第2話 【転生】

ソレ・・】は、一瞬の内に何も無い空間に移動していた。


声を感じる・・・


『あなたは招かれました』


「!?」

ソレ・・】は、困惑した。

目の前に居た筈の男は居ない。


感じた声・・・・は、人のモノでは無いと解る。


『本来は一人だけ・・・・を招くのですが、あなたが間近に居たので、一緒に招きました』


「・・・」


『あなたは…また命を持って存在する事になります』


「人を殺そうとした死霊なのにですか?」


『あなたは、まだ人を一人も殺してはいません』


「私は、一ヶ月間 苦しませて弱って死なせる様にしてました」


『はい。明日になれば、最初に呪われた人は、間違い無く死んだでしょう』


「それでも生き返らせてくれるのですか?」


『いいえ、生き返るのではありません』


「?」


『別の次元の世界に転生します』


「どうしてですか?」


決められた事・・・・・・、それだけです』


「拒否は出来ないのですね」


『そうです』


「何故 死霊の私なのですか?」


『2つの偶然でです。存在しているかと思える程に、存在感を持つまでに凝縮された魂だった事、そして転移が予定されていた者の間近に居た事、この2つが理由です』


「私が呪い殺そうとした人が、本来の予定者だったのですね?」


『そうです』


「なら、その人だけで良かったのではないですか?」


『いいえ、偶然とは言え、招かれた以上は、転生は定められました』


「拒否は出来ないのですね?」


『そうです』


「私は、まだ呪いたい」


『無理です。でも、あなたの希望を出来るだけ叶えて転生させましょう』


「どんな希望もですか?」


『はい。可能な事ならですが』


「それなら、私は…人の存在しない世界に行きたいです。可能ですか?」


〜〜〜


彼女めぐみは回想する】


私は、愛に餓えていた。

私は、普通の家庭に産まれた。

優しい父と母だった。

でも、父と母は男子を望んでいた。

産まれた私は、女子だった。

両親は、優しくはしてくれた。

でも、愛を感じる言動を、幼いながらも感じる事は無かった。

そして、弟が産まれた。

優しい両親は、弟に全ての愛を注いだ。


学校に通う様になると、大人しく地味な私は、上手く友達が作れなかった。

友達を作ろうと話をしようとしても、緊張して声がうわずり、顔が真っ赤になってしまって、誰とも話せない。

いじめ・・・ にもあった。

肉体は攻撃されない。

無視をされて、常に私は、居ない者と扱われた。

先生にも無視された。

人間なんて嫌いだ。

それでも、コツコツ勉強をして、大学まで行った。


学校を卒業する頃になると、大人しく地味な私は、上手く面接出来ずに、就職浪人してしまう。

両親は、就職活動に失敗した私に何も言わない。

優しさでは無いのが解る。

両親は、私の人生に興味が無いのだ。

弟は、私に近寄りもしない。

父も母も嫌いだ。

弟はもっと嫌いだ。


めぐみは…ずっと独りだ。


毎日 自宅に居ると、時間が余りある。

資格の為に勉強したりもしていたが、それでもずっとそれを続けられない。

スマートフォンでSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サイト)をするのが流行っているそうだ。

テレビのニュースで言っていた。

[招待制だった話題のSNSが、自由登録制に変更になって、誰でも登録可能になったそうです]

「へー……そうなんだ?」

[始めると人脈を拡げられるられるとの事で、「これからの時代はSNSを活用しなきゃ!」とSNSへの登録が、今のトレンドになっています]

「えっ!?友達を作れるの!?」


緊張しながらのSNSへの登録。

「えっ!?どうすればいいの!?メールを?認証?えっ!?」

独りだから誰にも聞けない。

それでも、何とか登録出来た。

「これからどうすれば!?コミュニティ??」

コミュニティに登録して挨拶をすると、沢山 メッセージが届いた。

全部 男性からだった。恋人どころか、友達さえ居なかった私に、春が訪れたのだと思った。

やっと私の居場所・・・を見つけた。


上手く返事が出来なくて、日に日にメッセージが減ったけど、残った男性からは、変わらず優しい言葉のメッセージが、毎日 届く。

それだけで幸せだった。


男「メグちゃんは、本名も恵って言うんだ?かわいい名前だね!」

私「いえ、普通です」

男「いつも何をしているの?」

私「何もしてない。家に居る」

男「それじゃつまらないでしょう?今度 ご飯でも食べに行こうよ!」

私「私で良いの?」

男「なんで?良いに決まってるじゃん!」

私「うん。行く」


そして、私は殺された。


《人間なんて大嫌い!》


〜〜〜


『人の居ない世界ですね。可能ですよ。それが望みですか?他には無いですか?』


「その世界で楽しく生きられたら、それで良いです」


『それなら、それに見合うのうりょくも付与しましょう』


「はい」


『では、次の世を楽しんで下さい』


めぐみが光に包まれた時、その人ならざるモノが呟いた様に感じた。


清らかな心・・・・・だからなのですがね……』


〜〜〜


めぐみは、巨大な樹の下に居た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る