第7話 【逃走】

徐々に超巨大大蛇との距離が離れて行く。

まだ全然 安全な距離ではないけど、それでも少しはマシ。


あんなの日本の昔話に登場するもので、実際に遭遇するなんて、全く想像もしていなかった。

ワニだとしても、地球なら巨大で超危険と言われてしまうサイズだった巨大トカゲでさえ、一瞬で捕食されてしまった。

悪夢以外のなにものでもない。

恐ろし過ぎる。


帰り道は、全く生きた心地がしなかった。

生きた心地とか言っても、私は元怨霊だけどね。


かなり距離が離れたので、これなら追いかけられても少しは生存率が上がったと思う。

あ、いけない!ずっと【使役マリオネット】でフジャー達を操ったままだった!

使役マリオネットを解除して、憑依カバーに切り替える。

[ありがとう]

[助かった]

と、フジャーが思っている。

他の4名も同じ感じだ。

無理矢理 動かせて、不快に思われていないか心配だったけど、大丈夫みたいだ。


喉が渇いた。

みんなも同じだった様で、水分を多く含んだ草(?)を切り取って、皮を剥いて食べている。

もちろん、私にもくれた。

赤っぽい皮の高さ50センチ位の形がタケノコの様な草(?)だった。

竹のタケノコと違うのは、その葉の形だ。タケノコに有る包み込む様にはえている厚い葉の様な物はない。

ツルッとした皮だけだ。

私も皮を剥いて口に含むと、甘味はないけど、爽やかな酸味が有って、柔らかくサクサクしていて、まるで甘味の無い柑橘系の果物みたいだ。

流石 異世界、草が果物みたいって凄い。

これでかなり喉の渇きが癒やされた。もっと欲しいと思っていたら、追加でフジャーが二本くれた。

喜んで受け取った。うん。それ位 緊張で喉が渇いたのだ。

みんなも数本 食べているから、私だけじゃ無かったみたいだ。


まだ警戒しながら、集落むらに向かっている。

でも、あの大きさの蛇が襲って来て、あんな貧弱な柵で、防ぐ事が出来るのだろうか?

心配でみんなに聞いてみた。

[ない 大きさ ない]

[小さい 小さい]

[無理 無理 無理 無理 無理 無理 無理]

フジャーとコアとテアが教えてくれた。

あんなに大きい蛇は、これまで無かったみたいだ。

そう考えると、あの柵では防げそうに無い。

襲って来ない事を、今は祈るしかない。


真っ赤なブルーベリーの所まで帰って来た。

集落むらまでは、もう目の前だ。

安全とは言えない状態だけど、それでもホッとする。

フジャー達も安堵したのが伝わってくる。


フジャーが

族長オサー 伝える 蛇]

と、伝えてきた。

「うん!急いで行ってきて!」

と、私も報告を促す。

って、族長オサーって誰だろう?そう言えば、紹介して貰って無い。

良いけど…

あ、村に着いた時に、最初に果物を渡してきてくれた人(?)だ。

族長オサーさんだったんだ。

薄茶色の地に、赤っぽい濃い茶色の縞模様の毛並みの良い、コリー位の毛の長さの狼族ウェア・ウルフさんだ。

偉い人(?)みたいだから、“さん”と敬称を付けてみた。気分的なものでしかないけどね。


先に家に戻っておこう。


家で待っていると、小一時間ほどでフジャーが入ってきた。

フジャーの話では

[アレ カエル 多かった 食べる トカゲ]

[トカゲ 食べる 蛇]

と、伝えてきた。

ニワトリ位の大きさのカエルみたいな生き物は、こちらでもカエルの認識らしい。

情報を受け取る私ののうりょくが、自動的に地球の似ている生き物に置き換えて、名称を認識している可能性もあるけどね。

私にフジャーは伝えながら、カエルを指を指していた。

ああ、そうだよね。巨大なトカゲには、良い食料が沢山有るから、食べに来るし、そのトカゲなどの捕食者を、更に巨大蛇が狙って来る理由わけだ。

納得した。

それにしても、想像を超えた大きさだったらしい。

[トカゲ これ]

と、通常のあの辺りにいるトカゲの大きさを、手振りで教えてくれた。

大体 1メートルくらいで、大きくても2メートルに満たないみたいだ。

[おいしい トカゲ 食べる]

あ、その位のトカゲなら、逆に捕食しちゃうんだね。

[蛇 これ]

と、通常の蛇の大きさも教えてくれた。

こちらも1〜5メートル程度みたいだ。

5メートルでも恐怖だけどね。私には、1メートルでも怖いから。

5メートルのでも、遭遇したく無いね。

とか、思っていたら

[おいしい 蛇 食べる]

と、こちらも通常サイズなら、狩って食べるみたいだ。

あら、かわいい容姿の割に、ワイルドでいらっしゃる。

かなり逞しいのね。そりゃそうよね。かわいくても狼族ウルフって種族なんだものね。


それにしても…

あの超巨大大蛇は、この集落むらを襲ってくる事は無いのだろうか?

フジャー達の様子を見ていると、絶対に安心出来ないって感じだね。

襲ってきたら、私も戦いに参加するしか無いよね。


あ、カエルの処理を始めた。

やっぱり晩御飯になるんだね。

先ずは、干物にするみたいだ。

頭を切り落として皮を剥いでいる。

内臓も取り出し、水洗いして塩水に漬けてから、干していた。

こうなると、普通に食べ物にしか見えない。

見た目は、皮を剥いだニワトリの肉だ。特にモモの所が美味しそうに感じてしまうから、ビックリだ。

でもね、原型を思い出すと食欲が無くなる。


ちなみに、ウサギ(フジャーに確認したら、こちらもウサギとの認識で良いらしい)は狩ったコアの物らしい。そりゃそうだ。

コレカエルより、晩御飯はウサギの方が良かったな。

日本人ならみんなそうだろうと思う。うん。私のわがままな考えでは無いと、思いたい。


フジャーは保存用のカエルの干物造りが終わったら、今晩のおかずを作り出した。

もちろん、メインはカエルです。

頭を切り落として、皮を剥いで、内臓を取り出してあるカエルを、ぶつ切りにして、熱く焼けた石の上に、順番においていった。

焼き石は、直径50センチ位の円形で、厚い部分で10センチ位の平べったい形だ。

そこに肉を全体的においていく。

今晩は焼き肉みたいだ。肉はカエルだけどね。


ジューッ!

ジュジューッ!

ジュワーッ!


と、良い音を出しながら焼けていく。

味付けは塩のみ、焼いている肉に高い位置から振っている。

お野菜も一緒に焼いていく。

新鮮な肉から染み出した肉汁が、お野菜に絡まっていく。

見た目的には、めちゃくちゃ美味しそう。

カエルだけどね。カエルだけどね。

それでも、私の食欲を刺激して、腹の虫が大騒ぎの状態にしてくれちゃった。


焼けたお肉カエルだけどねを食べろとフジャーに促される。

モモの部分かな?覚悟は採ってる時にしてあるので、素直に口に入れる。

噛んだ瞬間に、カエルのお肉への評価が、大きく変わった。

ナニコレ!ウマスギル!

美味し過ぎて、心の声が片言になってしまいました。

ジュワッと溢れ出る肉汁!豚や牛みたいな脂っけは無いけど、ニワトリのササミみたいなさっぱりとした口当たりで、それでいて旨味が強い。

ササミみたいにパサパサしてないから、こっちの方が遥かに食べやすい!いや、激ウマ!

そりゃフジャー達が歓喜する筈だよ。

簡単に採れて、こんなに美味しいんだもん!

でも、モモ以外は、ほとんど身が無いんだね。

ニワトリ位の大きさなのに、モモ以外は僅かな肉しか付いてなかった。


ふぅ〜

ごちそうさま。

美味さに超巨大大蛇の事を忘れてしまっていた。

でも、寝て疲れを癒やさなきゃ明日に備えられない。

見張りもいるみたいだし、しっかりと眠らせて貰う。


おやすみなさい。

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