超時空の彼方 〜フォロミー〜

一等神 司

第一章 ◆闇から光へ◆

第1話 【呪怨】

スマートフォンの中から現れた【ソレ・・】は、本能的に“死”を感じさせた。魂が嫌悪して凝視出来ない【ソレ・・】は、それでもジリジリと寄って来る。

噂では聴いていた。冗談か都市伝説ウソたぐいだと思っていた。

しかし、【ソレ・・】は、確かに目の前に存在している。いや、『存在』では無いと本能的に解る。

存在している筈が無いモノなのに、確かに感じている。その圧倒的な“気配”を。


そもそも、これだけの大きさのモノが、スマートフォンの画面から出て来れる訳が無いのだ。

ソレ・・】は、スマートフォンの画面から出て来たのに、その大きさと姿は、成人の女性なのである。

そうでは無い。頭が混乱する。スマートフォンの画面からは、光以外は、本来 出て来ないのだ。大きさや姿など関係無い。そんな機能は無いのだから。


いかにもサラリーマンという出で立ちの、真面目そうな黒髪の痩せたスーツ姿の男は、尻もちをついて動けなくなっている。


長い髪をらして、“死”存在しない女が迫る。


〜〜〜


それは約一ヶ月前の話である。

金髪のチャラい風体の男は、何が起きたのか、自分の状況が理解出来なかった。

その男は自分の五感で感じる目の前の【ソレ・・】が信じ難かった。

何故なら、そこに居る筈の無い女の姿を感じた・・・からだ。

見えたのとは違う、何故か在る筈の無いモノ・・・・・・・・感じ取れた・・・・・のだ。

「オレが悪かった!許してくれ!」

本能的・・・に、これから自分の身に起こる事が解った。


ああ…オレは殺されるのか……


その後 その男は自宅の玄関前で意識を失っている所を発見され、親類に病院に運び込まれたが、意識は回復せず、「めぐみ!助けてくれ!殺さないでくれ!」などとうなされ続け、日に日に衰弱していった。

今では死の間際・・・・である。


〜〜〜


更にその一週間前の事、一人の女が死んだ。

山奥で誰にも知られずに。

いや、殺された・・・・


女「何をするの!やめて!酷い事をしないで!」

男「あ?素直にヤらせりゃ良いんだよ。地味な底辺の女がヤッて貰えんだ、感謝しろや」

女「一緒にご飯を食べるだけって言ってたじゃない!優しい事を言ってくれたよね!?」

男「ネットで誘われてノコノコ会いに来たんだ、お前だってその気だったんだろうが」

女「私は!友達になりたかっただけよ!だから、やめて!」

男「あ…」

女「いやぁ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」

男「オレが悪いんじゃねぇ!逃げようとしたあいつが悪いんだ!」


その女は…

SNSで仲良くなった男から「一緒にご飯を食べようよ!楽しく話でもしながらさ!」と誘われ、「友達が出来るかも…」と、会いに出掛けた。

ずっと友達を作れなかった。

話そうとすると緊張してしまい、言葉が出なくて顔が激しく火照るほてるばかりで、親友どころか、友達と言える存在さえ、ずっと作れなかった。

本当は友達が欲しかった。一緒に食事に行ける様な友達が欲しかったのだ。

そして、「SNSネットでなら上手く他人と交流出来るかも!?」と始めたSNSの中で、凄く優しく親身にメッセージをしてくれる男に心を開いてしまった。

待ち合わせた駅で、その男は優しい笑顔で出向かえてくれた。金髪のラフなシャツ姿で、軽そうに感じたが、言葉遣いは普通だった。そして、簡単な挨拶だけして、男に誘われるままに、その男の車に乗ってしまった。

乗った車は、どんどん人気ひとけの無い所に移動して行く。


男「恥ずかしがり屋だから、人の多いお店じゃ緊張してしまうでしょう?この先に隠れ家的なレストランが在ってさ、静かだし飯も美味いんだよね」


怖かったが、その男の優しさだろうと、自分が死んでしまう場所まで、その男の車に乗って行ってしまう。


レストランの影も形も無い山奥の駐車場に、男は車を停めた。

そして、いきなり襲い掛かってきた。

ドアを開けて車から飛び出した先には、深い崖だった。

そして、そこから突き落とされて、女は虫の息となった。

そこに冷たい雨が降ってくる。

小雨が豪雨となり、既に冷たくなった女の死体を、崩れた崖が覆い隠す。


女の名前はめぐみ、友達が欲しかったが為に殺された女である。


〜〜〜


その後 この男女が利用していたSNSの登録者が、次々と意識不明となり、病院に運び込まれるのである。

全身を検査しても、意識が回復しない原因・・が解らない。全くのなぞだった。

その奇病の最初・・の犠牲者は、めぐみ殺した男・・・・だった。


〜〜〜


真面目そうな黒髪の痩せたスーツ姿の男は、尻もちをついて動けないままである。

逃げ出そうにも、身体をどう動かせば良いのか解らない。

いや、動いて逃げようとしても、逃げられないと感じているから、逃げようと出来なかった。

“死”存在しない女は、数センチの距離にまで近くに感じている・・・・・


足元がまばゆく光り輝いた。

その円を描く図形の光は、一人と一つの何か・・を包み込み……

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