第59話:豊漁

 鳥砦を創り出した翌日にも不良勇者3人が攻撃してきた。

 最初3人は反応に困っていたようだ。

 今までは砂中や地上から襲いかかってくる魔物ばかりだった。

 だが今日からは鳥が空中を飛び回りながら襲いかかってくる。

 しかも的が極端に小さいスズメサイズやムクドリサイズまでいる。

 槍や格闘の不良勇者は的確に迎え討てるが、弓の不良勇者は難しい。


「エリアサンドランスアタック」

「エリアサンドナックルアタック」

「エリアサンドボウアタック」


 不良勇者たちはスズメ級やムクドリ級が相手も結構強い範囲魔術を放ち、急激に魔力を消耗してくれている。

 しかも魔物ではなく鳥なので、得られる経験値がとても低い。

 不良勇者を強くする事なく足止めできる事が確認できた。

 斃した鳥の数も3人で800ほどしかない。

 これなら安心して次の準備に取り掛かることにした。


「エリザベス王女殿下、次の策を用意するためにまたここを離れます。

 7日ほど戻らなくても心配しないでください。

 つながっている鳥の目を通じて全て分かりますから、万が一の事があれば予定を繰り上げて戻ってきます」


「分かりました、後の事は心配せず、万全の準備をしてください」


 俺はエリザベス王女の言葉に送られて砂漠を横断した。

 俺が次になすべき事は、食糧の確保だ。

 莫大な量の砂漠の魔物を魔法袋の中に確保しているが、集めた鳥はもちろんデザートワームを自由に操るには、確保している食料が多ければ多いほど安心できる。

 だが問題はどこからその食料を集めるかだ。


 貴金属を創り出して他国から大量の食糧を購入したら、その国の貧民が飢え死にしてしまうかもしれない。

 食糧ピラミッドを崩すような乱獲をしたら、どんな悪影響があるか分からない。

 それでなくても鳥だけを集め過ぎているのだ。

 俺の限られた知識で考えられる悪影響は虫害だ。

 毛沢東が米を食べる雀は悪い鳥だと全国民に捕獲させたら、虫害で大飢饉が起こったとか起こらなかったとか。


 万が一、俺のせいで蝗害が発生して、人間が虫に食べられるようなことになってしまったら、俺は一生悪夢にうなされることになる。

 一地方とはいえ、これ以上陸上の食物連鎖を破壊するわけにはいかない。

 元々巨大城砦には、何か起こらないように見張らせている鳥や獣はいるが、他にも新たに鳥や獣を支配下に置いて警戒しつつ、海から食料を確保することにした。


 最初は大型のクジラやサメを狩ろうと思っていた。

 少ない個体数で食糧を確保する方が海の食物連鎖を壊さないと思っていた。

 だが数頭の雄クジラや数十頭の大型サメを狩っているうちに考えが変わった。

 ここは公平に全ての魚介類を集めた方が影響が少ないのではないかと。

 だから全てを運ぶことにした。

 その方が早く帰る事もできるし、色々活用できるとも考えた。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る