第20話 【萎縮震慄】

今日は朝から広範囲に雨だ。

地球と違って、この世界にはラジオも無ければテレビも新聞もインターネットも無い。

だから、天気予報は自分達でするけど、地球のプロの方々の様にはいかない。

近くの雲しか見えないしね。


新しい居住区の整備は、晴れるまでお休み。


お家の中で、子供達と衣服を作ったりしている。

綿花の様な綿毛を沢山付ける植物を見付けたので、それを栽培して綿や糸にしたり、カイコの様な昆虫を飼育して、絹糸の様な物を作っている。

これもお肉同様、獣人ウェア達に人気なので、量産が出来る様になったら、産業として確立させられるかも知れない。





獣人ウェア 兎族ラビット集落むらに居る光一コーイチ達は、雨があがるのを待って出発するみたいだ。

雨に濡れてしまうと、持って行った肉が悪くなってしまうので、これは仕方が無い。


一暗イアン憑依カバーの使える子達は、雨があがるのを待っている間に、兎族ラビットから移動先の情報収集をしている。

コーイチ達は、お肉など濡れたら困る物の防水の作業をしていた。


「なるほどね……遭遇したら、それも狩りながら移動しよう」


イアン達、髪の黒い子達は、狩りの話をしている。



何とか夜明けから数時間で雨があがった。

お昼まではまだ時間に余裕がある。


「じゃあ、みんな行こうか?」


コーイチが声を掛ける。

獣人ウェア 兎族ラビット達に別れを告げて、出発した。


南西に向かう。


なかなか順調に移動出来ている。

兎族ラビットに教わった通りに、草原の中の獣道を進んでいる。


ガサガサ


何か大きな物が、草を擦りながら移動している音が聴こえている。


獣人ウェア 兎族ラビットに教わった“ヤツ”が現れたかもね……周囲に気を付けて」


イアンが皆に注意を促す。


シャーーーッ!


現れたのは巨大な蛇だった。

鎌首かまくびを持ち上げて、コーイチ達を威嚇している。

どうの太さが成人女性の腰程ある。

長さも十メートルまでは無くても、六メートルから八メートル程度はありそうだ。

でも、このサイズなら、狩猟を生業としている黒い髪の子達には、全く脅威にならないサイズだった。

と、言うより、狩りしやすい良い型と言える大きさだった。


「新鮮なお肉が来てくれたよ。有り難く狩ろう」


そうイアンが声を掛けると、何人かが大蛇に対して念動マインドを使って、大蛇の動きを止める。

こうなると、後はゆっくり仕留しとめるだけだ。


白い髪の子達は、少し離れて様子を見ている。

もし、黒い髪の子達だけで対処し切れない状態になったら、魔法でサポートをするのだ。


イアンが念動マインドで動きを封じられている大蛇に近付くと、小刀で首を切り落として、止めを刺した。

巨大な蛇の頭は、穴を掘って埋める。

形や色から判断して、毒蛇の一種だからだ。

蛇は頭を切り落としても、なかなか死なず、首だけでも噛み付いてくる。

毒も強力なので、牙に擦るだけでも危険なので、穴を掘って埋めてしまうのだ。


頭を埋めたら、肉の解体。


先ずは皮を剥いで、肉を骨ごとぶつ切りにしていく。


解体された肉や道具は、白い髪の子達の【水を作る力】で出した水で、きれいに洗浄する。


処理の終わった肉は、獣人ウェア 兎族ラビット集落むらで空いた肉を入れていた所に仕舞う。


「良かったね。兎族ラビットの所で聞いていた大蛇を狩れてさ」


と、イアンがみんなに言う。


「そうだね。兎族ラビットが困ってたみたいだったしね」


コーイチが答える。


「きっと鼠族ラット達も困ってただろうから、狩った事を伝えたら喜ばれると思うよ」


と、イアンが言う。


「「「そうだね」」」


その後は、また順調に移動する。


遠くに集落むららしき物が見えてきた。





その頃 めぐみは、新しい居住区の整備を、まだ幼い子供達としていた。

今日は雨で地盤が柔らかくなっているので、巨大なけものが入り込んだ時の為の地下の避難施設を作っている。

山の私達の【人類村じんるいむら】は、山の中腹に在るから、地下の施設を作っても、排水の機能を持たせるのは簡単だ。

巨大な塀に囲まれた村だから、異常な大雨が降った時の対策も、しっかりしておく。




そうしている間に、コーイチ達は、獣人ウェア 鼠族ラット集落むらに着いた。


「「「「「こんにちは!」」」」」


集落むらの中に、全員で呼び掛けてみた。


キュッ?


獣人ウェア 鼠族ラットが一体 出てきた。


凄く小さい。

よちよち歩きの赤ちゃんよりは大きいけれど、幼稚園児程度の大きさしかない。


イアンが憑依カバーを使って意思を伝える。


「【人類村じんるいむら】の者です。肉を持って来たので、獣人ウェア 鼠族ラットの物と交換しませんか?」


[いない みんな いない]


集落むらの皆さんは今は居ないんですね?何かありましたか?」


[大きい 蛇 大きい 蛇 危ない 危ない 戦う]


「えっ?も……もしかして……」


「大蛇を狩りに行ったんですか?」


[そう 蛇 蛇 蛇 蛇 大きい 危ない]


「ごめんなさい…ここに来る途中 出たので、僕達 狩りました」


そう鼠族ラットに素直に伝えた。


キィーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!


大きな鳴き声で叫ぶ。

集落むらに残っていた獣人ウェア 鼠族ラットは、かなり驚いた様だ。


[狩った 狩った 大きい 蛇 蛇 蛇 蛇 大きい 蛇 蛇 蛇 蛇 狩った]


憑依カバーで繋がっているイアンに問い掛ける鼠族ラット


「はい。狩りました。ここに来る前に、近くの獣人ウェア 兎族ラビット集落むらに行ったのですが、そこで大蛇が出て困っていると聞いたので、ここに来る途中に現れた大蛇を狩りました」


キィーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!


また大きな鳴き声で叫んで驚いた。


キィーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!

キィーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!

キィーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!

キィーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!

キィーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!

キィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!


より大きな鳴き声で叫んだ。


すると、獣人ウェア 鼠族ラット集落むらから離れた所から……



キィーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!


キィーーーーーーーーーーーーーーーッ!!


キィーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!


キィーーーーーーーーーーーーーーーッ!


キィーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!


と、複数箇所から鳴き声が聴こえた。




少し経つと、草むらの中から、獣人ウェア 鼠族ラットがぞろぞろと現れた。


ビックリしてコーイチ達が固まってしまっていると、集落むらに残っていた獣人ウェア 鼠族ラットが、戻ってきた仲間達に走り寄り、何か説明を始めた。


キィーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!


キィーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!


キィーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!


キィーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!


キィーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!


説明を受けた獣人ウェア 鼠族ラットが、大きな鳴き声で何度も叫ぶ。


集落むらに残っていた獣人ウェア 鼠族ラットが戻って来て、憑依カバーで繋がっているイアンに


[感謝 感謝 感謝 ありがとう ありがとう ありがとう 仲間 仲間 仲間]


と、感謝の気持ちを伝えてきた。


[沢山 沢山 仲間 食べられた]


獣人ウェア 鼠族ラットは、獣人ウェア 兎族ラビットよりも、大蛇の被害が大きかった様だ。


[肉 見せて 肉 見せて]


獣人ウェア 鼠族ラットも、喜んで物々交換に応じてくれるみたいだ。


新しい居住地の話も上手く行くと良いなと思う。

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