5:告白と白状
「な、
宴も
有無も言わせて
そのまま、十字架の前まで運ばれ、やっと体の自由を取り戻すも。
「……目を、
「は?」
かける言葉を必死に探していると、唐突に
そのまま彼女は体を反転させ、真顔で繰り返す。
「……目を、
私が『良い』って言うまで」
「……」
他に選択肢を見付けられなかった俺は、黙って従った。
え?
まさか、ここでキスしちゃったり? まっさかー。
だって今の俺は、
そんな
いや、でも、ワンチャン、
「……
「……」
などと一人コントを繰り広げていると、悶々とした時間が終わりを
意外と早かったのね……。
「……
一体、
不満たらたらに目を開き、続いて見開いた。
目の前に居た
彼女がいつの間にか、ウエディング・ドレスを
「おまっ……!?
て、は!?
ーーそう。
気付けば俺は、タキシードを着ていた。
ていうか、あれ!?
ここ、どこ!?
てか、静空(しずく)、ウエディングドレス!?
は!?
あと、ミニスカ最高です!!
「どうやら、入れ替えが成功したみたいですね。
気分はどうですか?
未来の……私を、私の知ってる、
「いや、知らんわっ!
どうなってんだよ、これ!
「うーん……強いて言うなら、Win-Win?
で、私も、
ごめんね、当時の
それに、
「許可する。全力で許す。
で?
「ーー忘れ、たの?
私は、魔法が使えるって。相変わらず、うっかりさん、だね。
けっ……『憩吾』、は……」
「は?
お前……今、俺を呼び捨て……?」
「っ!!」
敬語まで捨てた
俺は、状況に付いて行けないながらも、どうにか彼女を、倒れないまま受け止めた。
「私は……。
新しい私の
普段は、中々、素直になれないけっど……。
今日だけは、これ
目を開け、至近距離から、
俺の瞳を。
そして……唇を。
ゆっくりと、小刻みに近付いて来る
ここまで来た以上、俺も腹を決め、受けの態勢を取る。
そして俺達は……死神である身で、神聖な場所で、キスを交わした。
「っ……!!
「ぐえっ!?」
かと思えば、急に怒り出した
「
全然、ロマンチックじゃない!
朴念仁通り越して、 朴念神っ!!
せめてピザ◯テトか、バター醤油
「だから、知らんって!
俺はただ、
ポテチ
「ホンッッット……どうして憩吾(けいご)くんは、いつもいつも、微妙通り越して、こうも巧妙かつ絶妙に外してくれるんですかぁ……。
私が何度、アプローチしても、てんで
私、初対面の時点で
「え?
いや、えと……。
……さーせん?」
え?
俺、悪くなくね?
てか、そろそろ、状況、教えてくんね?
「もぉ良いです、分かりました、
私は永遠に、ロマンとは無縁なんですね。
あーそうですか、そうですか、勝手にしてください。
だったら、もう……それでも構いません。
だから……せめて今だけは、私の好きにさせてください……」
何かを決意した
そのまま、俺の口腔を魔法で綺麗にした
「……
俺達の唇を繋ぐ唾液が、夕日に照らされる。
「まぁ……これで、少なくとも今は、満ち足りました。
今日はこの辺で、勘弁して差し上げます。
けれど、決して忘れないでください。
いつか私は、あなたの
あなたの心も、未来も、
私の人生を奪ったとは言いません。
死神の道を選んだのは、私自身ですから。
ていうか、取らせます。
そうじゃなきゃ、困ります」
「キスね!?
キスの
それ以上でもそれ以外でもないからぁっ!!」
「ホンッッット……台無しですね。
でも、まっ……惚れた弱みという事で、許します」
そう言いつつ、
気付けば、俺の体はなぜか倒れていて。
視界には、夕日にライトアップされた、
「は!?
え!、何!?
何、何、何!?
今度は何ぃっ!?」
「何もしません。
ただ……本の一時、忘れて貰うだけです。
私の
タイム・パラドックスの心配は無いと思いますが、念には念を入れたいので」
少し切な
「さようなら、過去の
また、
全力で……手加減抜きで。
近い未来、その記憶を呼び覚まし、生き返らせ。
あなたに永遠の恋をする
そして、俺の瞳が、意識が、オレンジ色の光で埋め尽くされ……。
やがて、白一色に染められた。
※
「……誰?」
気付けば俺は、四方八方をPCゲームのポスターに囲まれた部屋に居た。
目の前には、
「は?
何言ってんの、ケーゴ」
「いや、お前こそだよ!?
てか、
言葉を交わしつつも、コントローラーを動かす手は止めないし、テレビから目も離さない。
あれ?
この感じ……昨日まで
「
てか、何それ。マジ下がるんだけど。
そういう戦略?
浅っっっさ……。
……いや……ケーゴ
「如きって
つーかお前、『分際』とか『如き』とか、言いたい
と同時に、赤い甲羅がカブトムシをフルボッコにし、
だが、それよりも気になる
「 ……あ、あれ?
「あー……把握。
そういえば、あれから丁度5年目だったっけ、今日。
これだから、女ってのは嫌いなんだ。
時々、中途半端に粋な、
フル・スコアを達成し、ポーズしてから、億劫がりつつコントローラーをカーペットに置き、テレビの電源を切り。
少女は、立ち上がる。
「『現実なんてバカゲー』。
この認識、及び座右の銘は、今だって変わらない。
だって、そうでしょ?
上の連中なんて
生活は一向に改善されないし。
収入の分だけ支出が増えるとか意味分かんないし。
エアプの
違法で作品に触れた
過去作とか他の名作とばっか比べて『下位互換』とか『劣化版』とか『パクリ』とか言い出すし。
クソ音痴で自己顕示欲者の風俗
何より……そんな
どんだけ辛くても悲しくても苦しくても。
いつだって、誰かが助け、庇い、笑顔で手を差し伸べてくれる……。
遅かれ早かれ修正、救済パッチが配布されて、最終的には救われる……。
生きる
ドSな
それも
「お前……」
黒髪の少女に惹かれ、俺も立ち上がる。
向き合いながら、彼女は続ける。
「……白状するよ。
それはね、
濫造された偽物や粗悪品で満たされた世界から、『現実』ってフィルターを取り除く
「……フィルター?」
「そ。
『不倫』とか、『浮気』とか、『痴漢』とか、『世間体』とか、『犯罪』とか、『常識』とか、『普通』とか、『大人の事情』とか、『金』とか、『NTR』とか、そういうの。
あいつ、何だかんだで、現実世界で生きる
現実世界に、真に見切りを付けてなかったんだ。
ただ……ロマンチストなだけなんだ。
世界を綺麗に、綺麗なまま、美味しいまま、あるがままに味わいたかっただけなんだ。
余計な情報をシャット・ダウン、シャット・アウトしたくて。
切り離した状態で、ただ持ち味のみを楽しみたくて、それだけで満たされたくて。
でも、
どれだけ好きでも満たされてても唐突に夢から覚めるのが。
『そんなの一部だけだよ。偽物だよ』って、後ろ指差されるのが。
そういうのが全部、堪らなかっただけなんだ。
だから、その阻害因子、つまりは黒歴史を無くすか、それが無理なら記憶を抹消したかった。
そんな事を実現するには、悪魔と相乗りするしか無いでしょ?
死神に魂でも売らなきゃ、不可能でしょ?
だから、そうした。
君が助けようとしたのはね?
そんな、綺麗なだけの、世界を
内側では誰よりも生を欲していた、筋金入りの捻くれ者だったんだ。
分かり味、チャレンジャー
そんなだから、きちんと感謝とか言葉とかストレートには伝えられないし。
アイデンティティもレーゾンデートルもあやふやでボロボロで木っ端微塵だから、一人称とかも無いし……いや、違う。
そんな話をしたいんじゃなくて……」
言いたい事が
少女は心を落ち着かせ、やがてテーマを一つに絞る。
「……
『
『そうやって、誰かの導になって。
『頼もしくて優しい知辺を沢山、増やせる
そう思い、願い、君に与えた名前。
……だそうだよ」
「お前……まさか……!?」
その辺りで、少女はフィンガー・スナップを決める。
刹那、俺の衣装がまたもや変わり、それどころか胸部が膨らむ。
「……はぁぁぁぁぁ!?」
慌てて確認すると、やはり俺の体は変えられていた。
少女は、そんな俺の頬、そして髪を撫でた。
「言っとくけど、そっちの趣味は無いよ。
趣味趣向が女性寄りで、男として自認
だから、完全にTSった。
まぁ、
まっ、
「いや、知らねぇよ!?
「あー、しくった。
口調や一人称も
ただ、
それと……少しは感謝を伝えたくなっただけ。
今限定の、単なる気まぐれだよ。
くれぐれも、誤解しないでくれる?」
俺の頬に、キスをした。
決して色っぽくはない、友達や家族にする
「……」
絶句する俺から離れる少女。
そこで、俺の姿が元に戻った。
「
「ん?
まぁ……別に
どうせ向こうで
俺を見下ろし、追い詰めつつ。
少女は勝ち気に
「
「色々、多っ!?」
「失礼な。
これでも
まぁ、
この
まっ……覚えてたら、の話だけど。
さて、と。……そろそろかな」
などと抜かしつつ、少女は再び腰を下ろした。
「ちょ、ちょっ……待ってくれ、静空(しずく)。
頼むから、整理させてくれ。
……え? お前……好きなの? 俺を」
「しゃしゃんな、そんな
数秒前までと打って変わった雑な
と共に、知らぬ間に座っていた俺の膝(ひざ)に痛みが走る。
……って、だからぁっ!!
「
いや……この場合、食べられたって方が正しいか?
このロリコン」
「お前の中では何歳までがロリに含まれんだよっ!?
大体、俺まだ未就学児レベルだぞ!?
てか、それどころじゃねぇよ!
ヤバい、どうしよう
俺、
「ぽいじゃなくて現に、そうなんでしょ。
知るか。
厄介事、持って来んな。
こっちは
「
「うんにゃ。
会話と食事はしてるよ」
「だぁぁぁぁぁっ!!
あー言えば、こー言う〜!!」
「揺らすなぁぁぁぁぁ!!
魔法でカンスト破ってギネス狙ってる所なんだよぉぉぉっ!!」
「
そもそも、死神が登録されるかぁぁぁっ!!」
「うるさい、うるさい、うるさ〜い!!」
「お前それ、人間関係に亀裂入る
「死神だから問題無いのっ!!
いいから、離、わぁぁぁ!!
設計者、出て来いやぁ!!」
「お前ぇだよっ!!」
こうして今日も、俺は騒がしい毎日を送る。
でも、
彼女が気を利かせてくれたお
自分の名前に秘められた真意、そして
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