第55話:デザートワームの正体

 3人の勇者は上手く逃げた。

 デザートワームに牽制の遠距離魔術を叩きこみ、ケガすることなく逃げた。

 恐らくだが、同じ襲撃を何度も繰り返すつもりだろう。

 敵は効率的に勇者を強くしつつ、こちらを追い込むつもりだ。

 砂漠の魔物を使って勇者を強化する計画なのだ。


 他国相手に勇者を強くしようとすれば、全面戦争になる。

 だが、スタンフォード王国のために砂漠の魔物を退治していると言えば、周辺国も宣戦布告や政治介入ができなくなる。

 勇者たちがデザートワームをものともしないくらい強くなったら、一気にスタンフォード王国を攻め滅ぼせばいいのだ。

 

 一番重要な事は、支配している3人の勇者を強くする事で、剣の勇者が敵対しても討伐できるようになる事だろう。

 剣の勇者は慎重で疑い深い性格のはずだから、勝てない相手に逆らう事はないと思うし、3対1だと逃げる事も難しいだろう。


 なにより砂漠よりも効率的に強くなる場所がないだろう。

 剣の勇者が少々努力しても3人の勇者との徐々に差が開いていくことになる。

 完全い強さに差がついてから、剣の勇者を取り押さえて、むりやり奴隷契約をさせて奴隷の入れ墨を彫れば、4人の勇者を完全に支配できる。


 俺は急いでデザートワームのいる場所に向かった。

 デザートワームは斃された魔物を食べてその場にとどまっている。

 密かに鍛えていた英雄スキルを全開にして、転移したのかと思われるくらいの速度で駆けつけた。

 ソニックブームでみんな迷惑をかけないように、王都を抜けるまでは音速を越えないように気をつけて駆けつけた。


「ステータスオープン」


 俺は英雄のスキルを最大限使って、デザートワームのスキルを確認した。

 なぜならデザートワームの強さしだいで、勇者を殺しにサザーランド王国に乗り込む時期が変わってくるからだ。

 デザートワームが圧倒的に強ければ、しばらくは普通の生活を愉しむ事ができる。

 だが、直ぐに勇者に殺される程度の強さなら、今直ぐ勇者を追いかけて行って殺し、そのついでにサザーランド王国首脳部を皆殺しにしなければいけない。


 そう決意してデザートワームのステータスを確認したのだが、俺が全く考えもしていなかった事実が分かってしまった。

 心底どうするべきか迷ってしまう事実だった。

 青天の霹靂とはこのような事実に対して使う言葉なのかな。

 本当にどうすればいいのだろうか。

 

「デザートワーム」

名前剥奪:50000歳・

   注:神の呪いを受けて元の身体も名前もスキルも奪われている。

身体:基礎/レベル5000

職業:ワーム/レベル10

  :HP/5000/5000

  :MP/5000/5000

「戦闘スキル」

召喚術:レベル10

木魔術:レベル10

火魔術:レベル10

土魔術:レベル10

金魔術:レベル10

水魔術:レベル10

風魔術:レベル10

「生産スキル」

召喚術:レベル10

木魔術:レベル10

火魔術:レベル10

土魔術:レベル10

金魔術:レベル10

水魔術:レベル10

風魔術:レベル10

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