第72話:予想外
俺は誤解されることにないようにはっきりと断った。
こういうことは遠回しに断ると後々大きな問題になる場合がある。
特に今回はわずかな誤解から国が亡ぶ可能性すらあるのだ。
最初に明確に断ったうえで、後で細かい条件を話し合うべきだと思っていた。
だが予想外に話が転がってしまった。
「今の我が国には助ける価値もないと申されるのですね。
確かにモンドラゴン様から見捨てられるのも仕方ありません。
これほどのご恩をお受けしておきながら陰で悪い噂を流す輩がいるのですから」
エリザベス王女がそう言い捨てて俺の事をねたんでいた連中に視線を向けた。
全てを凍り付かせるかと思うほど冷たい視線だった。
「「「「「俺じゃない」」」」」
そいつらが全く同時に自分たちの行いを否定した。
だが、その慌てぶりと表情で嘘をついているのは明らかだった。
中には王族付きの筆頭護衛という役職付の武官もいたが、そのステータスは並の騎士でも低い方だろう。
恐らくだが、王族の愛人か、あるいは隠し子なのだろう。
当の王族は俺が助けた奴ではないから、俺に対する恩は感じていないのだろう。
毒を盛られなかったという事はサザーランド王国の内通していたのかもしれない。
本人は演技が上手くて隠しおおせていたのだろうが、側近がバカだとそこからこんな風に悪事がもれるのだな。
「やりなさい、我らの潔白を証明するのです」
エリザベス王女がそう言うと、2人の騎士団長と4人の自警団長、猟犬団長と鷹匠団長が裏切り者と卑怯者に襲いかかった。
最側近の姫騎士団長だけはエリザベス王女の側を離れないのには感心する。
それほどの忠誠心を得ているエリザベス王女のカリスマは凄いな。
粛清役たちは全く手心を加える事なく滅多斬りしにて殺した。
これはちょっとまずいことになってしまった。
ここまで思い切った処分をされると、俺もいい加減な返事ができなくなる。
まあ、最初からいい加減な返事をする気はなかったけれどね。
「分かりました、ここまではっきりと覚悟を見せられたらしかたありません。
俺も覚悟を決めて返事させてもらいましょう。
はっきり言いますが、いつまでもこの世界に留まる気はありません。
俺は自分の世界に戻るつもりです。
ですが、性根の腐った同郷人の勇者を野放しにする気もありません。
個人的な恨みもありますから、キッチリと殺してから戻ります。
それに、俺に断りもなく強制的にこの世界に連れてきた奴も許しません。
殺して責任をとらせます。
それまではこの国に手を貸しましょう。
それでこの国の今後の方針は立ちますか」
俺は一気に自分の考えを伝えた。
「正直に答えていただき感謝します。
お陰で大きな方針を立てることができるようになりました。
ですがモンドラゴン様が行われた数々の事をどう始末されるかが分かりません。
それが分からなければ私たちもどうするか決められません。
それをお教えいただけますか」
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