を押さえると、震える瞳で、見つめる。


先程の女が立っている。


同じ服装で、びっしょりと雨に濡れ、俯き加減に立っていた。


秋彦は、少し怒ったように、窓を開けると、怒鳴るように女に言った。


「何ですか!あなたは!こんな時間に、人騒がせな!」


怒鳴られ、女は、ビクッと身体を震わせると、スッと、袋を持った手を伸ばす。


「これ…お礼です。」


女が持っていたのは、コンビニの袋だった。


見ると、飲み物や、ちょっとした食べ物が入っている。


「困ります! 」


秋彦は、言ったが女は、袋を彼の手に渡し、激しく降る雨の中をビシャビシャと駆けて行った。


「ちょっ.........!」


女を止めようとしたがその姿は、スゥーッと暗闇に消えて行った。

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