ペアリング
「ペアリングが欲しい。」
靴もお揃いにするのを嫌がった君がそんなことを言うものだから、僕は心底驚いた。
「いいけど、どんな心境の変化?」
「あのね、綾がね…」
聞けば友達が彼氏とのペアリングを見せびらかしてきて、羨ましくなったのだと言う。単純な奴だ。でもそこが可愛い。
「じゃあ今から見に行く?」
「今から!?いいの?」
君が嬉しそうにはしゃぐ。子供みたいで可愛い。
この辺で唯一のショッピングモールに、高校生でも手の届くアクセサリーショップがある。僕達はそこでペアリングを探すことにした。
「どんなのにする?」
「可愛いけど、あんまり目立たない細いのがいい。」
「じゃあこれは?」
「うーん…」
「これは?」
「うーん…」
そんなやり取りを繰り返し、すっかり陽が沈んだ頃、ようやく納得のいくものが見つかった。
刻印も入れられたが、そこまではいらないから早く着けて帰りたいと君は言う。
会計を済ませ近くのベンチに座り、2人で左手薬指に指輪をはめ合う。
「なんだか結婚式みたいだ」と思うと背筋がピンと伸びる。
左手を並べて写真を撮ると、君はその写真をニヤニヤしながら眺めていた。
「そんなに嬉しい?」
「うんっ!」
少し照れながらも満面の笑みに、もう何度目か分からないが君に惚れ直す。
ぎゅっと抱きしめ、頭を撫でながら、「そのうち婚約指輪も結婚指輪も買ってやるからな。」と心の中で呟いた。
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