君は僕らの太陽です
「羽月との交際にかかった費用は全額こちらで負担する。この支払い依頼書に内容を書いて、領収書を添付して提出してくれ。一週間以内に指定の口座に振り込む。あ、印鑑も忘れずに押してくれ。押されていないものは処理できないので、くれぐれも気をつけるように」
お父さんは、会社の業務さんか? と思うくらいの手際の良さだ。それにしても支払い依頼書まで用意されているとは……。
「それから、付き合ってくれとは言ったが、一時の盛り上りではなく、きちんとプロセスを経て羽月が告白するように仕向けてくれ。それがあの子のスキルアップに繋がるのでね」
彼女に安売りはさせるなということだ。
「今井君、そして一番大事な話なんだが……仮に、君が羽月に恋愛感情を持った場合、その時点でこの話は無かったことになる。いいね? 」
「……わかりました」
俺が羽月ちゃんに恋愛感情を抱く……さすがにそれはないだろう。年齢差がありすぎるし、それに俺の心のなかにはまだ怜がいる。
でも彼女のご両親の気持ちはよくわかる。俺も羽月ちゃんの泣き顔はもう見たくない。あの子にはずっと笑っていてほしいから。
そこまで話したところで、コンビニ袋を持った羽月ちゃんが帰ってきた。
「ただいまー。アイスコーナー見てたらポピコの新フレーバーを発見してしまったので買ってきちゃった。今井さん、はんぶんこしよ。あ、お父さんはお母さんとはんぶんこしてね」
ダイニングテーブルに座った4人がポピコをチューチューして食べた。なかなかシュールな絵面だ。
僕はチューチューしながらふと思った。
この家族は、羽月ちゃんを中心に回ってるんだなと。
さながら彼女が太陽で、お父さんが
そして僕も彼女の周りを回ることになるんだろうか?
だとしたら、僕は遠くから羽月ちゃんの笑顔に引っ張られてやってきた彗星だ。
穏やかな楕円軌道で回る惑星と違い、極端に細長い楕円軌道を描く彗星は、急激に太陽に近づいたら、その後、また遠くへ離れていってしまうんだけどね……。
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