2:嬉しい、楽しい喧嘩
「単刀直入に言おう。
今回の件、
口元をナプキンで拭き取った
先制、牽制の
「単刀直入に言おう。
無理だ」
それを、
思った通り、どうやら旦那には、やや感情的な嫌いが
「大方、もう軽くは説明、受けてんだろ?
一度、交わした
滅多な事が無い限りはな」
テーブルに足を乗せ露悪的に振る舞う。
「両親の承諾も得ず、未成年者の命を刈り取る。
これは、滅多な事には含まれないと?」
「残念ながら、そのケースではねーな。
こちらとしては、本人の意地を尊重してんでね」
「あんまりではないかしら?
私達は、
「進学や就職とは
それは、あんた
そもそも、彼女はもう高三。ぼちぼち成年だ。
二人揃って、押し黙った。
なるほど……どうやら、少なからず自覚は
まぁ、そうじゃないと、俺はここに招かれてないだろうしなぁ。
「ならば」
両手を組み顎を乗せ長考した
「せめて
「却下。守秘義務って物が有る。
てか、あんた
そもそも
「……っ!! そっちこそ!
勝手に人間の世界に来といて、自分達の秩序を持ち込むな!
郷に入っては郷に従え! そんな事も知らんのか!?」
おっ。
「おいおい、馬鹿言えよ。
俺がこの家に来た時点で、世界はともかく、少なくともこの家のトップは俺なんだぜ?
俺に
それが不満だってんなら、
左手を頭の後ろに回し、椅子をグラグラ揺らし、右の人差し指で
我ながら、
にしても俺、割とレスバ強いなぁ。
まぁ、一年も偏屈家に付き合わされてりゃ、自ずと伸びるかぁ。
「このっ……!!」
「あなた。ちょっと、落ち着いて」
「お前は黙ってろ!
そもそも、お前が早く俺の言う通りにしない上に、
「な、何よ、その言い方!
あなただって、私の言葉になんて、耳もくれなかったじゃない!
私があんなに、何度も何度も、必死に訴えたっていうのに!」
「当たり前だ!
誰が了承して
「そもそも、放任主義にしてたのは、あなただって同じでしょう!?
私にばかり、責任を押し付けないでよ!」
あーあ……ほら見ろ、予想通り。
すっかり、
「く……くくっ……。
あはははははははっ!!」
そのまま、ひぃひぃ言いながらテーブルを何度か叩き、両親と使用人の視線を受ける。
「な、
「そうよ!
「いやー、
ずぅーっと、性懲りも
何とも不
これが劇団なら、一体、どれだけの世代を跨げば客を呼び込めるのやら。
それよりもっと前に、人類なり地球なりが滅ぶだろうぜ」
「貴様ぁ……!!」
「そもそも、貴様が
「あー。やっぱ、そう思う?
違うんだなぁ、これが」
「……何だと?」
「
これが
冷静さを取り戻した二人が、互いを見合う。
答えが出なかったらしいので、解説に入る。
「
日本だけでも、たった一年の内に、こんだけの人間が、
そうじゃなくても、病気や災害、事故などによって毎日毎日、
そんな状況で、数多くの自殺志願者の中から、なぜ
あんた
「答えは、簡単。
一年以内に本気で他界する
要するにーー
俺達が
「なっ……!?」
ガシャン。
そして、真っ白だったカーペットを、ワインの、ドス黒い赤で染めて行く。
「
起き上がった
先程までとは、何かが変わった色で。
「
そんな馬鹿な
どうせそれも、我々を
そうに決まって「嘘じゃねぇっ!!」」
胸の中で暴れ狂ってる、悲しいんだから憎いんだか苦しいんだか、良く分からない感情と一緒に。
「
あんた等がいつまでもいつまでも、あいつの思いなんてガン無視して、『これがあの子の、お前の、あなたの為だから』って決め付けて、馬鹿みたいに、互いに押し付け合ってっからだろうが!」
「っ……!!
貴様に、何が分かる!?」
「分かってんよ、全部!! あんた等なんかより余程な!
俺達の力で調べ上げた情報、未来の分までセットで教えてやろうか!?」
……悪ぃ、
お前に無断で、余計な
お前は喧嘩が
だがなぁ……もう勘弁ならねぇ。
あいつが……
「あんた等、離婚寸前なんだろ!?
原因は、
それにより、
ビクッと
「それを
『新しい
でも、
『それでも愛してるから、傍にいてくれ』って!
けど言う事を聞かずに、
そして、その度に
あんた等もう、十七年も、そんな堂々巡りを繰り広げてんだろ!?
陰でコソコソと行っていたそれを、
もう、物心が付いた頃から
あんた等が互いの事を想って口論する度に、
『私の
繰り返そう。
「違う……違う、違うっ!
誰も、
「そうだ!
にも
詮無いと理解していても割り切れずに
そして、
『何もかも自分が悪いんだ』!!
『自分さえ
そう確信、微塵も疑わない、未練たらたらなまま、
一気に捲し立てた
そうだ。
とどの
亡くなる事を
気休め程度の、救済システムでしかない。
俺達……少なくとも俺は、死神なんていう、人間が勝手に名付けたイメージから連想される
どんだけセーブ、ロードを繰り返そうと、人間を延命させる
死ぬ前に平和的、理想的に殺す
半ば冷めた俺は、気付けば馬乗りになっていた
「もう、分かったろ?
それは、
あいつは、あんた等の子供を、幸せを、笑顔を、本当の家族に戻るのを、誰よりも切望し続けてるんだよ」
「……だとしてもっ!
死神の手により、
「ーーあ?」
と思ったら、
今度は本気で、ブチ切れた。
幾ら
頑固者なんて言葉じゃ片付かない
「おい。
こんだけ話しても、まだ事の重大さを、深刻さを理解してねぇのか?
屈んで
「じゃあ、
その二ヶ月を失う代わりに、自分の望み通りの幸せを、自分の望み通りの死期、結末を選ぶよりも。
このまま、
それでも、絶えず笑顔でいる
そんな、想像するだに恐ろしい、胸が張り裂けそうな苦しみを。
この
自殺するしか選択肢が見付けられなかった未来を、下手すりゃあと数秒後にでも死ぬなんて最悪なイレギュラーさえ起こり得るバッド・エンドを、実の娘に強要するのが、正しいとでも言うのか?
……それでも父親かよ、
この世にはなぁ……!! 死ぬ
それが今の、無力で無情で無秩序な、この世界の現状なんだろがぁっ!!」
「もう、止めてぇっ!!」
全員が視線を引かれた先には案の
「
私……
思いの丈を全部ぶちまけ、
「
お願い、待って!!」
「止すんだっ!!
傍に居た
二人の顔は大分、青褪めていたが、それも無理ないだろう。
今の
実際には死なないし、体にダメージを負うだけだろうし、それなら俺の魔法で
が、万が一も有り得る。それに第一、そんなんを大前提にのうのうと待機してるだけだとか、気持ちの
早く、見付けて止めないと!
「
イヤホンで
が、一向に返事が帰って来ない。
この肝心な時に、何やってんだ!!
「こちらです。
当てがなくても片っ端から探してやろうと俺が立ち上がると、それまで傍観、黙秘を決め込んでいた
そして、開けっ放しのドアを横切り、ゆっくりと歩き出す。
「……」
この緊急事態に
確信してるとでも言うのか?
「……!!」
考えても埒が明かない。
今は、
※
「はぁ……」
バルコニーにて、
理由は明白。これまで続けて来た『物分かりの良い子供』の仮面を捨て去り、年相応に叫んでしまったからだ。
「
「別に普通だよ。あれ
よもやの返答に、両腕を乗せていた手摺から離れ、仰け反った
声の聞こえた方向には、同じく手摺に背中を預けスマホを弄っている、
「か、
いつから、そこに!?
そもそも、どうして私の居場所が!?」
「
てか、これ位、余裕だから。死神の技術力、舐めんな」
そんな、クールでドライな態度と、相手が同性(?)という事も有ってホッとした
「私の両親、
それは、恋人同士になってからも、変わらなかったらしいんです。
でも、互いに目も言葉も交わさくなった時は、晴れた青空や夕空、星空を見ながら、仲直りしてたらしいんです。
私の名前は、そこから付けられたんです。『静かな、静けさを導く空』。
そんな風に、誰かに平穏を
一通り語り終えると、
「とんだ皮肉ですよね?
誰かを仲裁すべき人間の私が、誰かを仲違いさせようとしてるなんて。
その
私は、ただ……ママにもパパにも、笑顔でいて欲しいだけなのに……」
「『全部、
それまで無表情を貫いていた
「……
何か、言いたい事でも?」
「無きゃぁ来ないでしょ。
基本、裏方担当の
スマホを仕舞った
「簡潔に言うよ。
井の中の蛙の分際で」
「……!!
あなたに、何が分かるんですか!?
ちょっと私の情報を
「別に、そんな
そこら辺の配役は、そっちの両親やケーゴみたいな、馬鹿正直な連中にでも当てな。
こっちのスタンスは、憎まれ役を買ってでも、そっちに説教垂れるってな感じだから」
そこまで言うなら、聞かせて
「……昔、とんでもない馬鹿な
そいつは、両親が実際に傍に居るのに、心も口も開こうともせず、歩み寄ろうともせずに、色んな事が面倒臭くなって、自暴自棄になった果てに死ぬ道を選んだ。
家族から自分に関する記憶の一切を消去し、自分という存在を無かった事にした上で、ね」
意外にも、
一つだけ決定的に違うのは……
「……どうして、そんな
その人の両親も、仲が悪かったんですか?」
「別に。
食生活が祟って父親が左半身付随になっても、仕事が忙しくなければ献身的にサポートしようとする
そいつ自身は、やりたくてやってた
他にも、毎日の家事もするわ、足りなくなった生活品や調味料、食料の調達や交換もするわ、役場や郵便局の用事も
最早、ハイヤーやパシリみたいな感じでね。
そいつだって、コドオジとはいえ、月に何十万も稼ぐ位の売れっ子だったってのにね」
「確かに、同情は禁じ得ませんね。
でも、自殺したくなる位に追い込まれてるとは思えませんね。
他にも、何か理由が?」
「ビンゴ。
とんでもなく不仲になってる、愚かな兄貴が
その息子は、その兄貴の事を、陰で『
挙げ出すと切が無いから
映画版じゃない方のジャイアンが、あのまま三十代の家族になったみたいな?
そんな、好感度や信頼度がゼロ通り越してマイナスでカンストしてる様な、最低最悪の真性のド
そいつとの縁を切りたいってのが、その
そいつへのヘイトだけで、『
「うわぁ……」
あまり考えたくはないが、酷く不愉快なのだろう。
聞くからに、関わりたい人種じゃない。
そんな人間が家族、しかも自分より上の兄だなんて。
その
と、顔に書かれている。
「って。過ぎた事は、どうでも良いんだ。
君に言いたいのは、つまり、まだ家族との間に、
そいつは、もう家族として接するのも億劫、ストレスになる
君達が喧嘩してるのは、互いを想い合ってこそだ。
そのクソ兄貴みたいに、自分だけが正義、可愛いからじゃない。
だったら、不格好でも泥臭くても、チャンスは有る。やり直す事が出来る
そいつみたいに、記憶も関係もリセットせずとも、君達なら、今まで出来た溝や傷を埋める事は出来る
ここに来て、初めて
「
もしかして、何だかんだで、励ましてくれてますか?
捻くれてるだけで、実は
「……聞くな。デリカシー
言わせんなよ、恥ずかしい」
「あははっ♪
耳までっ! 耳まで、真っ赤!
可愛い〜♪」
「何その、ピザー○みたいなの!
「
期日じゃないのでー」
「試してみる?」
「わっ……!?
ま、待って待って、ごめんなさい!
ここ、結構、高いっ!」
「いや、
キャッキャッ、キャッキャッと騒ぐ
その顔には、いつの間にか、ぎこちないながらも明るい笑顔が戻っていた。
「ふぅ〜……」
一連の様子《ようす)を、陰に潜みながら盗み見、盗み聞きしていた俺は、事なきを得たと肌で確信し、壁に背中を預けつつ腰を降ろし、一服した。
「助かったぁ……」
「優秀な部下をお持ちですね。
「相方だよ。
まぁ、
それより、頼んでた件は?」
「
そろそろ、到着されま」
「
「
俺と
二人は、俺達に目もくれずに、一目散に娘の元に駆け出し、
ありゃ、冗談抜きで、こっちにはまるで気付いてないオチだな。
「……されました」
「だな。お疲れ」
俺が座りながら手を上げると、意図を汲んだ
食えなくはあるが、
「
今まで、本当に、すまなかった!
パパが間違ってた!!」
「いえ、悪いのはママの方だわ!
ごめんなさい、
パパは、何も間違ってないの!
ママが、分からず屋だっただけよ!」
「馬鹿を言うな!
小遣いだって、きちんと分相応にくれたし!」
「あなただって!
「何よっ!?」
「何だよっ!?」
いつの間にか話し相手が、
おいおい……。
「……なぁ、
あの二人、根本的に
「良くも悪くも、幼馴染なので。気心が、互いに割れ
それはさておき、是非とも、もっとガツンと言って差しあげてください。
私の負担が減ります故」
「……苦労してんなぁ」
んでもって、
「……ふふっ」
ふと、
両親の
「……初めてだね。
二人が、
全然、知らなかった……こんな
ましてや、私にも訪れるなんて、思ってもみなかった……。
何ていうか、うん……嬉しいし、楽しい。
とっても」
目尻を拭った
素っ頓狂な顔をしていた
「これから一杯、
今まで
「そうね。
これからは心を入れ替えて、パパもママも、可能な限り、ちゃんと、
もう
「ああ。
二度と
確約する」
「やっぱり、
今日のパパとママ……」
「良いんだ。
「そうよ。
それが、パパとママの、
「……うん……。
ありがとう……。
パパ、ママ……」
未だにクシャクシャな愛娘の頭を、
「ねぇ、
これから、何したい?」
「
……
「
ママ、ヘソクリ開けちゃうわ」
「あぁ! 狡いぞ、ママ!
じゃあ、パパはあれだ!
えと、その、
他でもない、
「もう、パパったら……。張り切り過ぎ……。
私、捩れ過ぎてお腹、無くなっちゃいそ……」
すっかり、ダイニングでの
これなら、今日の所は心配ないだろう。
水を差すのも忍びないし、このまま退散するか。
「
無言で立ち去ろうすると、
思った通り、気付かれてたか。
「ありがとう……。
あなたのお
「気にすんな。
これが、俺の
それに、美味しい所は
「そんな事、無い……。
あなたが二人に熱く言ってくれたから、パパもママも、仲良くなれた……」
「
今度は
その顔には
「先程は、大変失礼した。
謹んで、謝罪します」
「いえいえ。
こちらこそ、ちょっとばかし口が滑っちまって。
そもそも、あれ、俺が喋ってたんじゃなく、
そいつが、俺の体を乗っ取って、勝手に使ってた
み、耳がぁぁぁぁぁっ!!
耳と、足がぁぁぁぁぁっ!!
「なるほど。
死神とて、悪い嘘を
「
何、呑気に感心してやが、痛ぇぇぇぇぇっ!!
いぎゃぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁっ!!」
思わぬ展開に、三人が声を上げて笑った。
……こうして、
※
「ほら、
早く、早くぅ!」
「ちょまっ……!
んな、急かすなって!」
二日後。
そんな
誘ったのに断られたので理由を尋ねると、「ホワルバ、特に2の季節だから」とか、良く分からん事を言ってた。
「つーか、
友達や彼氏でも良かったろうに」
「良いんです。
友達とは、その内、受験勉強の息抜きっていう体で来ますから。
あと、彼氏云々っていうのは、おちょくってるって事で良いんですよね?
どうせ
えいっ」
「あうっ!?」
痛くはないが、くすぐったい。
「何となく気になってたんですけど、
この際、ちょっと細工しちゃおっかなぁ」
「キス?」
「ふふっ。
えーいっ」
「ぎゃぁっ!!
サーセンしたぁっ!」
俺が
彼女の心からの笑顔が増えているのは、良い傾向だ。
「それにしても、パパってば。
まさか、三人で遊んだ翌日に、ギックリやっちゃうなんて」
「いや……多分、それだけじゃないと思うぞ……?」
「?」
こんな想像をするのはゲスいってのは百も承知だが、恐らく
で、約十七年振りに直に行ったものだから、張り切り過ぎて、その……。
まぁ、そういう
「まぁ、心配は要らねぇよ。
母親さんも、
「良いんですか?」
「構やしねぇよ。
人生を変える
「そういうルールなんですね」
「たった今、俺が決めた」
「もう。
また、適当な
でも……ありがとうございます。
やっぱり、優しいんですね。
けど、ルールはちゃんと、守らなきゃ、めっ!
ですよ?」
「……ごめん。
今の『めっ!』ての、もっかいくんない?」
「ダー、めっ♪」
「うごはぁっ!?」
二重構造、だとぉ……。
そんな
「まぁ、あれだ!
お前ん家の問題の大体がたった一日で解決したってんで、今の俺の評価、鰻上りでよぉ。
もう、ウハウハーレムよ」
体勢を戻し、いつも通り冗談を飛ばしていると、
「ふーん。そうですかー」
俺が触れようとすると、それよりも早く、ピタッと、
「あ、ああああの、
「あれー?
どうしたんですかー?
ウハウハーレムっていうから、慣れてると思ったんですけどー?」
「どうしたのは、あんただよっ!?」
「ふんだ。
今日一日、ずーっと。こうして拘束してますから。
覚悟してくださいね?」
「すみませんでしたぁぁぁぁぁっ!!
単なる方便です、ごめんなさぁぁぁぁぁいっ!!
だから、頼むっ!! 許してくれぇぇぇぇぇっ!!」
「ふふっ。やーだ♪
ほら、行きますよー♪」
「
結局、この日を通して俺が学んだのは、
けど、何となくは覚えてる。
アトラクションの度に
そして最後の、エレクトリカルパレードを見ていた時の、複雑な横顔を。
※
「友達と食事したい?」
遊園地から帰りがてら、
彼女は、少し困った
「……やっぱり、難しいです、よね……。
私、正確にはもう、人間ではなくなりつつありますし……。
そこら辺も込みで、
正直、その通りではある。
確かに、
そして、もし死神絡みのワードが出て
が……それだけで、本当に
パラドックスの心配などは
以上を踏まえ渋々、異を唱えんとする俺。
しかし、咄嗟に名案が思い付き、踏みとどまる。
「……
「本当ですかっ!?」
俺の言葉に、
軽く押されつつ、俺はスマホを操作する。
「もしもし。
お疲れ。今、平気か?
ちょっと相談が
お、マジ?
ほんじゃ、そうするわ。
サンキューな」
思いの
「俺の仲間に、シークって料理人が
そいつが営業してる、死神絡み御用達の店、『
俺達に不都合な情報は、
そこなら、死神にはノータッチな一般人とも、いつも通り、気兼ね
っても本来は、死んでからも定期的にコンタクト、コミュニケーションを取りたい側の
「分かりましたっ!
じゃあ、今から
ありがとうございます、
「別に、俺は
礼なら、シークに言ってくれ」
幼稚な態度が恥ずかしくなって来た俺の手を、無邪気な笑顔を引っさげて、
これ……意識すんな、って方が無理なんじゃあ……?
「ところで、その『
「そこら中」
ありのまま伝えると、
あー……
これ多分、「え? 死神って、そんなに身近なの?」ってぇ勘違いパターンだ。
「すまん。言葉が足りなんだ。
要はだなぁ」
訂正し謝りつつ、改めて、
「なるほど……。
理解しました。
「だから、
それより」
頬を掻き目を逸らしながら、俺は告げる。
「……すまねぇ。
ちと、野暮用が
暫く、付きっ切りってぇ
まぁでも、担当である以上、有事の際には、なるはやで駆け付けっからよ。
いつでも、連絡くれ。
返信は遅れるだろうが」
「そうなんですね。
分かりました。
ファイトですっ」
腕を上げ、ふんすっと鼻息を出す
いつもなら悶える所だろうが……
「『ファイトですっ』、ねぇ……」
ちょっと複雑な心境のまま、頭を抱える。
……
苦労する
多かれ少なかれ抱え込んで、仕舞い込んで、塞ぎ込んでなきゃ、そもそもこうして、選ばれてないんだ。
っても、これから俺がするのは、本来ならもう必要の
何度も実証、シミュレーションされた、
「……しゃあねぇ。
あんっなに健気に応援された手前、根性見せるっきゃねぇか。
それに……どうにも気掛かりでならねぇしなぁ」
脳裏を過ぎるは、観覧車で
少しでも和らげたいと、救いたいと奮い立たせる、あの表情。
「……
覚悟を決め、名前を呼ぶ。
思った通り、
「……分かってる。
彼女を見張ってる。
それに許可なら、もう降りてる。勝手にやんな。
「止めないんだな?」
「言って聞ける
やり手かつ後方相方面の
ああ、そうさ。当然だろ。
その結果、どんだけ負担がでかかろうとも、挑まなくてはいけない。
それだけの責任を、役目を、思いを、命を、人生を、俺は担い、背負っているのだから。
「……ったり前だ。
それに、死にゃあしねぇよ。
俺は……死神だからな」
その言葉を最後に、俺は自宅を。
いや……この時空を、出た。
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