3:元・死(しに)ガキVSキガ神(がみ)
印象ってのは、実に厄介だ。
悪い方に染まっただけで、それまでは普通だった場所が突然、虫唾が走る場所に様変わりするのだから。
ただ、あいつの根城ってだけなのに。
「ごきげんよう、皆さん。
進捗はいかがですか?」
「お陰様で、今から最終段階だ。
……
俺達の生みの親であり、
真実を明かそう。
墓場に送られて来た死体……そのどれもが、小学生にも満たない女児の、どこかしら体の部分を失った物だった。
それの意味する所は、一つ。
それも、5歳か4歳
レズビアン。
ペドフィリア。
アントロポファジー。
ネクロフィリア。
これが、
一つでも持ってたらアレな性癖を、
こいつは、四つも有していやがった。
運命の悪戯とか、神様の気紛れとか。
そんな言葉ではもう、納得も説明も看過も容認も
正真正銘の腐れ外道……化物だ。
「ただ殺すだけじゃ、どうにも気が収まらねぇ。
死後にまで顔合わせたくねぇからよぉ。
申し開きが
とっとと白状しやがれ」
「簡単ですよ?
ただ、それだけの
姿勢を正した
「だって、そうでしょう?
肉体にも興味を
悪魔の囁き、とでも名付けましょうか?
それがある日、ふと聞こえて来たのですよ」
こんな
その、純粋で自然で静かな狂気に俺は、本来なら感じない
「
これまでは陰で、その
しかし、またしても悪魔が
『それは偽物だ。もっと深く、味わいたくないか?』と」
「だから、今度は……
俺の横に立つ
「ええ。
私の使命は、少しでも人間を満足させて旅立たせる
己が醜い欲望を満たす為に、そんな
再び玉座に頬杖を突き、
「が……そんな時に、
『一組の男女が、30もの人間を食していた』……とね」
空気が、流れが変わった。
「その時、私は初めて、『怒り』という感情を本当に覚えました。
認識し、記憶しました。
私の心は激しく叫び、私に訴えました。『なぜ私の足元にも及ばない、人間
『なぜ
とね。
だから、やったまでです」
イカれてる。
そう、痛感した。
最初の頃はともかく、今のこいつには、何を言っても無駄だ。
こんな事を、いつもと変わらない
まるで万引きでもする
いや……ひょっとしたら今の話は、単なる動機、方便なのかもしれない。
こいつは本当の所、
そんな風に俺を疑い深くさせる
「
それを、
「何を熱くなっているのやら。
どうせ、あなた達が生き返らせ、記憶も書き換えたのでしょう?
あれは単なる悪い夢、現実ではなかったのだと。
だったら、もう過ぎた
どうでも
まぁ……そうじゃなくても、別に眼中に無いのですが。
未来を見通し、私は知っていたのですよ。
彼女達が、死神の力を
それでいて月並みな幸せに永住し現状維持に徹し展望を試みない、死ぬまで惰性的にチープな人生しか歩まない
まぁ……唯一、
彼女は、
「っ……!!」
「
杖を使い、魔法を使おうとした
「ありがとうございます、
そうですよねぇ。まだ、事情聴取が終わっていませんもの」
「無駄口を叩くな。とっとと続けろ」
やれやれ……と
「もう予測済みでしょうが。
あの子達は全員、私の玩具です。
人間というのは、どこまでも卑しく、愚かで強欲ですねぇ。
『買い取った
そう誘っただけで、
先んじて契約を結び、最初から提供前提で
やってみれば、実に
私は晴れて、好きなだけ食べられる様になったのです。
ただ……どうやら私は、食事中に他者の声などを耳にすると気が立つ、夢から覚めるタイプの
特に……
あなたが
それまで優雅だった
彼女は肘掛けを叩き、この部屋を揺らし、突風を巻き起こし、
「
私が墓場に入れない様に防御壁を
ハッキングにより墓場のデータを改竄!
私しか入れない墓場を他者でも侵入が出来る仕様に変更!
おまけに、独自のルートで、何重ものトラップで隠蔽した私の秘密にまで辿り着いた!
彼に
「
出会った時から、妙に引っ掛かってたんだ。
その、どこぞの
まぁ正直、あそこまで
でも、感謝するよ。
これで心置き無く、
正直、御免だったんだ。死神になってまで、ルールで縛られるなんざ。
っても、
「あぁ、そうですか!
私も、あなたの
出会った時から欠かさず、今日までずっとねぇ!
よくも私の計画を、ここまで派手に、面白おかしく、ぶち壊してくれましたねぇ!!」
「……計画?」
俺がリピートすると、
「ええ。
ぼちぼち本気で鬱陶しかったので、あなたを消そうと思ったのですよ。
それも、二度と
その
極め付けに
絶望し切った、『殺してくれ』と
その体を、私への恐怖、服従心で満たした上でねぇ」
そろそろ限界、臨界に達しようとしたが、俺は質問を続ける。
まだ、
「……
「
『私は、食事を邪魔されるのを
喘ぎ声以外なんて興醒めでしかないので、不要でしょう?
だから、封じた。それだけです」
「じゃあ、
自分が人間じゃないのが露見するのを恐れた訳じゃないだろ」
「まさか。
ただ、一興だっただけですよ。
私の前で
魅力的な前戯、前菜として……ね」
「……っ!!
同じく
そんな俺達に対して
片手を肩の高さまで挙げ、
時間で例えれば一秒も要さないアクションで、
地に伏せさせ、動きと言葉を封じた。
「やれやれ。
よもや本気で、
愚かですねぇ。
あなた達は全員、戦闘用には作られていないというのに……。
まぁ、
あなた達の仲良しごっこにも飽きていました。
ここらで、終わりにして差し上げましょう」
今度は右手を宙に向ける。
そこから、ブラック・ホール染みた、真っ黒い巨大な球体が発生。
それは、この部屋の装飾を見る見る飲み込んで行き、どんどん肥大化して行く。
規模を、驚異を増大させて行く。
そんな、嵐のど真ん中でも聴こえる
「ここまで来れた
その頑張りに免じて、全力で潰しにかからせて頂きます。
あなた方の施したシールドを解き、
それでは、さようなら。
ーー永遠に」
逃げる
ただ目線を動かす
俺達は誰となく、目を瞑った。
そうして静かに、甘んじて、最後を。
こんな
お前
けど……最後まで俺なんかに付き合ってくれて、ありがとう。
シーク。
お前は多分、今回の件で
或いは、
けど、それで
どうかお前は、静かに生きてくれ。
俺達みたいに、勝てる見込みも皆無な状態で喧嘩を売ったりして、生き急がないでくれ。
これまで俺が出会った人達。
あんた達からも、俺との記憶が、俺の魔法が消えるかもしれない。
その
際限
それでも、頼む。どうか、生きてくれ。
生きて、生きて、生き延びて。
最後は笑顔で、誰かに見守られながら、満足して
最後に……
ごめん。
やっぱ兄ちゃん、結局の所、単なる
俺が
……すまない。
でも、頼む。せめて死ぬ間際まで、
希望を、笑顔を、捨てないでくれ。
ひょっとしたら俺の仲間が、お前達を助けてくれるかもしれないから。
限界でも、絶望しても、死にたくなっても、どうか。
……どうか、最後まで足掻いてくれ。
生きる
頼む。
そんな風に、俺は祈りと懺悔を捧げた。
そして、不思議に思った。
これだけの時間を、猶予を、情けを、あの化物がくれるものだろうか……と。
「……え?」
視線を上げ、声を出せた事に驚愕する暇も無いまま。
その先に広がっていた光景に、俺は息を呑んだ。
ましてや、
「シー……ク?」
この場にもう一人……俺の仲間が、駆け付けていた
「『
か」
俺達を金縛りから解き、
シークは、いつも通りクールに語りつつ、
「そいつは不可能だ。
なぜならば、貴様は……本物ではない」
シークが
「がっ……!?」
「まさか……!?
まさか、お前は……!?
『
「ふっ」
瞬間、
「ぎあぁぁぁぁぁ!!
あぁ、あぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁっ!!」
「口の聞き方がなってないな。
どうやら、調教が足りんらしい」
消火も鎮火も、
「貴様は俺にとって最初、最大、最低の失敗作だ。
今までの
もう二度と、俺
シークの怒りに同調し、更に大きさ、密度が増す炎。
やがて、シークの意思により炎が消えた頃……
黒焦げになった、枯れ木の小枝みたいな右手をシークの肩に置き。
最後の一言を振り絞った。
「めぇ、おぉ……さまぁ……」
シーク……改め、真の
彼は、瞳を閉じて女の右腕を掴み。
その肉体を、跡形も無く焼失させた。
「……もう遅い。
何もかも……手遅れだ」
真実を知ってから存外、早く
長きに渡る
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