第66話:勇者4人衆
「モンドラゴン筆頭大臣殿、これはどうすればいいのでしょうか」
指令室は緊張感が満ちていた。
敵の動きを知るために愛鳥を放っている鷹匠団員が青い顔をしている。
その気持ちは俺にも理解できる。
敵の人数が1人増えて4人になったのだ。
ついに剣の勇者である館野伊織が戦いに加わったのだ。
しかも彼はまだサザーランド王国の奴隷になっていない。
自分で考え動くことができるのは、鷹匠団員の愛鳥をにらむ姿で分かる。
自分たちが見張られていること、剣の勇者がサザーランド王国首脳部に報告するかしないかで、俺たちの今後の方針が変わる。
いや、それよりも大きな問題がある。
こちらの攻撃が通じなくなってきているのだ。
勇者たちの基礎レベルが上がったのか、それとも鳥との戦いに慣れたのか、魔術を使うことなく鳥を斃せるようになっている。
防具も動きが悪くなるのを無視して重い丈夫な物に変えている。
その影響で鳥の攻撃を受けても無傷で奥に進めるようになっている。
このままでは魔力も体力も減らす事ができなくなり、王都に攻め込まれてしまう。
「心配しなくても大丈夫だ、任せてくれ」
こうなる事は以前から分かっていた。
その対応策はいくつか考えてあったし、準備もできている。
問題は使う策の順番を間違えない事だ。
順番を間違えたら時間稼ぎができなくなってしまう。
いや、できなくはないが、稼げる時間が短くなってしまうかもしれない。
「鷹匠団員の愛鳥は下がらせてくれ」
「しかし筆頭大臣閣下、それでは見張りができません」
マジメな団員が任務に忠実であろうとする。
その性格は好ましく思うが、ここは愛鳥の命を優先してもらおう。
敵の危険度を正確に知っておいてもらう方がいい。
その方が万が一俺がいない場合でも的確な対処をしてくれるだろう。
ガラではないが偉そうに命令させてもらおう。
「敵の中でも剣の勇者は奴隷支配されていない。
遠距離から魔術攻撃されたら、大切な愛鳥が殺されることになる。
それでは本当に大切な役目を果たしてもらいたい時に役立たずになるぞ。
鷹匠団員には王都の周囲を完璧に見張る大切な役目がある。
最前線の見張りは、あくまでもその延長に過ぎないのだぞ。
手段と目的を間違えるな」
俺が厳しく言って聞かせると、ようやく納得してくれた。
鷹匠団員と絆を結んでいる愛鳥たちが王都方面に撤退する。
その間に俺は、砂上に屍をさらす鳥たちを、他の鳥たちに集めさせる。
1ケ所に多くの屍を集めて、デザートワームを誘い出すのだ。
王家の伝承が正しいとすれば、デザートワームはとても可愛そうな存在だ。
直ぐにでも呪いを解いて元に姿に戻してやるべきだ。
俺の英雄力を無制限に発揮すれば、呪いを解くことはできると思う。
だが、もし王家の伝承が間違っていたら、とんでもないバケモノを解き放つことになるかもしれないのだ。
だから今はデザートワームのまま利用させてもらう。
鳥の屍に反応したデザートワームが砂中から姿を現した。
大型の鳥たちに命じてデザートワームの注意を引く。
そして不良勇者たちの方に誘導する。
この方法でしばらくは時間稼ぎができるだろう。
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