第58話:鳥砦
俺は約束通り3日で戻ってきた。
砂漠に魔物のミンチで道を創り、鳥たちを飢えさせる事無く誘導した。
大型の鳥になればなるほど体力も余力もある。
だが小型の鳥は常に食べ続けないと死んでしまう。
特に昼夜で寒暖差の激しい砂漠では、多くの体力が削らえてしまうのだ。
ゆいつ救いだったのは、地下用水路の道ができている事だ。
地下用水路やその上には、砂漠樹の根が伸びている。
その上は徐々に砂漠の魔物が住み難くなっている。
その上に魔物ミンチの道を創ったので、集めた鳥が魔物に食われる事はとても少なかったが、皆無とまではいかなかった。
「よく約束通り戻ってきてくれました、モンドラゴン筆頭軍務大臣。
勇者たちの攻撃が激しくて、このままでは愛鳥や愛狼まで犠牲になる所でした。
後の事は任せますので、遠慮せず好きにやってください」
エリザベス王女から全権を預けられた。
俺がいない間に、とても危険な状態になっていたのだろうか。
「誰か死傷した人間がいたのですか」
誰か顔見知りが死んでいたらと思うと、確認するのが怖かったのだが、聞かない訳にもいかないので確かめてみた。
「いえ、人間だけでなく絆の強い鳥や狼が犠牲になる事もありませんでした。
ですが、モンドラゴン筆頭軍務大臣が危険ラインと決めてくれていた場所近くにまで、勇者たちが攻め込んできたのです。
動かせる鳥や魔物を全て犠牲にして、ようやくデザートワームが来てくれるという、ギリギリの状態になっていました。
各部隊が死を覚悟して討ってでる寸前だったのです」
確かにそんな状況になっていたら強い危機感を持って当然だろう。
フランセス騎士団長を始めとした各団長が配下を率いて奮戦してくれれば、3人の不良勇者を撃退する事は可能だったと思う。
だが全く犠牲なしという訳にはいかなかっただろう。
各種の快復薬と回復薬を大量に渡してあるから、体力のある者が一撃で殺される事はないが、3人の勇者が範囲魔術を同時に放ったら、半数以上の団員が即死する。
即死した人間を回復させる事は、俺の渡している薬では不可能だ
蘇生魔術を使うか、蘇生用の薬を創り出すしかない。
残念だが、今は蘇生薬の調合方法が分からないのだ。
「分かりました、直ぐに迎撃用の砦を創り出します」
俺は自重を捨てて鳥を活用する砦を創り出した。
砂漠の砂を固めと広大な岩盤の島を創る。
中央には満々と水をたたえたオアシスがある。
オアシス以外の場所には俺が促成栽培した草花が咲き乱れている。
その上には砂漠の魔物をミンチにした乾燥エサがばらまかれ、自由に食べられる。
最後に鳥同志が争い傷つけ合う事を厳しく禁止した。
1つの鳥砦に100000羽の大中小の鳥が住んでいる。
近づく人間を襲い殺すように命じてある。
巻き込まれる人間がいるなら問題だが、砂漠に入ってくる善良なサザーランド王国民はいないし、スタンフォード王国側も護りを優先させていて近づかない。
不良勇者3人の基礎レベルが50になっていようと、1000000羽の鳥を殺すには60日以上かかる。
安全を図って魔力が半分になって撤退するとしたら、120日は時間を稼げる。
その間に次の手を打つ。
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