第1話 雨の訪問者


「風呂に入って、暖まりませんか?」


そう言いながら、風呂場からリビングへ向かうと、女の姿は、もう、そこにはなかった。


玄関へ行くと、綺麗にたたまれたバスタオルが置かれ、玄関のドアは開け放たれたままだった。


いつの間にか帰ったのか。


それにしても…


「何か一言ぐらい言って帰れよな。」


ハァと疲れたように息をつくと、秋彦は、少し強めに玄関のドアを閉め、鍵とチェーンをかけた。




風呂に入り、やれやれとリビングのソファに腰を下ろした秋彦は、柱時計を見る。


もう12時を過ぎていた。


「もう、こんな時間か…。寝るか。」


独り暮らしをしているのに、こうやって、たまに独り言のように、声に出して言ってしまう。


なんだか自分の行動に、おかしくなり、秋彦は、クスッと声を上げ笑う。

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