第2回 変貌していた真新帝国ジェネ・ギア!
「5…5年…!?」
Dr.マッギアから伝えられた真実にウルフマジーンは立ち眩みを覚える。
5年もあれば色々と変わっている、時代の流れは思っている以上に早いのだから。
「お、俺の買ったばかりのiPh〇ne6は!?」
「とっくに無料機種じゃわい、むしろ売っとらんわ」
「し、進〇の巨人は!?」
「この前最終回迎えたぞい」
「え、ならH〇Hも!?」
「あ、それは未だに大陸入ってないから安心せい」
そんなやり取りを一通り終えた後、ウルフマジーンはあまりの衝撃にその場に蹲って嗚咽を漏らす。
「あ、あんまりだ…完全に浦島太郎の気分だよ…」
「どっちかと言えば生存が確認された帰還兵の方がニュアンス近いがのぅ」
「上手い事言うなよぉぉぉ!」
完全に世俗の流れから取り残された自覚のあるウルフマジーンはいきなり人生のネタバレを食らったような気持で床をバンバンと叩いている。
「ほれ、いつまでそうやって嘆いておるつもりじゃ。
おぬしはこれから総帥達に会わねばならんのじゃぞ?」
「うぅ…だって…だってぇ…えっ、総帥に!?」
Dr.マッギアの口から飛び出した意外な言葉にウルフマジーンは驚いて顔を上げる。
それほどまでに、今あげられた名前の人物は彼にとって遠い存在だった所為だ。
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唐突だが、ここで説明パートに入らせて貰う!
『
人類の発展は限界を迎えていると判断した一人の天才が造り上げた組織であり、
人類の限界を超える為には機械との融合已む無しという悪魔的な思想の下、天才の造り上げた科学技術に惹かれた狂気の科学者達が集い誕生した『次世代の人類』を標榜する秘密結社である。
『総帥』プロフェッサー=ノウズ
『右脳』Dr.マッギア
『左脳』キャンセラー=コールド
『脳髄』ジェネラル=フールー
組織を束ねる総帥及び大幹部達は別格の存在であり、それらの下に行動隊長であるウルフマジーン達の様な改造人間。
その部下に改造手術は受けておらず、簡易強化スーツを着ただけの戦闘員といった者達が配属されるというピラミッド的階級構造となっている。
一般研究員などはそれぞれ大幹部達に直接配属されていたりする為、例外は存在するのだが概ねは上記の上位階級には逆らえない形となっている。
説明は以上だ!
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「総帥が何でッ!?」
組織の長たる者が一般会社で言えば課長程度の存在である自分を呼び出す理由が思い当たらずにウルフマジーンは未知の恐怖に慄く。
「そりゃ、それはおぬしが甦ったからで…って、そうか、覚えとらんのじゃな」
腰が引けているウルフマジーンに対してDr.マッギアはさも当然と何かを言おうとして、それを本人が自覚を無い事を思い出して盛大に溜息を吐く。
「え、何!? 俺、何かやっちゃいました!?」
「普通にやらかしてる奴がやる時のテンションじゃのぅ」
ちなみに今更ながら大幹部であるDr.マッギアに失礼な態度を取り続けているウルフマジーンだが、
人格者ではあるのだが、同時に変な新作の実験に付き合わされたりもするので慕われつつも忌避されているという変わり種である。
「えぇい! 危ぶむなかれ危ぶめば道はなし、行けば分かるさじゃ!」
「いやぁぁぁ! やめてぇぇぇ助けてアントニオォォォ!!」
Dr.マッギアの右手が撃ちだされ、ウルフマジーンの首に取りついて首輪状になるとDr.マッギアは抵抗するウルフマジーンを強引に引きずっていく。
それに対して、これから自分に何が起こるのか分からずにジタバタと虚しい抵抗を続けるウルフマジーンだった。
「……報告を、ドクター」
豪奢な装飾を施された玉座に腰かけた人物が眼下に居る者を睥睨しながら口を開く。
「ハッ! 総帥より直々に依頼されていた怪人再生技術が遂に完成いたしました事を此処にご報告致しますのじゃ!」
「遂にかッ!!」
Dr.マッギアから齎された報告に目を見開き、玉座に腰掛けていた人物。
『総帥』プロフェッサー=ノウズは眼を見開いて勢いよく立ち上がる。
その背丈はあまり高くはなく、精々160㎝と少しで軍服の様な威厳のありそうな衣装で迫力を出そうとしているものの細っこい見た目の所為でどちらかと言えば中性的な印象を相手には与えてしまう美少年。
そう、『総帥』プロフェッサー=ノウズの正体は超人的な頭脳を持つ少年なのである。
齢12歳にして様々な研究成果を産み出した稀代の天才はその頭脳故に人類を見限り、『
だが、残念な事に身体の成長はその頭脳には追い付かなかったようで現在17歳にしてコレである。
閑話休題。
「はい、これこの通りですのじゃ!」
面を上げたDr.マッギアは右手のワイヤーを巻き上げ始める。
そうして、引きずられるように現れたのは…
「ほ、本当にウルフ兄さ…柴犬?」
抵抗して首輪で絞められて顔がキュッとなっているウルフマジーンの姿だった。
………。
「と、言う訳でウルフマジーンの再生こそ成功したものの記憶自体は改造当時まで遡ってしまったようですのじゃ」
ウルフマジーンの異変に困惑している様子のプロフェッサー=ノウズにDr.マッギアは凡その実態に基づいた見解を述べる。
「そ、そんな弊害があったとは…」
Dr.マッギアの報告にプロフェッサー=ノウズはよろめいてそのまま力なく玉座に腰を落とす。
だが、この状況に一番困惑しているのはノウズではなくウルフマジーンの方である。
「(いやいやいや!? なんで総帥がこんなショック受けてんの!?)」
自分と総帥には一切接点がない筈である。
一介の改造人間程度にかける感情とは到底思えない。
自分が失った5年の月日の中で一体自分と総帥の間に何が有ったのだろうか?
そんな不安と恐怖が心中で入り混じっていた。
「でも、ウルフ…ウルフ兄さんなんだね?」
「に、兄さん!? 俺…いや、私が!?」
さっきも言いかけていて聞き間違いかと思ったが、あの総帥が今度は間違いなく自分を「兄さん」呼びしている。
ちなみにウルフマジーンは改造される前から一人っ子であり、身に覚えはない。
両親のどちらかの隠し子だったら、一生恨む。
「血縁の話じゃないぞい?」
察したDr.マッギアが耳打ちしてくれたので両親への疑惑は一瞬で払拭される。
ごめんなさい、実家の父さん母さん。
「あの輝かしい日々も…兄さんに教わった色々な事も覚えていないなんて!!」
どうやら、総帥は『心の師』的な意味で自分の事を「兄さん」と呼んでいるらしいと察するものの、逆に何を如何したらそんな事になるのか分からなくてウルフマジーンの頭は既に臨界点に達しそうになっている。
あと、そんな顔で瞳を潤ませて見つめられるとそっちの気はない筈なのになんか背筋がぞくっとしてしまうのでイケない。
自覚を持って欲しい美少年。
そんな状況に更なる一矢が放たれる。
「総帥? 何か喜ばしい報告が今から来るとの事でしたが…?」
背後から女性の声が聞こえた。
「こ、この声は…キャンセラー=コールド様!!」
『左脳』キャンセラー=コールド。
鉄の女、冷酷無比な女史、ジェネ・ギアのお局等と呼ばれている大幹部。
そのAV女優と見紛う様なキワッキワ過ぎる衣装と切れ長の眼から、ジェネ・ギアの構成員達からは「ぜひ、蔑んで欲しい上司No1」等とも呼ばれている冷酷な女性である。いるのか、この情報?
感情には流されず、実績を基に処断するその姿勢から同時に一番恐れられている女性でもある。
そんな彼女ならば、この状況も冷静に対処してくれるかもしれない。
そんな一縷の希望に望みを掛けて振り向いたウルフマジーンが見たのは…
「…う、ウルフ君!!」
キワッキワだった筈の衣装が今では縦セーターの落ち着いた近所のお姉さんみたいになって見知らぬ赤子を抱いている冷酷無比な女性と呼ばれていた人の姿だった。
次回、第3回「助けて、緊急戦隊レスキューⅤ!」
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