8(静空side):静空の、ソンな日常

 心珠しんじゅを生み出し、肉体と命を失ったあと

 私は、前世に似せた肉体(どことは言わないけど、盛った)を魔法で作り、死神の世界(オコジョだったっけ?)を彷徨っていた。



 ……なんか、思ってたのと違う。

 てっきり、このまま命王めいおうさま謁見えっけんしたあと、自由行動だとばかり。



「なーにブラブラしてるのさ。

 探すのに、無駄な時間かかったろ」



 やにわに、上空から声。

 続いて、私の前に、夏澄美かすみちゃんが降り立った。



夏澄美かすみちゃん?

 どうして?」

「ちょっと話がって、君を探してた。

 だのに、魂の転送先にないもんだから、軽くお怒り状態だ。

 まったく……なんだって、こんな薄気味悪い場所を探検、散策する気になんぞなれるかねぇ。

 長ったらしい話は嫌いなんだ。単刀直入に言おう」



 ……夏澄美かすみちゃん、今もだけど、割とでもなんでもなく、話が長いタイプのよーな……?

 などと思っていると、いつも通り憎まれ口を叩いていた夏澄美かすみちゃんは、私を真顔で見た。



静空しずく

 君には、甘城あまぎ家で死神として仕えてもらう」



 ……驚いたし、言わんとする主旨がぐには掴めなかった。

 けど、憤りはかった。

 夏澄美かすみちゃんの人のさなら、すでに知っている。



「どういうことですか?」

「簡単な話さ。

 君にはこれから、甘城あまぎ家で働いてもらう。

 そして、甘城あまぎ家で家族同然に過ごし、住人達の命、人生を豊かに育んでしい。

 それも、熟生じゅくせいはんとしての、大事な死事しごとだ。

 というか、君にはいやでも勤めてもらう。

 さもなくば、歴史が変わってしまうからな」



「はぁ……」



 ちょくちょく思っていたが、死神とは随分ずいぶん、屁理屈が好きらしい。

 まぁ確かに、死神って元々、契約の裏、穴を突いて、やりたい放題やってるイメージは色濃いが。



「君、てんで把握してないな?」



 やれやれ感を全面に押し出しつつ、やや雑に、適当気味に夏澄美かすみちゃんは答えた。



「この際だから、教えるとしよう。

 そもそも、甘城あまぎ家で働いていたのは全員、熟生じゅくせいはん

 というか、タイムリープと変装を繰り返し、家事は全て魔法でこなしつつ、裏ではみっちり、こっちにしごかれてた、君自身だ。

 っても、色んな時代に同時に派遣したホログラムを遠隔操作してただけだけどね」



 ……はい?



「えぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇ!?」



 ようやく詳細を理解したものの、魂消たまげた私は大声を挙げてしまう。



 嘘でしょ!?

 うちた人達が全員、実は私!?

 睛子しょうこさんも!?



「そう。

 一人残らず、君だ。

 そもそも、そうでなきゃ色々と説明がつかないだろ?

 主に、天良寺てんりょうじ 睛子しょうこ絡みで」

「それは、まぁ……分かりますけどぉ!」



 確かにね!

 それなら、睛子しょうこさんと憩吾けいごさんが旧知の仲ってのもうなずける!

 睛子しょうこさんが『unibirthalyアニバーサリィ』に入り浸ってるのも、シークさんと知り合いだったのも腑に落ちる!

 だって、未来の私だもん!



 けどさぁ!



「こんな、あっけらかんと、言います……?」

「そこら辺を、こっちに求めるな」

「そりゃ、役不足でしょうけど……」

「誤用してるぞ。

 単なる褒め言葉に成り上がってる。

 それより」



 魔法で傘を作り、私のおでこを軽く突っ付きながら、夏澄美かすみちゃんが問う。



「君がずっと悩んでいたのは、『家族でもない人外の自分が、あの場にいのか』ってジレンマだろ?

 それだったら、悩むまでもい。

 そもそも君は、天良寺てんりょうじ 睛子しょうこを演じていた頃、他でもない、過去の君自身に、『家族同然』に思われていたし、別にそれがいやがられていたってんでもない。

 無論むろん、他の使用人に擬態していた際にもね」

「そりゃそうですよ……全部、私だったんですから……」

「細かいなぁ。

 まぁ、そこら辺の事情は、面倒だから省くとして」


 

 軽いな、本当ホントに!!

 などと思いつつ、夏澄美かすみちゃんの言葉に耳と意識を傾ける。



「どうするんだ?

 ちな、ここで君が断ろうものなら、あの屋敷をたった一人で任せられる使用人なんて奇特な存在は現れず、泣く泣く手放した結果、両親は別居し、そのまま離婚、二人を止められなかった君は敢え無くジサ「分かりました、やります、やればいんでしょ、もぉぉぉぉぉ!!」」



 こんな無慈悲な脅し、聞いたことい!

 そもそも、あんな形で別れといて、シレッと帰って来るとか、傍迷惑にもほどる!

 


いじゃないか。

 君は、悪女属性なんだから」

「少しはフォローしてくれませんかねぇ!?」

さっきも言ったろ?

 こっちに、それを求めるのは人選ミスだ。

 シークにでも頼みなよ」



 ここで名前が出て来ない辺り、憩吾けいごさん本当ホント憩吾けいごさん。



「それに、ケーゴのやつも、寂しがってたぞ?

 最高の女を逃しちまったー、って」

「直ぐ行きましょう」

「ちょ待てよ」



 急いで戻ろうとした私を、夏澄美かすみちゃんが傘で引っ掛けて止める。

 ねぇこれ使い方、違わない!?



「その前に、君を育て上げる。

 君に、ヒロインたる真髄を、五年かけて、みっちり叩き込んでやる」

「え〜!?」

なにさ? その顔は。

 ウルトラマ◯だって、一つ新フォーム習得するのに十年も掛けてるんだぞ?

 君に直々に、あの唐変木を籠絡するための、メインヒロイン足り得る魅力、付加価値を付けてやるって言ってるんだ。

 それくらいの気概は見せろ」

「そうなんですか!?」

「そうなの。

 で、どうする?

 言っとくが、半端じゃないぞ?」



 それは、まぁ……憩吾けいごさんを物に出来できるなら、受けたいけど……。



「……死神の修行は?」

「自宅警備員になるために、なにを教えろと?」

「合ってるけど、それ以上に間違ってません!?」

「それに君は、そのポジを鍛えた方がい。

 あいつは、君みたいなベタなタイプに惹かれる傾向にある。

 つまり、君がもっと、母性、女子力、貞淑さ、出来る女感、ひたすら都合だけの駄目ダメ女感、『私がなきゃポンコツだね』感、『しょうがないなぁ憩吾けいごは』感、俺の考えた誰もが羨み胸打たれる最強のメインヒロイン感を押し出せば、やつは滅びる」

「多いし、せめて生き残らせてくださいっ!」

「いや、よくよく考えると、あいつ生意気ってか恵まれぎってか、とりまブイスリャればいのになって。

 火薬とか、煙突的な意味で」

「すみません。

 ず私、夏澄美かすみちゃん語の翻訳力から身に着けたいです」

「二万年早いぜ」

「あ。

 今のは元ネタありきですね。

 口調が違うので分かりました」

「ゼ◯の良さが見抜けるなんて、分かってるじゃないか。

 気が変わった。しからば、教えてしんぜよう」

「やっぱいです。

 いつもよりマシマシで長くなりそう」



 こんな感じで延々と話せてる辺り、なんだかんだで、相性は悪くないのかもしれない。

 まぁ大分、凸凹している気がするけど。



「あ、ごめんなさい、夏澄美かすみちゃん。

 その前に、行きたい所がるんですけど、いですか?」





 日曜日のお昼。

 待ち合わせ中の女の子に、私は声をかける。



「こんにちは。

 今、一人?」



 腕時計型のスマホを操作していた彼女は、初対面を装う私に、屈託なく微笑む。



「あと少しで友達と落ち合う予定ですけど、それまでなら。

 なんでしょうか? 道案内ですか?」

「ううん。

 ちょっと、あなたとお話したくって」

「……すみません。

 お姉さん、どこかで出会いましたっけ?」

「小さい時に、一度だけね」



 頭に疑問符を浮かべる女の子。



「お〜いっ!」



 すると後ろの方から、聞き覚えのる元気な声が飛んで来る。

 かと思えば、彼女の前でストップし、呼吸を整える。

 


「は〜い、地明ちあきちゃんの負け〜♪

 クレープ奢り〜♪」

守晴すばるが早過ぎるんだよっ!

 てか、現役女子高生と同列に並べんなよっ!

 こっちは、社会人だぞ!? 体力とかタイミングとか都合とか、色々有るんだっての!」

「言い訳なんて、大人気〜いっ♪」

「かーっ!

 レスバばっか強くなりやがって、小娘が!

 っくしょー! 覚えてろよ、バッキャロー!」



 思った通り、宝○みたいな雰囲気を醸す女性は、私の親友の一人だった。



 追って、バリキャリ風の女性と、小柄な可愛かわいらしい女性が合流する。



地明ちあきちゃん……。

 守晴すばるちゃん……。

 おはよう、です……。

 本日は、お招き頂き、ありがとう……です」

「久し振りね、みんな

 ところで、その人、誰のゲスト?」

「あー、えとぉ……。

 この人は、そのぉ……」



 説明に困る彼女。

 そろそろ、引き際かな。



「ちょっとお話してただけです。

 気にしないでください」

「はぁ……」



 掛けていたサングラスを胸に仕舞い、ジロジロと私を見詰める恵海めぐみ

 変装してるとはいえ、流石さすが不味まずい、かも……。



「トモハ。

 なにしてるのさ」



 対応に困っていたら、同行者の夏澄美かすみちゃんが、助け舟を出してくれた。

 彼女は、私達を一通り見たあと、嘆息した。



「まーた若い女の子に声掛けてたでしょ?

 そろそろめなよ。

 補導されても知らないよ?

 ま、可愛かわいいから引っ掛けたくなるのは、分からなくもないけど」

「ちょ、ちょっとぉ!

 その言い方は、ひどくないですかぁ!

 私は、ただ、その……かく、そういうんじゃないです!」



 夏澄美かすみちゃんのおかげで、複雑だけど、どうにか難は逃れたらしい。

 わざとらしく咳払いし、私は再び、守晴すばるに声をかける。



「吃驚させちゃって、ごめんね?

 約束の人がルーズな上に気まぐれだったから、退屈凌ぎに付き合わせちゃった」



 ウインクし、手を合わせ、お茶目を装うと、ややって守晴すばるは再び笑った。



「ううん♪

 私も、お姉さんと話せて、楽しかったので♪」



 ……その笑顔を見て、心から安心した。

 私の願いは、十五年の歳月を経ても、変わらずに叶い続けていてくれているのだと。



 まぁ後ろで、夏澄美かすみちゃんが思いっ切り臍を曲げてるけど。



「じゃあ、そろそろ行きましょうか。

 最近、美味しいスイーツバイキングのお店、見付けたのよ」

「っしゃあ!

 腹が鳴るぞ!」

「『腕』みたいに言わないの」

「出発進行、オー……です……」



 先導する三人。

 少し遅れて追いかけようとした守晴すばるに、私は声をかける。



「ねぇ。

 あなたは今、幸せかな?」



 少し困惑したあと守晴すばるはニカッと笑った。



「見ての通り♪

 またね、お姉さん達♪」



 そう言って、こちらに手を振りながら守晴すばるは三人に駆け寄り、やがて視界から外れた。



「……良かったの? あれで」

 四人がなくなった頃合いで、夏澄美かすみちゃんが上目遣いをした。

「もっと他に、聞きたいことったんじゃないの?」



「……い〜〜〜〜〜っ杯!!

 りました。

 でも、もう平気です。

 守晴すばるには、私の幼馴染も、両親も付いてるので」

ついでに、偽物の君もね」

「色々、ひど〜い!」



 いつも通り可愛かわいくない物言いに、私は吹き出してしまった。



 大丈夫。

 私達は、大丈夫。

 だって、もう、一人じゃないから。



「ところで夏澄美かすみちゃん、スイーツとか平気な方ですか?」

「……本当ンットに分かりやすいなぁ、君は。

 言っとくけど、今度は助けないからね」

「決まりですね♪

 じゃあ、ずは腹拵えにしましょう♪」

「拵える腹が、どこにあるのさ」

いから、いから、ほら♪」

っさいなぁ、本当ホント



 こんな調子で、成立してるんだか分からない会話もしつつ、私達は一路、スイーツバイキングを目指すのだった。 





「でさ、でさ!!

 もう絶対ぜったい、優雅に働いてると思うんだよね!!

 紅茶とかスコーンとか主食にさっ!!」



 ……主食は、エナドリとカロメ、もしくはコーラとポテチです。

 あと全然、優雅じゃないよ。『締切死すべし』って鉢巻き付けながら、暑苦しく仕事してるよ。

 いや、死なないよ、死ぬわけ無いでしょ。

 何度でも蘇るし、やって来るよ、現実見ようよ、頑張ろうよ。



「休みの日って、何してるのかなぁ!!

 絶対ぜったい、映画鑑賞だよね!!」



 ……『静空しずく、覚えときな? プロにとってホリデーは、ワカ・ことなんだよ』とか、駄目ダメな大人っぽいこと、キリッと力説してたような……。

 流石さすがは元、社畜……。



 あと地明ちあき、いつも通り、『絶対ぜったい』言い過ぎ……。

 そもそも、『絶対ぜったい』と『思う』を同時に使うって、矛盾してない……?



静空しずく

 どうかした?」

「う、ううんっ!

 なんでもないっ!」



 気遣い屋の恵海めぐみからの質問を適当に誤魔化ごまかしつつ、私はレモン・ティーを含んだ。



 憩吾けいごさん改め、憩吾けいごくんと再会してから、初めての休日。

 私は今、死神御用達の喫茶店『unibirthalyアニバーサリィ』で、幼馴染おさななじみの三人とお茶していた。

 って言っても、家事手伝いは基本、魔法で済ませてる(料理は別)し、憩吾けいごくんの死事しごともそんなに手伝ってないし、趣味の料理やアルバム作りに没頭するか、夏澄美かすみちゃんとゲームばかりするかの二択だから、毎日がお休みみたいな物かもだけど。



 一頻しきり話して満足したのか、地明ちあきようやく、静かになった。

 正直、ホッとした。だってあまり、彼女の話題を出して欲しくないんだもん。ボロが出そうで。



「でも、確かに凄い、です……。

『イデアルス』……。

 たった五年半で、すでにソシャゲ業界のトップに君臨してて、他の追随を許さないし……」

「だっろぉ!?

 流石さすがうちが見込んだだけはある、うんっ!」

地明ちあき、何もしてないでしょ?」

「はぁ!?

 二人に教えたの、誰だっけぇ!?」

静空しずくちゃん……です……」

 木香このかによる、か細いながらもストレートな言葉を受け、地明ちあきは落ち着きを取り戻し、少し考え、やがて。



「……だっけ?

 いやー、すまん、すまん」

 と、ほうけた発言をする。

 地明ちあきの、こういう、自信家ながらも、手柄を横取りしたり、ミスを否定したりはしない所が、個人的にはポイント高い。

 もっとも、だからこそ未だに、仲良くしてるんだけども。



「そっ。

 だから、地明ちあきが威張ることじゃなーいの。

 分かったら、ちゃんと座ってなさい。お行儀悪い」

「はいはい、分かりましたー」

 恵海めぐみに諭され、ヒートアップして前のめりになっていた体を、地明ちあきは、戻す。



 そんな中、ちょっと怖がりつつも、木香このかがオドオドと挙手する。

 友達としては失格かもだけど、そのさまなんとも可愛らしくて、庇護欲を掻き立てられる。



「ところで……イデアルスって、どういう意味なん、です……?」

「多分、『理想的な芸術』って事じゃないかしら。 確か、『イデアル』が『理想』、『アルス』が『芸術』って意味だから」

「おぉっ! 流石さすが、我らが知恵袋、恵海めぐみ

 出来る女!」

「うふふ。ありがと。

 もっと褒めて」



 惜しい。

 実はあれ、ダブル・ミーニングだったりする。

 本命は、理想的イデアルデスだったりする。



 要するに、彼女の言葉を借りるなら。

『ク○シャゲ、死ね!!

 社会的ソーシャルじゃないくせにソシャゲをかたるク○シャゲ、全部死ねっ!!』。

 っていう、死刑宣告だったりする。



 イデアルス。

 それは、五年前に創設されたソシャゲ会社、及びソシャゲの名前

「グラフィックやDLC、課金にばかり尽力する」ゲーム会社を根絶やしにする為に作られたイデアルスは、本人曰く。



・「戦闘だけで最終レベルまで容易く上げられる(素材が不必要)」

・「完全、無課金制」

・「シナリオ、イラスト、音楽、ゲーム性、そのどれもが至高」

・「昼と夜に毎日、無料で十連可能で、キャラやランクを絞れる」

・「余分なライフは回復アイテムに自動で変換」

・「キャラが豊富な上に声と演技も秀でている(声は社員が当てている)上に、エディット可能」

・「期間限定のイベント·キャラも無し」

・「RPGやアクション、シューティングやカード、パズルや格闘、レースや音ゲー、シミュレーションやアドベンチャーと、様々な形で楽しめる(無論むろん、クロスセーブ対応)」

・「18禁も有り」

・「神作画のアニメ、楽曲多数」

・「画面が縦、横に自由に切り替えられる」



 といった具合に、ポテンシャルが半端じゃない。



 そんなわけで現在、君の名○や鬼○と同じくらいの影響力で、大手も含め、他社の作品を次々にサしゅうに追い詰め、すでにソシャゲ業界を我が物にしているほどだったりする。



 まぁ……そもそも、勝てるわけがないんだけどね。

 だって、シナリオを担当しているのは、前世で稀代のクリエイターやってた人だから。

 そして、シナリオ以外の分野は、すべて魔法でコスパ良くハイ・クオリティに実現させてるんだから。

 相手が悪いというか、文字通り異次元というか、ご愁傷様というか……。



 そんなこんなで現在、イデアルスは、そのメンバー構成も不明(ていうか、社長しかないんだけど)なまま、新入社員を募集する事なく、首位を独占している。

 結果、残ったソシャゲは、本当ほんとうにクリエイターとユーザーが純粋に楽しみながら開発された、正しい意味でソーシャルな、稀にイデアルスにさえ順位で勝ったりもする、理想的なゲームだったりする。



 余談だけど、『なんか、我望がもう理事長や、柳葉校長の気分ー』とか言ってた彼女の気持ちは、未だに良く分からない。



「お待たせ致しました」



 話に華を咲かせていると、不意に店主、そして唯一のスタッフである男の人が、四人分のケーキを持って来た。

 瞬間、割と面食いな地明ちあきが露骨に目の色を変える。



 そういえば地明ちあき、今は彼に夢中だったっけ。

 まぁ、熱し易くて冷め易いから、特に心配は要らないんだけど。

 憩吾けいごくんにさえ、惚れなければ。



「ありがとうございます。

 し……ぐれ、さん」

 咄嗟に付けたことも手伝い、まだ呼び慣れてない名前に手こずりつつお礼を言うと、時雨さん……というかシークさんは、素敵に微笑ほほえんだ。

 相変わらず、天然ジゴロだなぁ。

 彼に『吾郎』さんっていう名前を付けた私の判断は、きっと間違ってないと思う。



「いえ。

 ごゆっくりどうぞ、静空しずくお嬢様」

「も、もうっ!

 めてください!」



 ……もっとも、シークさんはひそかに、未だに根に持ってるんだけど。

 同じく即興で加えた、『元々、甘城あまぎ家お抱えだったけど、独立した』って、後付設定も含めて。

 だから、こんな風に揶揄からかいを装って、遠回しに忠告して来たりする。『勝手な真似マネをするな』と。



 それはともかく、だ。

 特訓を受けつつも、息抜きのために『unibirthalyアニバーサリィ』に三人と通い詰めて、早五年。

 それはつまり、私が彼女の正体を知ってるのに隠蔽し始めて、それくらいの年月が経った事を意味する。



 そろそろ、打ち明けたい。「その社長、全然、そんな感じじゃないよ」「知り合いだよ」って。



 でも、私が言った所で、きっと信じてもらえない。

 五年前までの家族はさておき、私達の築いて来た関係は本物だし、本物そうだと信じたいけど、それとこれとは話が別。

 だって、もし私が逆の立場だったら、にわかには信じ難いし、その場でぐには受け入れられないと思うから。

 となれば、当人を連れて来るのが、最短ルートだ。



 けどなぁ……。

 あのキャラな上に、普段から「生前の友達とはいえ、希亡きぼう者や家族でもない人間と過干渉すんな」と、三人と未だに一緒に居るのをあまり快く思ってない節が有る彼女だしなぁ……。



「協力してくれるかなぁ……夏澄美かすみちゃん……」

「……静空しずく

 あなた今日、ちょっと様子ようす、おかしいわよ?」

「……」



 ……どうしよう。

 やっぱり、ぼちぼち限界みたい。





「えーっと……ここ、かな?」

 面と向かって話すべきだと思い、高石たかいしさんという人の家に向かっていた。

 憩吾けいごくんに夏澄美かすみちゃんの居場所を聞いたら、ここに彼女が遊びに行ってるらしいと教えてくれたのだ。



 ちなみに、『どうして、そこに?』って聞いたら。

『……いずれ分かる。分かりたくなくても。

 ちなみに俺は、五年経った今も、まだ完全には受け入れてねぇ』

 って返された。



 どういう意味だろう?

 ていうか、人間との接触は避けるべきって、あれ程、口を酸っぱくして言ってたのに……。



 もしかして、次の希亡きぼう者とか?

 いや、でも、それっぽくもないんだよなぁ。

 憩吾けいごくん、基本的に死事しごとは全部、教えてくれるし。

 まぁ、私が定期的に相談に乗ったり、手伝ったりもしてるから、っていうのも有るんだろうけど。



 真意、真相はさておき、目的地に向かうと、本当ほんとう夏澄美かすみちゃんがた。

 ごめん、憩吾けいごくん。疑ってて(でも憩吾けいごくんの普段の態度も悪いと思います)。



 それはさておき。

 彼女は今、庭でワンちゃん(可愛いっ!!)と遊びつつ、いかにも人の良さそうな老夫婦と話していた。

 この人達が、高石さんご夫婦かな?



「……静空しずく

 どうしたの?」

「う、ううん。

 ちょっと夏澄美かすみちゃんと、お話したいなぁ……なんて」

夏澄美かすみちゃんのお友達かい?

 彼女に劣らず、可愛いねぇ」

「お父さん?」

「良いじゃないか、これくらい

 君、名前は?」

「あ……は、はい。

 甘城あまぎ 静空しずくって言います。

 初めまして。

 夏澄美かすみちゃんが、いつもお世話になってます」

「いや……なんで初対面で、そこまで分かんの?」

「えと……何となく?」

「何それ」



 かっ……夏澄美かすみちゃんが笑った!?

 揶揄からかってるふうでもく、実に自然と!?

 UR認定待ったなしっ!!



 そういえば、なぜか分からないけど、お二人やワンちゃん(やっぱり可愛いっ!!)と一緒に居る夏澄美かすみちゃんは、心なしか、いつもよりリラックスしてる。

 それくらい、仲が良いのかな?

 ……羨ましい。



じょうさん、真裕まひろさん、ごめん。

 友達が急用みたい。

 また、顔出して、良い?」

「ああ。

 いつでもおで。

 夏澄美かすみちゃん達なら、大歓迎さ」

「そうそう。

 また灯羽ともはの近況、聞かせてね。

 あの子、恋人のあなたにばかり押し付けて自分は、てんで梨のつぶてなんだもの」

「……言ってだけ、みる……」

「トモハ?」



 夏澄美かすみちゃんの恋人さん?

 名前だけだと、男の人か女の人か、分からない。

 夏澄美かすみちゃん、恋人さんたんだ。会ってみたいなぁ。



 やっぱり、人間かな? 高石さんの息子さん?

 それとも、もしかして、二次元だったりするのかな?

 あるいは、同性……とか?



 ……まぁ……それならそれで、受け入れよう。友達だし。

 夏澄美かすみちゃんだって今、私の事、『友達』って、言ってくれたし。

 心を強く持とう、うん。

 今、多様性の時代だもんね。

 


 ……あれ?

 確か前にも、どこかで、その名前を聞いたよーな……。



「……何、決めるぜ、覚悟してんの?」

なんだか文体、おかしくないですか? それ」

「気にすんな。君にはまだ早い。

 ウル銀も観てない君には、ね」

「またそうやって、く分からないこと言って、はぐらかす……。

 夏澄美かすみちゃんの、いけず……」



 って、あれ?

 何だか夏澄美かすみちゃん、元気無い?

 どことなく、居心地いこごち悪そう。

 どうして? さっきまで、凄く楽しそうだったのに。



「あ、あの、さ……。

 灯羽ともはは、あれで結構、元気だから……。

 こうやって、こっちを遣わしてだけど、二人に仕送りとか、してるし……。

 友達だって、ちょっと頼りないけど三人、出来た、から……。

 だから、その……そんなに心配しないで、大丈夫、だから……。

 本当ホント、うん……平気だから……」

「……?」



 普段はクール、饒舌&毒舌な夏澄美かすみちゃんにはめずらしく、歯切れが悪く返答する。



「そうかい。

 だと、いんだけどなぁ」

灯羽ともはを、よろしくね。

 夏澄美かすみちゃんやお友達が一緒なら、あの子も安心だわ。

 二人共、達者でね」

「……うん。またね」



 そのまま夏澄美かすみちゃんは二人に頭を下げ、そそくさと帰ってしまう。

 私も少し遅れて二人に会釈し、高石家を出て、彼女を追って少しだけ走った。



夏澄美かすみちゃん……い加減、説明……」

 色々、聞き出そうとした私は、目の前にいた夏澄美かすみちゃんの表情に、思わず息を呑んだ。



 彼女は、泣いていた。

 その顔は赤く染まっていて、うれしいような、晴れやかなような、寂しいような、悲しいような……。

 かく、幾つもの色を帯びた、表情をしていた。



「……何?」

 声をかけられ我に返った私は「う、ううん、何でもっ!」と、これ以上は詮索しないことにした。



「……そ」

 と、夏澄美かすみちゃんは素っ気なく答えた。

 その頃には、いつもの夏澄美かすみちゃんに戻りつつあった。



「……要件は?」

「え?

 ……聞いてくれるんですか?」

「特別に、ね。

 今、ちょっとい気分なんだ。

 気が変わらない内に、早く話しな」

「……はいっ!!」



 夏澄美かすみちゃん。前にあなたに言ったこと、間違ってなかった。

 やっぱりあなたは、何だかんだで、い人だよ。

 天の邪鬼な死神だけどね。





 って!

 そう思ってた時期が、私にもありましたぁ!!



いやぁぁぁぁぁ!!

 もう、いやぁぁぁぁぁ!!

 もう限界、本当ホント無理ぃぃぃぃぃっ!!」



 羞恥に耐え切れず、私は懇願した。

 しかし、夏澄美かすみちゃんに、その気配は感じられない。



「何さ。もうギブ?

 まだ、五十着位くらいしか撮ってないじゃない。目標の半分だよ。

 百八着は撮るんだから」

「単位っ! 単位、おかしい!

 なんで写真の枚数じゃなくて、服の数なんですかぁっ!?」

「ごちゃごちゃ言うな。

 君が言ったんだろ?『会ってくれたら、なんでもする』って」

「条件がこんなだなんて、聞いてないっ!」

「いや、聞こうよ、聞いとこうよ。

 本当ホントに、そそっかしいなぁ、君は。

 危ないやつに引っかかるなよ?」



 今! 絶賛! 危ない人に、引っかかってます!

 ていうか、あなたです! あなた本人こそが、危ない人です!



「そもそも夏澄美かすみちゃん、何も話さなかった!

 イエスともノーとも言ってない顔してただけ!」

「傑作だったろ?

 どっかのアイドル強者も唸るだろうさ」

なんの話!?

 てか結局、私がずーっと、お話してたじゃないですかぁ!

 終いには、生暖かい目で見られてたじゃないですかぁ!

 絶対ぜったい、信じてないですよね!? あれ!!」



 忘れない。

 だって、初めてだったもん。

 三人……取り分け、いつも冷静な恵海めぐみでさえ、持て余していた顔が。



「だろうね。

 でも、これも君が言ったんだろ? 『会ってくれるだけでい』って。

 こっちは、それに従っただけだ。非は無いよ。

 設定もプロットもシナリオも詰めなかった、君が悪い」

本当ホントに有言実行することないじゃないですかぁ!

 証拠の一つや二つ、見せてくれてもよかったじゃないですかぁ!」

だよ。企業秘密だもん。

 てか、少し黙ってなよ、被写体。

 君だって、ポロリはしたくなかろう?

 こっちだって同じだ。くまでも、限り限りギリギリのラインがしいんだから」

夏澄美かすみちゃんの……。

 ……ひとでなしぃぃぃぃぃっ!!」

「そりゃ、死神だし」



 改めて思い返しても、やっぱりおかしいよ!?

 なんで、みんなに会ってくれるってだけで、コスプレしなきゃならないの!?



 それも、際どいのばっか!

 水着とか、チャイナ服とか、サンタさんとか、浴衣とか、メイドとか、バニー・ガールとか、ナースとか、警察官とか、テニス・ウェアとか、巫女服とか、セーターとか、レース・クイーンとか、チアとか!

 カットもおかしいし、ポーズがアレだし、スリットも多いし!

 幾ら女の子同士でも、流石さすがに恥ずかしいよ! 限度が有るよ!

 何より!!



「第一、なんなんですか、この部屋ぁ!?

 なんで、女の子のエッ……ポスターが、部屋中に貼ってあるんですかぁ!?

 夏澄美かすみちゃん、そっちだったんですかぁ!?」

馬鹿バカ言え。ちゃんと、ノーマルだよ。

 二次にじコンではあるけども」

二次にじコンって、なに!?

 てか、だったらどうして、こんな意地悪、するんですかぁっ!?」

「ケーゴが半年で辿り着いた真実に、五年経ってもゴールしてない君が悪い。

 まぁ……いつまでごねられるのもなんだ。

 そろそろ、食事にしよう」

「えっ!?

 本当ホントですかぁ!?」

「ああ。

 も有るよ。

 ってんじゃなんだしね。

 このあとは、いともさ。

 も渡そう。

 それなら、どう?」

「ま、まぁ……それくらいなら……」



 この時の返事を、私は数分後、激しく後悔する事になる。



 彼女の言ったことに、間違いは無かった。

 確かに、食事、スイーツ、手ブラ、リボン、エプロン、タオルだった。



 違うのは、私達の見解、認識。

 私は、まだ気付いていなかった。

 彼女の、この発言の裏に隠された、恐ろしい計画に。

 まんまと思惑通りに動かされた事に。



 まぁ……要は、もっと過激な格好かっこを、させられたってこと

 それはもう、この場に憩吾けいごくんまで現れようものなら自殺したくなるくらい、恥ずかしい格好かっこを。



「もう……もう、だぁ……。

 なんで私が、こんな目に……。

 死んじゃう……。恥ずかし過ぎて、死んじゃうぅ……。

 うぅ〜……」

「おっ。いね、いねぇ。

 ゾクゾクするねぇ。

 程良い嗜虐心が溢れて来るよぉ」

「〜っ!!

 夏澄美かすみちゃんの……!!

 ……ドSゥゥゥゥゥウゥゥゥゥ!!」



 結局、次からは憩吾けいごくんに扮してもらことになった。



 この事件で、彼女との関係を見詰め直し、私から夏澄美かすみちゃんになにか頼むことほとんど無くなった。

 だって、要求はアレだし、口では勝てる気がしないし、何を考えてるかも正直、よく分からないし。

 友達、止めよっかな。いや、割と本気で。





「……ん、んぅっ……」 

 自宅で守晴すばると一緒に寝ていた私(って言っても、目を瞑って休んでいただけだけど)は、なんとなく目が覚めた。



 そのまま守晴すばるを起こさないように注意しつつ布団ふとんから出て、「んーっ……」と、伸びをし、だらんと腕を下げた。



 ……疲れた。

 今までの中で一番いちばんむしろ断トツで疲れた。

 まさか本当ほんとうに、百八着も準備していたなんて……。



 私も私だよね。

 いくら、これから関係が微妙になるのが嫌だからって、最後まで乗るなんて……。

 おかげ夏澄美かすみちゃん、滅茶苦茶ホクホクしてたなぁ……。

 もうあんなの、二度と御免……。



「……どうせだったら、憩吾けいごくんに撮られたかったなぁ。

 憩吾けいごくんの頼みなら、別に、そこまで……」

 私は唐突に我に返り、ブンブンッと顔を横に振った。



 そこでようやく、私のスマホ(魔法で新たに作った、死神専用の物)に、誰かからメールが届いている事に気付きづいた。

 もしかして、着信音やバイブで起きたのかな?



「……夏澄美かすみちゃん……じゃあ、ないよね……?」

 疑ってかかりつつ、私はスマホを取った。



 時刻を見ると、まだ深夜。

 この時間に送って来るような非常識な知り合いは、人間にはないので、死神なのは間違い無いはず

 となれば、四択かぁ……。



 出来できれば憩吾けいごさん、それが駄目ダメならシークさん、大穴で夏澄美かすみちゃんがいなぁ。

 命王めいおうさま、実はちょっと苦手なんだよね……。



「ーーえ?」



 結論から言うと、届いていたのは憩吾けいごくんからのメールだった。

 でも私は、その内容に触れるよりも、そして片想いの相手からの、再会してからの初メールに舞い上がるよりも先に、その日時に目を疑った。



 送られて来たのは、何と、今から五年も前。

 それも、私が憩吾けいごくんに出会うよりも、半年前の時間からだった。





 過去の憩吾けいごくんとの、約束の日。

 憩吾けいごくんからのお願いに答えるために、私はパパとママ、守晴すばるに(魔法で生み出した)ドレス姿を見てもらっていた。



「どう?

 変じゃない、かな……?」

「ああ。

 とても似合ってるよ」

「ええ。

 素敵よ、静空しずく

静空しずくお姉ちゃん、すっごく可愛い〜♪」



 家族からお墨付きをもらい、私はガッツポーズをした。

 同性だから、普段はママや守晴すばる一番いちばんだけど(ごめんね、パパ)、今日はパパからのコメントが特に嬉しかった。



 だって、今日は特別な日……大好きな人と、結婚式で会う日だから。



 まぁ……厳密には、ちょっと違うし、その内容に関しては、まだ色々と半信半疑な所が有るんだけど……。



 だって、ねぇ?

 いきなり、あんな衝撃的な事実を連続で明かされても、ぐには受け止められないよ。

 ただでさえ、あんな大事件の直後だし……。

 向こうも大層、驚いてたなぁ。そりゃそうだよね……。



静空しずく? どうかした?」

 思い出し、赤くなっていると、ママを不安にさせてしまった。

 いけない、しっかりしないと。



「……なんでもない♪

 平気♪」

 私は、咄嗟に笑顔を作り、気丈に振る舞った。

 流石さすがに、今、二人に言っても信じられない、よね?

 私……ううん。私達だって、まだ半信半疑なんだし。

 それに、目の前に守晴すばるだってるし。教育上、よろしくぎる。



「じゃあ私、行くね!

 友達、待たせてるから!」



 そう。あくまでも、友達の結婚式。

 三人、そしてこの時代の憩吾けいごくん達には、そう説明してある。

 じゃないと、過去の憩吾けいごくんにさえ内緒にしてある、後々仕掛ける予定のサプライズが台無しになるから。



 三人にサムズアップし、私は意気揚々と甘城あまぎ家を抜け、目的地まで駆け出した。



 今日のミッションは、三つ。

 どれもこれも、一筋縄じゃいかない、けれど大切な物。

 絶対ぜったいに、コンプリートしなくてはならない。



「えい、えい、おー!!」

 とみずからを奮い立たせ、私は結婚式場に進んだ。

 主に、ただならぬ不信感が漂いつつある、友達の為に。





 って!

 そんな事を考えたのが、大間違いでしたぁ!!



「うわぁぁぁぁぁんっ!!

 なんで、こうなるのぉぉぉぉぉ!?」



 憩吾けいごくん改め、憩吾けいごと親密になった頃。

 私は彼に、夏澄美かすみに化けて幼馴染おさななじみと話して欲しいとお願いした。

 それはもう、彼の手を握り、ウルウルした瞳からキラキラ光線も放ち、なんなら胸チラまでさせて誘惑した(憩吾けいごにだけだもん! 痴女じゃないもん!)。



 なのに……!! なのに、なのにぃっ!!

 どうして、こうなっちゃうのぉっ!?



「仕方ないだろ?

 静空しずくが、こっちに頼んだんだから」

「違うもん、違うもん、そうじゃないもぉんっ!

 私、今度こそ間違い無く、憩吾けいごに頼んだんだもん!」

「だが、それは間違い! 嘘である。

 彼女が救いを求めたのは、夏澄美かすみに変装予定の憩吾けいごに扮した夏澄美かすみだったのだ!」

「ややこしいっ!!」

「君は、やかましいね。

 それより、ほらぁ。ちゃーんと利子付けて、体で払って貰わないと……ね?」

夏澄美かすみの……!!

 夏澄美かすみの、詐欺師ぃぃぃぃぃっ!!

 嫌い、嫌い嫌い、嫌いっ!!

 大っっっっっ嫌ぁぁぁいぃっ!!」



 ……やっぱり、間違ってのたかな?

 こんなひどい人を助けるなんて。

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