第四章

1  逮捕の理由



 野島は、しばらくその場を動くことが出来なかった。

時間だけが、意味もなく流れ去っていった。

何処からか、正午を知らせる鐘の音に気付くと、野島は我に返った。

急いで事務所に戻ると、加賀町署の古畑巡査部長に連絡を入れた。

「古畑君、亜里沙が菅原に捕まったようだ」

「部長、それは確かですか?」

「ああ、菅原から直接俺に連絡があった。おそらく菅原は、亜里沙が『医療センター』を訪れたことから、何か危機感を持ったのだろう。菅原が、亜里沙を追尾していたことに、間違いはないはずだよ」


 野島は、亜里沙が仲邑准教授から知り得た事実を概略ながら古畑に話した。

「もし、菅原が吉澤議長の子飼いであるとすれば、当然秘書の小西昌隆に亜里沙が医療センターを訪れたことを話したはずだよ。その時、小西が亜里沙から怪我を負わされた事実を知ると、暴行罪での逮捕を思いついたんだと、思うな」

野島は、自分の推理を古畑に話した。

「部長、女性の亜里沙さんが自ら進んで秘書の小西に暴行を加えるなど考えられないので、ここは、過剰防衛の線で来ると思いますよ」

古畑の現役刑事ならではの分析である。

「そういうことに、なるだろうな・・・」

「部長、具体的に武器になりそうなものを、亜里沙さんに持たせていましたか?」

「・・・かなり小さいものだが・・・、『MAG-LITE』だろうか・・・」

「だぶん、それだと思いますね」

「う~ん、何とかならないものかな・・・」

「日之出町署としても、立件するつもりはないでしょうね。裁判にでもなれば、それこそこちらの思う壷ですから。もし、明日の朝までに釈放されなければ、署長に直談版してもらいますので・・・」

「古畑君、そこまで亜里沙のことを・・・、ありがとう」

「部長は、亜里沙さんのこととなると、気弱になりますね。でも、亜里沙さんは、そんなに柔な女性ではありませんよ。うちの警部補よりは、女らしいですが・・」

「古畑君、それは慰めかな。・・・とにかくありがとう」



 2  雨の中華街



 野島は、夕方から降り出した雨の中を中華街に向かって歩いていた。まんじりともせずに、事務所で時間をやり過ごすことは出来なかったのである。

恐れていた事態が現実になったのだ。小さな探偵事務所である。権力にとっては、虫けらのような存在であるに違いない。野島にとっての大儀が、根本から崩れそうであった。目的の店も決めていない。ただ、歩くことに集中することで、いまだけは現実を忘れていたかったのだ。

 気が付くと、『你好』の雨に濡れた馴染の赤い暖簾が目の前にあった。反射的に扉を開けたが、都合よく店には客はいなかった。

「あら、野島さんお久ぶりね。彼女今日いないね。一人なの?」

「ああ、一人なんだ。何か温かいものが食べたいな・・・」

久しぶりのママの笑顔が野島の心を解きほぐす。

「それなら、『白菜ときのこの入った中華スープ』おすすめね」

「じゃ、それをもらおうかな」

「OKよ。 それにしても野島さん元気ないね」

「ママには、分かるんだね」

「当たり前よ。野島さんは、私の息子みたいなものだからね」

野島は、他に客がいなかったため、事情通のママにこれまでの経緯を話した。


「野島さん、吉澤議長って人は、私には良く分からないね。でも、この街にとっては大事な人ね。医療センターもこの人のお陰で、どんなに弱い立場の人の役に立っているかね」 ママは、客観的に自分の感想を言ったのだ。

「じゃあ、なぜ違法な賄賂を受け取っている噂があるんだろうか?」野島は、思わず大きな声を出していた。

「それも、私にも分からないこと。でも、視点を代えてみることも大事よ。『東洋・・』何とかとか、『日本生化学・・』もっと調べて見ることね」

「・・・、そうだな、ママのいう事にも一理あるかな・・・」

野島が、立ち上がろうとしたが、ママが止めた。

「野島さん、せっかくの野菜スープだから、食べて行きなさい。身体のためよ」

「・・・ありがとう、ママ・・」

「あなたも彼女も、この街にとっては必要な人よ。無理しないことね…」

 食事が終わり外に出た野島の吐く白い息が、風に流されると何処かに消えて行く。

亜里沙は、犯罪者ではないのだ。早晩釈放されるだろうと考えると、気が楽になった。逮捕される理由など、どこにもないのだから。

店に来た時とは明らかに違う強い足取りで、野島は事務所に帰ることが出来た。



3  亜里沙の解放



  夜も明けきらないうちに、心配していた亜里沙からの連絡があった。

「耕介? 今やっと解放されたわ…」

「いま何処だ?大丈夫か?」

「大丈夫だよ。すぐ帰るから。それよりお風呂入りたいな」

「分かった。熱い風呂沸かしておくから・・・」

「OK! 頼むね」

電話から判断する限り、亜里沙にあまりダメージは無いように感じられる。安堵すると、野島の目から意図せずに涙が流れ出ていた。

「歳のせいかな・・?」自分を茶化すと、笑うことが出来た。


 野島は、喜びのあまりベッドから飛び起き上がると、部屋の暖房をいれポットに湯を沸かした。バスタブが湯で満たされる頃、亜里沙が5階の部屋に帰って来た。

「ただいま! 心配かけちゃった、ごめんね耕介!」

野島は、亜里沙が言い終わらないうちに、腕の中で強く抱きしめていた。

「苦しいよ! それより早くお風呂入りたい!」

「分かったよ。その後、飯食いながらゆっくり話を聞くとしよう」

亜里沙が風呂に入り身支度を整えると、調査会議が待っていた。いつまでも感傷に浸ってはいられないのだ。

「私がセンターを出た後、すぐにパトカーに停止を命じられたの。それが、菅原の乗る車だった。容疑は、『銃刀法違反』の疑いだって。もちろんそんなもの持っていないから、どうぞという事になったわ。でも、菅原の狙いが『MAG-LITE』なのは、すぐわかった。今度は『過剰防衛』の疑いだって・・、容疑を代えて来たのよ」

「俺は、そのことを心配してたんだが、『MAG』は、どうしたんだ?」

「昼間の調査だったし、必要ないと思ったから事務所に置いて来ていたの」

「それが、たまたま幸いしたということか・・・」

「結果的に、そういうことになるわね」

「しかし、それだけでは終わらなかったんだな」

「ええ、そうしたら、任意同行で署まで来てくれと言われて……」

「菅原は、俺には亜里沙を逮捕したと、言ってたけどな」

「…、そうなんだ。でも、調査を妨害するための嫌がらせだと分かってたから、あえて了承してさぐりを入れることにしたの」亜里沙ならではの判断であったのだ。


「でも、取り調べ室に入ったら男二人の警官の前で服を脱げって言われたわ。

私は、もちろん任意で来たんだからって激しく抗議をしたの。脱ぐ理由なんてどこにもないって…。そうこうしてるうちに、年配の女性警官が入って来て、事情を聞いてくれたの。確か、警務課の人だったと思うけど……」

「亜里沙、その人は佐々木さんとか言わなかったかな?」

「ええ、そうだったかも知れない。そうしたら、女性警官の同席に替えてくれて…」

「そうか今度会ったら、お礼を言わないとな」

「所長、その人知ってるんですか?」

「ああ、加賀町署時代の先輩だ。それで、どうなった?」

「おかしいのは、取り調べの内容が変わって来たことかしら。センターの誰に会ったとか、何を調べているのかといった質問ばかりよ。お陰で誰かに糸を引かれているのがはっきり分かったわ」

「その誰かを捜すのが、俺たちの役目だな。だが亜里沙、午前中はゆっくり休んだ方が良い」

「は~い!そうさせて貰います」

野島は、亜里沙の天性の明るさに救われたと言える。その時、野島の携帯に着信があった。川崎賀世からである。


「賀世さん、どうしましたか?」

「野島さんですね? いま元夫の土屋秀樹のアパートに来ていて…、立ち退きを責められていたので、部屋に残されていたものの整理を始めたのです。そうしたら、押し入れから何篇かの小説が見つかって……。

あの人、私に隠れて書いていたんですね。諦めていなかったんです。

わたし、うれしくなって…、読み進めていったら、数枚の明らかに殴り書きなんですけど、実際に存在する会社の記述があって……、これは、野島さんにお報せした方が良いかなと思って電話したのです」

「分かりました。賀世さん、すぐ行きますから、待っててください」


野島は、賀世からアパートの住所を聞きだすと、事務所を飛び出していった。



4  吉澤秀昭の話す真実



 ゴシップ・ライター土屋秀樹のアパートは、野毛仲通りに近い密集した住宅の中にあった。名前の『トキワ荘』は、著名な漫画家を輩出したアパートを思い起こさせる。

2階の角部屋で、賀世は待っていた。

「野島さん、これなんですけど……、」賀世は、数枚のA4版を野島に渡した。

「これは!・・・、もしこれが真実なら、土屋さんの身に危険が迫っても不思議ではないと思います。それほど、犯人にとっては致命的な証拠になり得るものですね」

「なぜ土屋がこんなものを……」賀世は、理解出来ないでいた。


「しかし、土屋さんが、これをネタに口止め料を手に入れようとしていたとは、考えたくもないです。世の中の過ちを正す正義のためだったと思いたいですね」

野島の正直な気持ちが、思わず口から出ていたのだ。


「ありがとうございます、賀世さん。何らかの突破口になるよう利用させてもらいますので。ところで、逗子署からその後の連絡は?…」

「ありません。考えてみれば、失踪者の捜索のためにわざわざ人員を割くでしょうか? 私は、正直もうあきらめているのです。今更私の目の前に帰って来ても、

気持ちがもとに戻ることはないのです。女の気持ちって、自分ながら糸の切れた凧みたいなものだと思っているのです。男の愛情を繋ぎ止めようと散々努力はするけれど、一度切れてしまえば、もう顔さえ見たくなくなるものですから…」

「さあ、僕には良く分かりませんが、肝に銘じておきます」野島には、信じたくない賀世の告白であった。


野島は、踵を返すように野毛を後にすると、吉澤秀昭のもとに向かった。

『你好』のママが言った言葉が蘇ってくるが、心は揺れ続けていた。

捜査権も逮捕権もない野島である。一市民である人間が何処まで真実に迫れるのかという葛藤であったのだ。

 野島は、予め吉澤との面会の約束を取ることにした。吉澤ほどの人物である。正面から話を持っていけば、了承してくれるのではとの勝算があったのだ。

「吉澤議員でしょうか? 突然の電話をお許し下さい。探偵事務所の野島耕介と言います。肉親が拉致された可能性のある人から調査依頼を受けているのですが、その調査の過程で吉澤議員が関与している可能性が浮上してきたのです。私は、ただ真実を知りたいのです。お話を伺わせてもらえませんか?」

「野島さんですか・・・、あなたがある事件のことで動かれていることは、秘書の小西からは、聞いていました。まあ、良いでしょう。疑いを晴らすためにもお会いしましょう。では、後ほど事務所の方で・・・」

 

 野島は一時間後、ランドマークタワーにある吉澤秀昭の事務所を訪ねていた。

吉澤は、亜里沙の言う通り60代後半の恰幅の良い人物であった。卑しさは感じられない。しかし、権力を手中に入れている人間特有の威圧感があった。

「あなたが、野島さんですか・・・。いろいろと誤解されているようですが、まずはそこからでしょうな」吉澤は、鷹揚に構えている。

「吉澤議員、私の事務所の人間が、あなたのところの政策秘書に襲われたことはご存じでしょうね」

「そのことからですか・・・。信じてはもらえないでしょうが、私の知らないところで秘書が勝手にやったことで・・・。彼には責任を取って辞めてもらいました」

「知らないところでやったとしても、彼はあなたのために、女性に口封じを強要したのでは?。そこには、何らかの理由があるはずですが?」

「彼には、自分の思い込みで行動してしまうことがよくありましてね、私にも理解が出来ず苦労をさせられました」

「議長、いかにも政治家が責任逃れのために言っているとしか聞こえませんが・・」

野島は、吉澤の政治家らしい返答に不信感を持った。真実が何も明かされてはいない。


「議長、約3年ほど前に、あなたは、政策秘書であった西島雄二さんから告発を受けていますが、これは事実ですよね?」

「あの時は、ほんとうにショックだった。身内からの告発でしたからね。便宜を図ったことで、医薬品卸からリベートを貰っていると・・・。あれは、西島の前の秘書が犯した政治資金授受記載のちょっとしたミスだったのです。私は、すぐ修正を命じたところ、この問題はすぐ沈静化し、議会から批判を受けることもなかった」

「全て秘書がやった事とおっしゃるのですか? 到底納得がいきませんね」

野島は、食い下がった。

「すべて事実なのですから、これ以上は、お話しのしようが無いのですが・・・」

吉澤は、野島の言葉を軽くかわしている。


「私は、あなたを裁くつもりでここに来たわけではありません。クライアントのために事実を知りたいのです。あなたは、西島雄二さん、妻の三絵さん、そしてライターの土屋秀樹さんの行方を知っているはずですよ。教えてください!」


「野島さん、土屋秀樹さんってどなたですか? 聞いたこともない名前の方ですが・・・」


「実は、土屋さんが取材して突き止めた事実が書かれた記述が見つかりましてね。

そこには、あなたと『東洋ホールディングス』との繋がり、そして薬品メーカーである『日本生化学工業』との癒着が書いてありましたが・・・」


「癒着と捉えられているのですか・・・、残念ですね。両社とも、私が愛情を持って育て上げた企業ですよ。いわば、自分の子供だと言っていい。しかし、有権者から誤解を受けないよう政治家になってからは、すべての役職から降りているのです。

人間ですから、便宜を図ることは正直ありますよ。しかし、癒着など決してあり得ない事です。野島さん、これだけは信じてもらっていい・・・。」



「議長・・・、本来あなたは医療保険行政改善のために『ジェネリック薬品』の推進派だった。これは、政治家として素晴らしい功績ですよ。あなた一人の力ではなかったとしても、結果として国が『ジェネリック』の規制を緩めることに繋がったのですからね。

 特許の終わった薬品を薬品メーカーが安く製造出来るようになり、薬品単価も下がったのです。弱小だった薬品メーカーが努力次第で、飛躍的に業績を伸ばすことが出来た。ここに、あなたと『日本生化学』との癒着が生まれた源があったと私は考えているのですが・・・」 


「・・・、野島さん、あなたは、変わった人ですね。人探しが本業ではないのですか? 一銭にもならないことを、あなたはしようとしている・・・」

「・・・、きれいごとと聞こえるでしょうが、私は、金が目的で仕事を引き受けているつもりはありません」野島は、きっぱりと言った。


「では、野島さん、あなたを突き動かしている正体は何なのですか・・・」

 吉澤の心が少し動いたようだ。


「・・・議長、それは、自分でも分からないのです」


「野島さん・・・、私に青臭い正義だとでも、言うつもりですか?」


「いえ、しいて言えば、大切な命が他人の手によって奪われる『不条理』に対する挑戦かも知れません。無駄な命なんて一つもないのですから。愛する人を突然奪われ悲しみを負った人間は、失ってから人間の命の尊さを知り、後悔の念を生涯抱き続けることになる。私もそんな人間の一人ですから・・・」


 *


「野島さん、私はあなたが羨ましい。私も政治家になりたての頃は、市民一人一人の顔を見ながら、この人たちのために自分が何が出来るのかと、いつも考えていたのです。それが、今では選挙に受かるための手段として考えている自分がいるのですよ。恥ずかしい話ですが。

 野島さん、あなたも随分つらい目に合われたようだ・・・。あなたの追う『不条理』を暴くために、私が知る真実をすべてお話しましょう・・・」

吉澤が政治家としてではなく、一人の人間として野島に向きあった。


「話して、頂けますか・・・」野島が、鎧を脱ぎ捨てた吉澤の目を見て言った。


「『日本生化学工業』は、もともと富山にある小さな薬工場でした。あなたの幼いころに『富山の薬売り』が来ていたのを覚えていますか? あの『トンプク』と言われた置き薬を作っていたのです。富山市近郊の生まれの私は、当時の経営者の真面目な薬作りに感銘を受けましてね。いつかはこの『富山薬品』を世に知られる企業に育てたいと思い、経営に参加したのです。そこで、特許を持たない会社に大きな成長など期待出来ないことを知ったのです。医薬品と呼ばれるものは、大手薬品メーカーの寡占状態にあった。それこそ、あなたの言う医薬品族と呼ばれる政治家と大手メーカーの癒着がそこにあったのも事実です。


 彼らの目的は、医薬品の価格の維持に他ならない。その結果、日本の医療保険行政は危機を迎えることになった。医療は、それを望む人間に平等であるべきが私の持論です。そこで特許が切れた薬品の製造許可を、国に求める活動を展開したのです。多くの国会議員にも頭を下げました。その結果が、『ジェネリック薬品』の規制緩和に繋がった訳です。これに比例するように、名前を変えた『日本生化学』も飛躍的な成長を遂げ、本社を東京に移すまでになりました。私はうれしかったですよ。


 ところが、これに目を付けたのが、『HGファンド』と呼ばれる企業乗っ取り集団だったのです。要するに、企業買収にあったという事ですよ。それほど多くない発行株式総数でしたから、株式の過半数を手に入れることは、簡単だったでしょう。運が悪いことに、私は政治家になると同時に全株式を手放していたことが、彼らが容易に買収を勧められたことに繋がったのは皮肉な事ですよ。

 その次に『HGファンド』が考えたのは、医薬品の安定的なルート作りだったことは想像できます。その結果が、『東洋ホールディングス』との提携であり、薬品の大きな最終消費地としての『医療センター』の取り込みであったと思います。


「ここまでは分かりましたが・・、では、うちの亜里沙や土屋さんを狙ったのは、一体誰なんですか?」野島が知りたい核心であった。

「亜理紗さんに返り討ちを食らった秘書の小西昌隆は、『HGファンド』から私の動きを監視するために送り込まれて来た人間だと、ここにきて初めて分かりました。残念ながら、やめた後ですが・・・。

土屋さんと西島さんご夫婦の行方は、『HGファンド』に依頼された組織が知っているとしか言いようがありません。私には、詳しい事は分かりませんので・・・」


「最後に確認しますが、ライターの土屋さんが、議長に直接接触した事実はないという事ですか?」

「ええ、ですから、先ほども言った通り、私は土屋さんと言われる方に面識はないのですよ」

「分かりました。これですっきりしました」

野島には、狙うべきターゲットが、ここにきてはっきりと見えて来たのであった。



 *



 ランドマークタワーを出ると、陽はすっかりと落ちていた。野島は、『ジュリエッタ』を地下の駐車場から出すと、事務所に向かって思い切りハンドルを切った。  待ちきれず車の中から、亜里沙の携帯にかける。

「亜理紗、すぐに東京にある『日本生化学工業』の役員名簿を調べてくれ。役員の中に『HGファンド』からの出向者がいるはずだから・・・」


「『HGファンド』って、ハマシングループの中になかったかしら?」

「何だって!」野島は、思わず大きな声を出していた。

まだ仄暗い夜の底で、得体の知れないものが蠢く気配があった。




 終章へ続く




 今年も、あと数日を残すだけになりました。

31日の午前中には、終章をお届けするつもりでおります。

お忙しい中、お付き合い頂きありがとうございました。


 耕太郎





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