クローバーの栞

「美咲っていつもクローバーの栞持ってるよね。」

ちーちゃんは本を閉じようとする私の手にあった栞を見ながら言った。

「うん、御守りなの。」

私がそう言うとちーちゃんは、「なるほどね~。それよりさ…」と違う話を始めた。


クローバーは5年前、私が10歳のときに見つけた。

当時私は好きだった男の子に大好きな本をバカにされ、落ち込んでいた。

そんな時、母が四つ葉のクローバーの話をしてくれた。

「四つ葉のクローバーを見つけるとね、幸せになれるんだって。クローバーを探すだけで幸せになれるなんて嬉しいよね。みさちゃんも探してみたら?」

私は半信半疑だったが、近くの土手で四つ葉のクローバーを探してみた。

すると15分も経たないうちに見つけられてしまったのだ。

帰宅して母に見せると「すごいすごい!」と誉めてくれ、あっという間に栞を作ってくれた。

「これを御守りとして持っていれば、きっといつでも幸せでいられるよ。」

母が願いでも込めて作ってくれたのか、栞を持ち始めてからは不思議と良いことが続いた。

そんなわけで私は今も御守りを持っている。


「美咲~!」

一人で延々と話していたはずのちーちゃんが、私の顔の前でパタパタと手を振っていた。

「どうした?ぼーっとして。」

どうやら私は思い出の世界に行っていたらしい。

「なんでもないよ。ごめんね、ちょっと昔のこと思い出してた。」

そう言うとちーちゃんは、「なあんだ」と笑う。

「そういえばさっき言い忘れたんだけどさ」

「なあに?」

「クローバーの栞可愛いよね。私も欲しい!」

ちーちゃんの言葉を聞いて嬉しくなった私は、昔の母のように四つ葉のクローバーの話をし始めた。


こうしていつまでも幸せは連鎖していく。

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