第4話 【交流】

太陽が登った。

地球と較べると、空が青より紫に近い。

お腹が空いた。寿命が無いと言っていたが、餓死はするのだろうか?

大怪我をすると死ぬのは、傷を癒す力を授けられたのだから、予想出来る。

やまいは?この世界でも病気は存在するのだろうか?


水を作る力、イメージしやすい様に名前を付けた。

湧水スプリング

上に向けた掌から水が湧き出す。

それを飲み干して、喉を潤す。

昨日の焚き火の上で 湧水スプリング を使ったので、火事の心配も無いと思う。

民家も無いのだから、そんなに考えなくても良いかもだけどね。


今居る巨大な樹の周りは、小高い丘になっていて、丘の中央に巨大な樹はそびえ立っている。

草はあまりえてなく、えてても低いものばかりで、見晴らしが良い。

丘のふもとには、背の高い緑の草が茂っている。地球の植物に喩えると、ススキの原や水辺に広がるよしの様だ。それが、まるで草の海の様に見える。その草の海の中に、まるで小島の様に、色とりどりの花を咲かせたエリアが点在している。

その草の海の中の大きな島や大陸かの様に、この小高い丘が在る。


草の海の奥には、ぼんやりと森らしきものが見える。


海はどの方角を向いても、今の位置からでは見えない。潮の香りもしないので、海は遠いのかも…異世界なのだから、海が存在しない可能性もある。


川は……海と同じく見えない。


巨大樹には、実らしき物は見えないし、仮になっていても登れそうに無い。

草原を進んで、森に向かって行くしか無いらしい。

変な虫や蛇や肉食の獣でもいそうで、正直 草原に入りたくない。

でも、仕方無いよね。


ふもとまで降りて、草原の入口に立ち、分け入る覚悟を決める。

茂る草は、全体的に2メートルを超え、高い物だと3メートルは有りそうだ。

「変なのがいません様に!」

一歩前へ……


ガサッ ガサガサッ


えっ?

少し離れた草原から、ネコとイヌとヒトの顔を足して3で割った様な毛むくじゃらな顔をした、二足歩行の生き物が、一匹(?)現れた。

耳はネコに近いかも。

人類の様に服を着ていて、頭以外は人類そっくり。

背丈は小学校の高学年の子供くらいかな。

小さいから恐怖心は薄いけど、大人しい生物とは限らないから、警戒は怠らない。

実際 手には武器みたいな物を持ってるし……


えーーーっ!?待って!

どうしてこっちに真っ直ぐ来るの!?


あ、攻撃はしてこないみたい。

優しそうな眼をしている。


えっ!??もしかして、「一緒に来い」とか言ってる?

言葉が解らないよ。手招きっぽい事をしている。

あ、果物みたいな物を差し出してきた。

食べられるのかな?手はお猿さんみたいだった。

もう空腹で辛いから、食べられる物なのか確認しようが無いから食べてみる!

「!?」

「美味しい!甘くて癒やされる!」


えっ?一緒に?


・・・・・・


食べ物 貰っちゃったし、優しそうだから行ってみるか!

どうしたら良いか途方に暮れてたしね!


後ろをついて行くと、その小さな子?初めて出会った生き物は、草原を掻き分けて、獣道の様になっている草の海の奥へと進んで行く。

あ、ここからなら入りやすかったんだ。無理して入って行かなくて済んで良かった。


島の様に見えた色とりどりの花が咲く部分は、近付くと水が溜まった場所だった。

あ、花を摘んで食べてる!食べれるの?甘い良い香りがするけど……

私にも食べろと渡してきた。

た……食べるしか無いよね。さっきの果物じゃお腹は満たされて無いし……

ぱくっと出された花を食べてみる。

あ…あ…あ…

甘くて美味しい!

「これも美味しい!私 好き!」


小さい謎の生き物は、何となくだけど、微笑んだ様に見えた。

気のせいかな?


草原を進んでいて、バッタの様なのや蝶みたいなのは出たけど、蛇や恐ろしい肉食の獣っぽいものには、何とか遭遇していないで済んでいる。

肉食獣とか危険な生き物はいないのかな?


今度は、タケノコ?みたいなのを、案内してくれている小さい生き物は採っていた。

何個か採って袋に入れて移動再開。


森に近くなると、森の手前で草原が拓けた。

柵をしてあり、家畜らしい生き物や地球の田舎の木造の建物より、かなり小さ目の家らしき物が建っている。

角度的に、丘からはよく見えなかった辺りの様だ。

案内してくれた小さな生き物と、同じ顔をした人達?生き物達?が集まってきた。数十は居るかな?

みんなネコやイヌっぽくてかわいい。

みんな手に何か持っていて渡してくる。

さっき貰った果物みたいな物や別の果物みたいなのやお菓子みたいなのまである。

これは歓迎してくれているのかな?言葉が通じないのがもどかしい。

誘われるままに、一つの建物の中に入って、座布団みたいな敷物の場所に、促されたままに座る。


貰った物を食べろと言っているっぽいので、渡された沢山の果物っぽいのを食べてみる。

さっきの甘いのは、当然 めちゃくちゃ好みで美味しい。

他の物も、甘さ控え目でリンゴの様に酸味のある美味しいのやパンみたいな食感の果物みたいなのや噛んでるとお持ちみたいな食感になるお菓子みたいなのを、順番に食べていった。


「はぁ〜 幸せ!」


自然と声が漏れた。


まさか……肥らせて食べようとか無いよね!?


言葉が互いに通じないのがもどかしい。

身振り手振りで意思疎通を試みる。

でも、よく解らない!解らないよ!

涙目になるよ。

【話したい!】

カチリと何かがハマった様に、自分の奥で感じた。

そして、すーっと、身体から何かが抜けた様に感じて、それが案内してくれた小さな生き物に覆い被さった様に感じた。


[神様 居る 伝えた]

[巫女 あなた 居る]

[神の樹 根本 あなた]


あれ?言いたい事が解る!

これ!禍々しいって感じた4つののうりょくの1つの 憑依カバー だ!

使い方が解ってきた。これ、使った事がある。

地球で怨霊だった頃に取り憑いて使っていたちからだ。

もしかして、禍々しく感じたのうりょくは、怨霊の時のちからなの!?


「あなたの名前を教えて」

[名前とは呼び名か?私は仕える者フジャーと呼ばれている]

「フジャー ね。何に仕えてるの?」

[神様 に]

「そう、助けてくれてありがとう」

[神様 に感謝]

「その神様?に、ここに送られたんだけどね」

[はい 巫女]

「色々と教えてね」

[私は巫女にも仕える]

「ありがとう」


意志の疎通が出来るって素敵!

しかも、小動物みたいだから怖くない!

緊張しないで話せる!

この世界 大好き!


〜〜〜


彼女はまだ知らない。

楽しいだけの世界では無い事を。


〜〜〜

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