第4話 C4-『与えられた……刹那……』
『Cウイルス』によって死者が増加し、世界の人口が10分の1にまで減った世界。
冷凍カプセルから目覚めて50年後の世界。私は、りんたろうと東京への旅を始めて7日が経った。
目が覚めると、全身に激痛が蔓延った。
頭、腕、足、腹部。すべての臓器が痛みを伴っていた。
口をあけて言葉を発しようとしても、痙攣のような痛みでうまく話せない。
体をわずかに起こそうとしても、極度の筋肉痛のようで、まともに体を動かせない。
どうしてこうなった?
私は、記憶をさかのぼり、その原因を探る。
確か、りんたろうと泊まった豪邸で、楽しく食事をしている最中で、その記憶は止まっていた。
そこからは、悪夢の記憶が蘇ってきた。
突然の衝撃。ガラス戸を破る物体。それは野性の『熊』だった。とても凶暴な熊だった。
その恐ろしい物体は、私とりんたろうを襲うため部屋に侵入してきた。
絶叫と恐怖。暗闇と戦慄。血の気が引いて錯乱した。
思い返して結論を言えば、野生の熊が家の中まで襲ってきたのだ。
日が差して明るさが眼を刺激し、まぶたが開く。ああ、私は助かったのだと認識した。
体中の痛みはあるが、生命の危機から開放された悦びに、精神は安堵している。
「ニアちゃん、大丈夫かい?」
「りんたろう……無事でよかったわ」
私は、自分の体のことより、りんたろうが無事でいる事の方に安心した。
後から、りんたろうに聞かされた話によると、『Cウイルス』によって人類は減少し、自然生物は天敵と自然破壊の問題を排除されて増殖した。そこで人類の天敵となりううるのが、熊をはじめとする、凶暴な生物たちだった。もちろん、人類は、そんな危険生物に立ち向かうだけの兵器を開発していたのだが、やはり自然生物の動向を人間が察知できるはずもなく、毎年一定の被害者が出ているとのことだった。
『Cウイルス』によって激減した人類。そして生き残った動物たち。
しかし、動物達は、人間の犯した罪を粛清させるかの如く、さらに凶暴化して人間を襲った。
それはまるで、人間の犯した罪を許さないと言わんばかりの、所業のようにも思えたのだった。
「ニアちゃん……行こう……」
りんたろうの声は、いささか震えていたかのようだった。
それは、この世界の変えようの無い虚しさを語っているような口調だった。
だから、私も、何ひとつ反論するでもなく、何ひとつ質問するでもなく、ただ、彼の後をついていくのみであった。
その次の日。
私は、私の正体を知ることになる事を思いもしなかった。
殺人犯の汚名を背負っていることを。
C(シー)- 50年後のウイルス世界 しょもぺ @yamadagairu
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