第8話 【満開】

あれから2日経った。

真っ直ぐ向かって来たのなら、もうあの超巨大大蛇に、集落むらは襲われている筈なので、狙われなかったと、思って良いのかも、知れない。

様子を見に行った狼族ウェア・ウルフ達もいるが、超巨大大蛇には遭遇しなかったそうだ。


ちなみに、超巨大大蛇は、呼びやすい様に、オトロチと呼ばれる様になった。

超巨大な大蛇との意味らしい。

そのままだな。


多分 大丈夫だろうとの事で、今日はきれいな花が咲く樹の所に連れて行ってくれるそうだ。

今なら満開で、その樹の下で花を楽しみながら、食事やお酒が楽しめるらしい。

日本のお花見みたいだね。

日本のお花見と違い、お弁当を持っては行かないで、集落むらから持って行く食材と、行く途中で食材採りもするそうだ。

現地での調理だから、お花見とBBQの両方になるのかな。

凄く楽しそう。


先ずは、集落むら近くの真っ赤なブルーベリーっぽいの(クラーベリと呼ぶらしい)を、みんなで採って食べる。

これは、年中 花を咲かせて、いつでも実が採れるそうだ。

勝手に育って実を付けてくれているけれど、元々は集落むら狼族ウェア・ウルフ達が植えたものだそうだ。

森の奥の群生地から、一部を移植して、いつでも食べられる様にしているらしい。


ちなみに、季節もある様で、今は春だと教えて貰った。

でも、日本程には、気温の変化は少なく、冬も雪は降るそうだけど、そんなに寒さは厳しくないらしい。


途中で、みんなは色んな食材を採取している。

見ていて「食べられるの!?」と思ってしまった物もあった。

木の新芽を採っていたのだけど、その木はトゲだらけで、その新芽にも少しトゲが見えた。

食べたら口の中に刺さりそうだ。

異世界の植物の食材だけあって、そんな恐ろしい見た目の物まであるんだね。

土から芽を出していた物も採っていた。

凄く薬の様な匂いの強い新芽で、これも「食べられるの!?」と思った一つだった。

他にも色々と採ってたな。キノコとかも採っていた。


のんびり採りながら歩いて1時間ほど経った。

そろそろ目的地に着くそうだ。

あ、見えてきた。

って、えっ!?これって…私 凄く馴染みがある気がする。

樹皮じゅひの特徴が独特で、淡い色のピンク色の花弁。

日本人なら子供でも知っている花……

日本人は、毎年 この花を愛でながら、食事やお酒を楽しむ。

どう見てもそれは、さくらにしか見えなかった。

花が日本の桜より、一回り大きい事を除いては、全く同じに見えた。

何と呼んでいるのかと聞いたら、

[チェリクゥラー]

と、教えてくれた。

ほぼ、一緒だよね!どう見ても語呂的にも桜じゃん!

偶然なのかな?凄く地球に似た動植物が多い気がする。これだと、米や大豆や梅も有りそう。

日本食 再現出来るかも知れないのかな?

このチェリクゥラーさくらも実をつけるそうで、日本で一般的な観賞用のさくらとは違い、その実は美味しく食べられるそうだ。

サクランボが食べられるのかと思うと、採れる時期が楽しみになった。


みんなは、調理の準備を始めた。

焼肉や素揚げの天ぷらっぽい物など、色々と作っている。


私の所に出来たのをフジャーが持って来てくれた。

焼肉のお肉は…カエルさんっぽいが、もう美味しいのはわかっているので、普通に食べた。

天ぷらっぽい物の材料の一つに、先程のトゲだらけの新芽も含まれていた。

恐る恐る食べてみる。

「美味しい!コクが有って、揚げてあるとトゲが全く気にならない!」

本当にビックリした。

流石に異世界だね。


狼族ウェア・ウルフのみんなは、焼肉などと一緒に、お酒の様な物を飲んでたりする。

凄く楽しそうだ。

そうして、みんなで楽しんでいると、狼族ウェア・ウルフより小柄な、雰囲気の似た獣人ウェアの群れが来た。

狼族ウルフのみんなより、小柄なだけじゃなく、顔が少し丸っぽい気がする。

身長は、小学校に入学した位から10歳位までの日本人の子供たちと同じくらいだ。

もしかして、猫族キャットの方々なのだろうか?フジャーに確認すると、やはり猫族キャットのみなさんで合っていた。

フジャー達が紹介してくれた。

猫族キャットのみなさんも、モフモフしたくなる、かわいさだ。


その後 兎族ラビットのみなさんも花見に来た。

こちらもかわいらしい。

兎族ラビットのみなさんは、猫族キャットのみなさんより、若干 小柄になって、白い毛並みが多く、もちろん耳が長い。

日本人の子供の小学校低学年くらいだね。

兎族ラビットのみなさんもモフモフしたい。

あ、兎族ラビットなのに、お肉も食べるんだね。今日 一番の驚きだった。


三種族共に、凄く仲良く飲み食いしている。

私にも、猫族キャット兎族ラビットの人達が料理や飲み物を持って来てくれる。

どれも美味しい。

猫族キャットのみなさんが、三種族の中では、一番 お肉をよく食べている。

兎族ラビットのみなさんは、お肉も食べているけれど、お野菜が一番好きな感じに見えた。


そうして花見を楽しんでいると、森から巨大な生き物が現れた。

えっ!?ドラゴン!?二本足で歩く、体長4メートルくらいのその姿は…どう見てもドラゴンだ。

とは言え、お伽噺のドラゴンと言うより、地球の古代生物の恐竜の予想再現図の姿に近い。

えっと…カモノハシ竜ハドロサウルス科とかって分類の草食恐竜にそっくりな気がする。

やはり草食なのか、三種族のみんなは逃げる様子が無い。


あれ?フジャーが

[捕まえる 食べる]

とか伝えてくる。

えっ?これ食べちゃうの!?

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