第六十二話「読書」

「うーん……」


 最初は簡単だと思ったこの本だが、読み進めていくと所々難しい。

 おそらく大学生用の参考書か何かだ。


 とはいえ一応それなりの歴史と地理に関する知識はついた気がする。



 その中でも不思議だったのが、レベルと<職業>が人類に発現したとされる時期がずれていることだ。


 最古のレベルの記録は約2500年前、<職業>は約2000年前と、レベルの歴史の方が古く500年も離れている。

 また、モンスターにレベルが発現した時期も約2500年前と同時期だが<職業>はモンスターに未だ発現していないとされているらしく、これも不思議だ。



 また、この世界は大体の国が独裁らしく、これは<王>という<職業>が深く関わっているらしい。


 王が<王>ならばその国の国民は<王>がすることに一切の不満を感じず、またそれは永久に続き、それが<王>が王たる所以らしい。

 一応スキルボードで<王>は見たことあるが、確かに政治向きの<特能>が多かった気がする。


 だが、それだけで国民が一切の不満を感じない事は可能なのだろうか……

 なにか国民を洗脳するような秘密が……


 どこか信じられないがこれ以上は怖いので考えるのをやめよう。


 それはそうと、ケイやカイが上級職のように基本的に職業は遺伝が大きく関わっているようだが<王>のような職業で城の中で生まれた人は大変そうだ。

 絶対に城に軟禁状態で英才教育を施され、嫌でも国を治めなければならなくなるだろう。


 ちなみに、セントエクリーガ城下町を囲む壁は<王>でない王が作ったらしく、工事が始まってから今でも壊す派、作り直す派、残す派で分かれているようだ。


 あの壁も一応100年以上の歴史があり、情報だけを見ると個人的には老朽化の心配でリニューアルをした方がいいと思ったので、<王>が造っていないというのは本当なんだろう。



「……ふーん」


 俺は本を閉じて表表紙と裏表紙をサッと眺める。


 なかなかいい本だった。


「ねえねえ!アレン!」

「これが青色?」


 俺が本を片づけようと立ち上がろうと腰を浮かせると、それを見計らったかのようにケイが興奮気味に俺の袖を引っ張った。


 ケイが指差している本のページを見るとそこには青色の龍と柄の先に縄?がついている剣士?が大量の人間?と戦っている絵が描かれている。

 周りに書いてある文字を読むに、どうやら昔に起こった戦争に不死身の龍が出てきたという話のようだ。


 この青色の龍が青色かと聞かれればYESと答えるが、これが何色かと聞かれればネイビーと答える微妙な色合いだ。

 だが、はっきりと言えるのは地球の空の色ではない。


「うーん……うん、青色だよ」

「でも、俺のいた世界の空の色とはちょっと違うかな」


 俺は首を少し傾げながら斜めに頷く。


「なーんだ、違うんだ」

「わたし、この子になら会ったことあるのにな……」


 ケイは少し口をすぼませた。


「……ん?」


 俺は頭の中を整理するためにケイの顔と本に書いてある絵を交互に見る。


「え?ケイちゃんいつ会ったの?」

「この龍っておとぎ話の生き物だよ?」


 ヒナコがいきなり立ち上がったので、俺はヒナコの唇に人差し指を当てると、ヒナコは顔を少し赤らめ静かに座る。


 俺もケイの話を聞くために中腰だった腰を椅子に降ろした。

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