第64話:義父娘
「王家には王族だけにしか伝えてはいけない言い伝えがあります。
今までモンドラゴン筆頭軍務大臣が我が国にしてくれた事に対するお礼として、特別にお伝えさせていただきます」
豪華客船というには小さく設備も整っていないが、エリザベス王女と姫騎士団の寝起きする場所だけは、王宮以上に豪華に創り出した船で遊覧航海をした後、王女がとんでもない事を言いだした。
確かに以前俺を王族待遇にするという話しはあった。
だがそれはあくまでも俺のご機嫌とるためだけの政略だ。
王家が秘伝にしている伝承を聞かせるのはやり過ぎだろう。
「王女殿下、それはいくらなんでもやり過ぎでございます。
確かにモンドラゴン筆頭軍務大臣の軍功は並び無きモノでございます。
王族に迎えて秘伝を教える事も当然かもしれません。
ですが、それを王女殿下の一存で決めのはお止めください。
それに、今この場におられる王族は王女殿下だけでございます。
王家の秘伝を伝えるには、殿下と大臣が2人きりになってしまいます」
イザベラが顔色を変えて止めるのも当然だった。
初老の俺の事などエリザベス王女の眼中にはないのだろうが、外聞が悪すぎる。
世の中には他人の悪い噂を流すのが大好きという連中がいる。
そんな連中にとったら、国を背負う清廉潔白な王女を貶めるのは最高の娯楽だ。
秘伝は聞きたいが、王都の戻るまで待つのが大人の対応だろう。
「その心配はいりませんは、イザベラ。
私とモンドラゴン筆頭軍務大臣が義親子の契りを結べばいいのです。
モンドラゴン筆頭軍務大臣には私の義父亜父になっていただきます。
そして私を猶子とする誓いを立てていただきます。
そうすれば何の問題もありません」
この世界やスタンフォード王国のしきたりは分からないが、エリザベス王女が大丈夫というなら、義親子の契約を結べば大丈夫なのだろう。
姫騎士団の表情を見ても問題はないようだ。
だが俺には納得できない事がある。
別に王女に対してやましい考えがあるわけではない。
俺が契約を結ぶ気にならないのは、責任や義務が生じるかもしれないからだ。
別に王女が俺をだまそうとしていると思っている訳ではない。
サザーランド王国のように俺を奴隷にしようと思ってはいないのは分かっている。
だが俺にとっては、義理の親子になる事は奴隷契約を結ばされたのも同然なのだ。
今は単なる好意から手助けしているの過ぎないが、形だけとはいえ義理の親子の契りを結んだら、命懸けで助ける責任が生じるのだ。
「せっかくですが、そのような厚遇をお受けするわけにはいきません。
エリザベス王女殿下の立場を悪くするかもしれない事はお受けできません。
殿下のお礼の気持ちは十分に感じることができました。
王家秘伝の伝承は王都に戻ってから聞かせていただければ十分でございます」
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