ほんとの気持ち 偽りの気持ち

――私に何ができるのだろう……。


中谷さんの話を聞いてから、ずっとそればかり考えていた。


もちろん今でも今井さんのことが大好きだ。

でも、そのことより彼が悩み、苦しんでいるということが辛かった。


初めて会った公園で、雨の中悲しんでいた私に傘を差し伸べてくれた、あの優しい人が苦しんでいるなんて……。

そう考えただけで何もできない自分がもどかしかった。


『私がいると、かえって今井さんを追い込んでしまう』


『だったら、何もせずにこのまま消えるのが、今井さんの為なのかな』


『私なんかいないほうが、いいんだ……』


今井さんが元気になってくれるのなら、私はなんだってやってやる。私の気持ちなんてどうでもいい。


私は自分の気持ちに蓋をした。


☆ ☆ ☆


羽月ちゃんから口吻されたとき、僕の気持ちは決まっていたのかもしれない。


彼女の気持ちを受け入れることができない以上、一緒にいても彼女を悲しませるだけだ。

そして怜のこと。羽月ちゃんを巻き込むわけにはいかない。


そんな気持ちから別れを切り出した。


あの笑顔が曇るのを見続けるなんて想像したくなかった。彼女にはいつも笑っていてほしい。

あんなに魅力的な女の子なんだ。きっと僕なんかよりもっと素敵な男性ひとが、現れるに違いない。

彼が羽月ちゃんを幸せにしてくれるはずだ。


僕は彼女への想いを断ち切った。

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