第1話 雨の訪問者


浴室からバスタオルを持ってくると女に渡し、秋彦は、リビングへと案内する。


「今、風呂を入れてますから。」


秋彦がそう言ったが女は、キョロキョロと部屋の中を見渡し、聞いていないようだった。


コーヒーでも入れようかと、秋彦は、キッチンへと向かう。


カップにコーヒーの粉を入れながら、フッと、


『コーヒーを入れて持っていったら、消えてた…なんてないよな?』


そう思いながら、軽く頭を振り、秋彦は、口元に笑みを浮かべる。


「ないない。うん、ないない。」


独り言のように自分に言い聞かせ、コーヒーを入れたカップを持ち、リビングへ向かった。


女は、リビングの窓に立ち、カーテンの隙間から暗い外を見つめていた。


女の姿に、ホッと息をついた秋彦は、テーブルの上にカップを置く。


「コーヒー、どうぞ。」


秋彦が言うと、女は、振り向き微笑んだ。


「ありがとうございます。」


女の微笑みに、少し頬を赤くすると、秋彦は、照れたように頭を搔く。


「ちょっと、風呂を見てきます。」


そろそろ、湯が溜まった頃だろうと、風呂場へ向かう。

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