第9話 【恐竜】

捕まえる気まんまんのフジャーと、恐竜にしか見えないドラゴンに興味津々の私。

友達がいなかったから、私は本を沢山沢山読んだ。

気に入った本は、何度も何度も繰り返し読んだのだけど、その読んだ本の一つが、古代生物の図鑑だったので、生きた恐竜に出会えた様で、凄く嬉しい。

おとなしい草食のドラゴンだと思うから、乗れたりしないのかな?


と、思ってると、もう一匹 ドラゴンが現れた。

こちらは…ラプトル!?ヴェロキラプトル!?

ヴェロキラプトルそっくりのドラゴンだ。

えっ!?やばいんじゃない!?

こちらはどう見ても肉食だよね。

最初のドラゴンを捕まえようと身構えていたフジャーが、激しく動揺しているのが、解る。

こちらも4〜5メートルくらいの体長で、襲ってきたら殺されてしまう獣人ワーが出るだろうと思う。


でも、ヴェロキラプトルそっくりのドラゴンは、カモノハシ竜に似たドラゴンに襲いかかった。


あ、やばい。

最初のドラゴンとは仲良くなりたかったのに!

何とか助けたい!

と、ヴェロキラプトルそっくりのドラゴンを睨みつけると、またのうりょくが発動した。

2匹のドラゴンは、見えない何かに押さえつけられた様に、苦しそうに身動きが取れなくなっている。


念動マインド


怨霊の時の力だ。


カモノハシ竜に似たドラゴンには、使役マリオネットも重ね掛けする。

「こっちに来て!」

カモノハシ竜に似たドラゴンが、私の命令のままに横に来る。

フジャーに「押さえてるからみんなで倒して!」とヴェロキラプトルそっくりのドラゴンを狩る事をお願いする。

フジャーに促され、獣人ウェア達が一斉にヴェロキラプトルそっくりのドラゴンに襲い掛かる。

みんなの狙うのは一点、喉の動脈の辺りだ。

鮮血を吹き出しながら、暴れる事も抵抗する事も出来ず、徐々に弱っていく。


ヴェロキラプトルそっくりのドラゴンは、私の念動マインドで動けない状態のまま、抵抗も出来ずに狩られた。


みんなは、そのままドラゴンの血抜きを始める。


フジャーが

[その ドラゴン 食べる]

と、問い掛けてくる。

カモノハシ竜に似たドラゴンも狩ると思っているみたいだ。

「このドラゴンは食べないよ。私が欲しい!」

と、応える。

[わかった その ドラゴン めぐみの]

私に任せてくれた。


近くで使役マリオネットで逃げられなくしているドラゴンを観察してみる。

本当に大きい。

白っぽい羽が大きく体の大部分をおおっており、それ以外の羽は、灰色や黒。

獣人の狼族ワー・ウルフと同じ様に、意思疎通が出来ないかと、憑依カバーを使ってみるが、上手く意思疎通が出来ない。

でも、私が助けた事は、何となく伝わった様で、逃げそうになかったので、使役マリオネットを解除して、憑依カバーだけにしてみた。

うん。逃げないね。


このこに名前を付けてあげよう。

ドラゴンだけど、恐竜っぽいからザウルスかな?

「あなたの名前はザウルスね。」

名前を呼び掛けたら嬉しそうな反応が返ってきた。

「ブォ〜」

「これからヨロシクね」

知能の違いなのか、憑依カバーでの意思疎通は、限定的なものだけなので、どんな事を考えているのかまでは、ザウルスとは通じ合えない。

「あなたに乗ってみても良い?」

「ブォ〜〜 ブォ〜」

「ありがとう」

嫌がられなかったのは解った。

「よいしょ」

ザウルスの背中は、羽毛で包まれていて、フカフカの絨毯の上みたいだった。

でも、デコボコしているので、出っ張りが当たると痛い。

そのデコボコの中で、座りやすそうな部分を探して、座ってみる。

「おー!凄い!乗れた!」


獣人ウェア達の様子を見ると、ヴェロキラプトルそっくりなドラゴンは、血抜きの為に木に縄で吊られていた。

羽毛も有るので、こうなると巨大な鳥にしか見えない。

その頭部は、恐ろしい牙を沢山付けた肉食恐竜だけどね。

頭部は、吊られて固定された後に、ゴリゴリと切り落とされた。

頭部が無くなると、完全に巨大な鳥だね。


1時間後、血抜きも済んで、解体を始めるみたいだ。

沸かした大量の熱湯を全体に掛けてから、羽毛を抜き始めた。

ブチブチと羽毛を抜いては、それを袋に詰めている。

羽毛は羽毛で、後で何かに再利用するのだろう。

獣人ウェア達と較べたら巨大なので、羽毛を抜くのも一苦労みたいだった。


私を乗せてくれているザウルスちゃんは、暢気に草をんでいる。

このこも止めなかったら食べられてたのにね。

思わず笑ってしまった。

でも、このこを手に入れられたお陰で、これからの移動が楽になりそうだ。

フジャー達と較べたら、私は非力で移動の時に足手まといになってた自覚があるから。


獣人ウェア達は、ヴェロキラプトルそっくりのドラゴンの皮を剥ぎ始めた。

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