第六話 アミーお姉さんとお風呂♡

「ふえ・・・、あの・・・、今、お風呂って・・・、一緒にって・・・」


「ええそうよ、お風呂、洗ってあげるから入りましょう?

・・・あ、それとも、マモルくんの世界にはお風呂ってなかったの?

お風呂っていうのはね・・・」


「あ・・・、その、お風呂はありました・・・、ありましたけど・・・」


「良かった♪ じゃあ行きましょう♪ ほらこっち、早く入って気持ち良く寝ちゃいましょうね♪」



 そう言うと、アミーお姉さんは立ち上がって守くんの手を引きます



「えっ・・・? あの・・・、あれ・・・」



 守くんはどうしてこんなことになっているのかよく分からないまま、

なし崩し的にお風呂場へ連れていかれました・・・





「はい、お風呂はここよ♪ 脱いだ服はここに置いとけばすぐ綺麗になるから

入るときは必ずそうしてね?」


「は、はい・・・、分かりました・・・」


「それじゃ、眠いでしょうからすぐに入っちゃいましょう♪ よいしょっと・・・」


「わわっ・・・!」



 脱いだ服を入れておく場所だけ簡単に説明すると、

アミーお姉さんは自分の服に手をかけます


 当然その後予想される行動が分かり、守くんは慌てて後ろへ振り返りました



「・・・どうしたの? お風呂、入るんでしょう?

早く服を脱いじゃお?」


「は、はい・・・、分かりました・・・」



 彼の行動に不思議そうな顔をしつつ、アミーお姉さんが入浴を促しています


 守くんは慌てて返事をすると、できるだけそっぽを向きながら

服を脱ぎ始めました



(どうしてこんなことになっちゃったんだろう・・・、

僕、なんでお姉さんと一緒にお風呂へ入ろうとしてるの・・・?)


(お風呂くらい一人で入れるのに・・・、でも断れない・・・)


(なんだか変な気分・・・、後ろでお姉さんが服を脱いでるって思うと

胸がどきどきしちゃう・・・)



 なぜ一緒に入ることを了承してしまったのか、そして今からでも拒否しないのか、

自分の行動を不思議に思う守くん


 その後ろでは、特に変わった様子もなく

アミーお姉さんが着々と服を脱いでいました



「んしょっ・・・、ふう、今日は結構汗かいちゃったから

熱めのお湯でさっぱりしたいわね♪ あ~・・・、服、思ったより汚れちゃってるわ、

他の部屋にあんまり泥が落ちてないといいけれど・・・」



 着ていた服の状態を確認しているらしいお姉さんですが、

その何気ない独り言の合間に、衣の擦れる音が聞こえてきます


 どういうわけか、それが聞こえる度に守くんの胸はひときわ強く高鳴っていました


 ほっぺたは赤くなり、目は冴え、

そしてなんだかとってもいけないことをしている気分になってしまいます



(頭がぼーっとなっちゃいそう・・・、僕、病気になっちゃったのかな・・・、

どうしよう・・・、お姉さんに移っちゃうかも・・・)


(でも・・・、お風呂入ろうって言われたからちゃんと入らなきゃ・・・)



 頭の中は少しずつ熱っぽくなっていき、考え事もできなくなっていく守くん


 だけど、なぜか言われた通りお風呂に入らなければいけないと思いながら

ぎこちなく服を脱いでいました



「服はちゃんと脱げたかしら?♪ うん、それじゃあお風呂へ行きましょう♪

あ、ちょっと滑りやすくて危ないから手を繋いでおきましょうね♪」


「あ・・・、わっ・・・!」



 守くんが服を全部脱いだところで、既に服を脱ぎ終わっていたお姉さんが

入浴を促すように手を取ります


 手を引かれて思わずそちらを向いてしまった守くんは、

ほんの一瞬お姉さんの姿を視界の端に捕らえ、慌てて首を曲げました



(お、お姉さんのはだか、見ちゃいそうだった・・・、

あ・・・、なんだかまたお鼻がむずむずしてきた・・・)


「マモルくん・・・? そんなに顔を背けてたら首が痛くなっちゃうわよ?

そっちに何か珍しいものでもあったの?」



 守くんの心境など露ほども知らないお姉さんが、

きょとんとしながら何をしているのか問いかけます


 軽く鼻を押さえつつ、守くんはできるだけ無心になりながら言葉を返しました



「な・・・、なんでもありません、大丈夫です、見てません・・・」


「・・・? えっと、とにかく足元に気を付けてね?」



 不思議そうな顔をしながらも、お姉さんはそのまま守くんの手を引いて浴室へ入ります


 守くんはできるだけお姉さんの方を見ないようにしながら

お風呂の中を見てみました



(あれがお風呂なのかな? お家のお風呂と同じくらい・・・、でもお湯はどこから出てくるんだろう?

シャワー・・・、はどこにもないみたい?)


「マモルくん、これがお風呂よ、使い方も一応教えておくわね、ちょっと見てくれる?」


「は、はい・・・」



 アミーお姉さんは浴槽に手を触れるとこの世界のお風呂についての説明を始めてくれます


 もちろん直視できるはずのない守くんは、できるだけ胴体から目を逸らしながら

なんとか手元を覗き込みました



「この魔法はそう難しくないわ、結構いろんなことに使うから良く覚えておいて・・・、ウェルエム・ヴィーダ」


「え・・・? わっ、お風呂の中にお水が・・・、あ、違う・・・、これ、お湯ですか?」


「あら、マモルくんの世界は魔法でお湯を張らないのね、

この魔法はお湯で容器を満たすものよ、出したものは飲めないけど便利なの♪」


「あれだけでお湯が溜まっちゃうなんて、すごいです♪」


「ありがとう♪ それじゃ入りましょう♪ 二人だとちょっと狭いけど、まあ大丈夫でしょう♪

体洗ってあげるわね♪」


「あうう・・・、はい・・・」



 お姉さんの使った魔法に注目していた守くんですが、

二人でお風呂に入るよう言われてまたすぐに落ち着きがなくなってしまいます


 もちろん身体ぐらい一人で洗えるものの、お姉さんに言われるとどうしても拒否できません


 二人では少し狭い浴槽へ入り、揃って身を縮こまらせながら

アミーお姉さんが背中を擦ってくれています



「ふふ♪ マモルくんの背中はちっちゃいわね♪

これからどのくらい大きくなるか楽しみだわ♪」


「えっと・・・、あの・・・、はい・・・」



 楽しそうなお姉さんとは反対に、守くんは緊張しっぱなしで

何を言われているのかほとんど分かっていませんでした


 水の弾ける静かな音や身体へ伝わる感触にずっと胸を高鳴らせています



(お姉さんの手・・・、とっても柔らかい・・・、

背中を触られてるだけなのにものすごくドキドキする・・・)



 覚えている感情の正体が分からないまま、

彼は大人しくされるがままになっていました


 ほどなくして、背中を洗い終わったのかお姉さんが声をかけてきます



「ん、こんなものね♪ じゃあ次は前を洗ってあげましょうか?♪」


「え・・・、あ・・・、まえ・・・、前は、いいです、自分で洗えます・・・!」


「あらそう?♪ それならちゃんと綺麗にごしごしするのよ?♪」


「は、はい・・・」



 正面まで洗おうとするお姉さんですが、それはさすがに恥ずかしかったのか

守くんもようやく拒否することができました


 そして自分の身体を擦ろうとするものの、またお姉さんが話しかけてきます



「そうだ♪ せっかくだから今度はマモルくんに私の背中を擦ってもらいましょうか?♪

洗いっこしましょうよ♪」


「へっ・・・? えっ・・・、そ、それは、あの・・・、わ、分かり、ました・・・」


「じゃあお願いね♪ はい、どうぞ♪」



 お姉さんがそう言った直後、少し大きな水の音が聞こえてきました、

どうやら湯船の中で向きを変えたみたいです


 今度は要求を拒めなかった守くんは、

お姉さんが反対の方を向いていると信じながら後ろへ振り返ります


 すると、確かにアミーお姉さんはこちらに背中を向けていましたが、

その姿を見た瞬間、守くんは思わず固まってしまいました



「上手に洗えるかな~?♪ しっかりごしごししてね~♪」



 顔を向けながら嬉しそうに言うお姉さんは、

長い髪を根元から束ねるようにして退けながら、うなじを見せるような恰好で守くんを待っています


 水に濡れた真っ白で綺麗な肌も相まって、その仕草がとても色っぽく見えました


 守くんの顔は段々と赤くなり、鼻の奥がむずむずし始めます



(お姉さんの背中を見てると顔が変になっちゃう・・・、

お風呂、そんなに熱くなかったのに・・・)


「マモルくん? どうしたの? 何か顔が赤くなってるような・・・」


「な、なんでもありません、大丈夫です・・・、

それより、背中、洗います・・・」


「そう? それじゃお願いね♪」



 お姉さんに見惚れてドキドキしてしまったなんて

恥ずかしくて言えなかったのでしょうか、

守くんは慌てて取り繕いながら背中を擦り始めました


 だけど、艶めかしい身体を見ながらでは思うように力が入らず、

なかなか綺麗にしてあげられません


 おまけに考える力も失われているのか、昼間お姉さんは大蛇と戦っていたのに

背中へ傷一つないことを不思議に思う余裕すらありませんでした



(うう・・・、力が入らない・・・、

お姉さんの背中に触ってたらますますドキドキしちゃう・・・)


「マモルくん、それじゃちょっとくすぐったいわ♪

もう少し強く擦ってもらえる?♪」


「は、はい・・・」



 背中を擦るどころか撫でている程度だったらしく、

お姉さんが少しこそばゆそうにしながら力を入れるよう求めてきます


 だけど、背中を見ているだけで胸のドキドキが収まらない以上

守くんにはどうすることもできませんでした


 しかしその時、ぼーっとなりかけていた彼の頭に

とても良いと思える考えが浮かびます



(ど、どうしよう・・・、見てるだけでも変な気持ちになっちゃうから、力が入らない・・・、

・・・あ、そうだ、それなら見なきゃいいんだ・・・!)



 見てしまってはどうにもならないなら見なければいい、

そう考えた守くんは固く目を瞑りました


 すると、少しずつですが変な気持ちは収まり

力を入れてお姉さんの背中を擦れるようになっていきます


 しっかりと手を動かしていれば、手に伝わる感触もあまり気になりませんでした



「そうそう♪ その調子でお願いするわ♪ あ、もうちょっと上の方もお願いね?♪」


「は、はい・・・、んしょ、よいしょ・・・」



 今度はちゃんと洗えているらしく、お姉さんの声も心なしか嬉しそうです


 この調子で力いっぱい擦り続けようとしていた守くんですが、

いつまでも目を瞑ったまま手を動かしていられるはずがありませんでした


 気付かない内に段々と端の方へ寄っていた守くんの手は、

ふとした拍子に滑って思いっきり体勢を崩してしまいます


 おまけに目を閉じていたせいで反応が遅れ、前のめりになった守くんは

お姉さんの背中に顔からぶつかり、そのまま倒れ込みそうになりました



「わぷっ!」


「あっ、マモルくん大丈夫!?」


「ぷあっ! けほ、けほっ・・・、だ、大丈夫です、なんとか・・・、あれ・・・?」



 お湯の中へ沈みかけたことで焦りましたが、

とっさにアミーお姉さんへ抱き着いて身体を支え、なんとか難を逃れます


 ところが、お湯へ沈まなかったことに安心するのも束の間、

何度か咳き込んでいる内に、自分の手が妙に大きくて柔らかな感触を

思いっきり掴んでいることに気付きました



(な、なにこれ・・・? すっごく柔らかい・・・、

そういえば僕、いつの間にかお姉さんの身体にしがみついてる・・・、

もしかして、これ・・・、お姉さんの・・・、おっぱい・・・?)



 手を回している位置から、彼は自分が何を鷲掴みしているのか、

指が沈み込むほど柔軟な物体の正体を理解してしまいます


 同時に一瞬で顔が真っ赤になり、鼻から勢いよく血を噴き出してしまいました



「ぶふっ!! ご、ごめんなさい・・・、ぼ、ぼく、とんでもないこと・・・!」


「マモルくん!? 大変、鼻血が出ちゃってる・・・、お鼻をぶつけちゃったの?」



 鼻血を出しながらも、守くんは胸に触れてしまったことを謝罪しつつ

慌ててお姉さんから離れます


 ところが、今まで顔だけを後ろに向けていたお姉さんが事態に気付き、

彼の状態を確認しようと立ち上がりながら振り返ってしまいました


 狭い浴室の中で半分くっついていた状態だったこともあり、

守くんの目の前にお姉さんの肢体が全て曝け出されてしまいます



「あ・・・・・・」 


「大丈夫? ちょっとお顔を見せて、傷になってたりしたら・・・」



 怪我をしてしまったのかと少し心配そうに顔を覗き込むアミーお姉さんですが、

守くんはそれどころではありません


 彼の顔よりも大きいかもしれないほど豊満なおっぱいから

とても口に出せないようないけないところまで、

水の滴るお姉さんの艶姿を何から何まで間近で思いっきり見てしまったのです


 今まで見たことがないようなとんでもない光景に、

守くんの頭は一瞬思考を停止して・・・


 次の瞬間一気に興奮が押し寄せてきたのか、

更に思い切り鼻血を出して浴槽に沈んでしまいました



「ぶふぅっ!!?」


「えっ!? きゃっ! またすごい鼻血、マモルくんしっかりして!」


「きゅ~・・・・・・」


「う~ん・・・、これは・・・、気を失ってるだけのようね、

のぼせちゃったのかしら・・・、とにかくお風呂から出してあげないと・・・」



 お姉さんの身体はあまりにも刺激が強すぎたらしく、

すっかり目を回してしまい、鼻から血を大量に流す守くん


 お姉さんは、これ以上お風呂に入れておけないと考えたのか、

彼を抱きかかえて移動します


 結局、守くんのとんでもない一日は、とても情けない形で

唐突に幕を下ろすこととなりました・・・



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