第70話:拷問虐待

「我こそはスタンフォード王国に代々使える騎士団長、ハント伯爵だ。

 長年に渡るサザーランド王国の圧政と暴虐は許せない。

 その手先となる悪魔よ、この手で今までの悪行の報いを与えてくれる」


 俺は騎士団長の名前を貸してもらうことにした。

 ゴア伯爵フランセス騎士団長が味方になるまでは、スタンフォード王国ただ1人の騎士団長として名前を売っていた人だ。

 フランセス騎士団長よりは弱いが、サザーランド王国に仕える残り3人の騎士団長に匹敵する強力な戦士だ。


「嘘をつけ、嘘を。

 ハントの力は事前に教えられている。

 ハントに俺たち4人と対等に戦う力などない」


「可哀想な事だな、使い捨ての勇者よ。

 奴隷にして言いなりにする相手に、本当の事を教えると思っているのか。

 普通では勝てないからこそ勇者を召喚した事も分からないのか。

 よくそれで勇者を名乗れるな、愚か者」


 俺はそう言うと力を抑える事なく全力で戦った。

 おやじ狩りの標的にされ、殴られ蹴られた事を忘れた事は1度もない。

 その恨みをキッチリと晴らさせてもらう。

 手加減をする気もないし、する必要もない。

 不良勇者がこの世界に来てからやってきた事、日本にいた時にやっていただろうことを想像したら、被害者の恨みを俺が代表して晴らしても心は痛まない。


「ギャッは」


 連撃を加えて四肢を粉砕した。

 手首、肘、足首、膝の関節を粉々にする。

 普通ならもう二度と関節が動かなくなるくらい骨を砕く。

 同時に激しい痛みを与える事も忘れない。

 こいつらに狩られ、心も体も痛めつけられた人々の事を考えれば、遠慮せずに思いっきり傷つけることができるし、心も痛まない。


 と思っていたのだが、不完全な良心がシクシク痛む。

 どれほど痛めつけても悲鳴もあげず表情を変える事もない。

 剣の勇者は痛みを感じているようだが、他の3人は痛みを感じていないようだ。

 奴隷として戦わせるのに痛覚があると邪魔だと考えたのかもしれない。

 サザーランド王国首脳部は本当に血も涙もないな。


「ヒール、ヒール、ヒール、ヒール、ヒール。

 これ以上やってられるか」


 そう言うと剣の勇者は逃げようとした。

 彼だけはまだ奴隷支配されていないから、痛みが辛いのだろう。

 俺が与えたいのは破壊ではなく屈辱と痛みだ。

 こいつらが他人に与えたモノと同じだけのモノを与えないと、復讐の意味がない。

 だから絶対に逃げすわけにはいかないのだよ、不良勇者。


「ギャアアアアア、やめろ、やめろ、やめてくれ、お願いだ。

 あやまる、謝るからもうやめてくれ」


 口だけの謝罪なのは明らかだ。

 どこの誰かに対して何をやったから謝っている訳ではない。

 単に今の苦痛から逃げたいから謝っているフリをしているだけだ。

 だから止める気もなければ、止める必要もない。

 二度とこの国を襲う気にならないくらい痛めつけさせてもらう。

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