第54話:消耗戦
魔物の迎撃で勇者たちの足を止める事に成功している。
勇者を殺すことどころか傷つける事もできないが、魔力は大幅に削ることができているから、魔力を0にできれば、次は体力も削れるだろう。
「エリアサンドランスアタック」
「エリアサンドナックルアタック」
「エリアサンドボウアタック」
勇者たちがこちらの王都に近づくほど、魔物の迎撃が激しくなる。
魔物の迎撃が激しくなると、勇者が魔術を使う数が激増する。
魔術を使えば使うほど魔力が減っていき、勇者の死が近づいてくる。
こうして見ていると、サザーランド王国はまだ勇者を殺す気がないと思う。
絶対負傷する事にないように魔術を連発させている。
問題は連発する魔術による魔力の減り方が激し過ぎる事だ。
意思を奪われ命令通りに動いている影響か、凄く弱い魔物にまで攻撃している。
俺が範囲魔術を使う時のように、効果を与える相手を選別していない。
とにかく範囲内にいる魔物の全てを攻撃する。
だからこそ、全く驚異のない極小のワームを勇者の周りに集め、無害のワームを攻撃するのに5の魔力を消耗させているのだ。
「来たぞ、使役魔を後方に下げろ」
俺は鷹匠たちに命令した。
鷹匠たちが使役鳥に大きな声で鳴くように命した。
もちろん俺の愛鳥も大きな声で鳴いて、使役魔に逃げるように指示している。
使役魔が鳥たちの鳴き声を聞けば、繋がっている猟犬団員にも伝わる。
撤退命令を聞いた猟犬団員が、使役魔に命じて撤退させるのだ。
本当にめんどうなのだが、支配下に置いている鳥や動物、魔物の呼び方や書物に記録する表現にも気をつかわなくてはいけない。
まあ、長年絆を結んできた愛鳥や愛狼と、戦いの間だけ関係と結ぶ魔物を同列に表現するのが嫌な気持ちは俺にも分かる。
だから長年絆を結んできたパートナーは愛鳥や愛狼と呼び、一時的に関係を持った魔物を使役鳥や使役魔と呼び、正史にもそう書き記すことになった。
だが問題なのは、一時的に関係を持っただけのはずだった鳥や魔物なのに、徐々に愛情を感じ始める鷹匠や猟犬団員がいることだ。
中間の呼び名を考えてくれと言われても、そう簡単に思いつけるものか!
「エリアサンドランスアタック」
「エリアサンドナックルアタック」
「エリアサンドボウアタック」
3人の勇者もずいぶんと成長したようだ。
デザートワームが襲いかかってくるのを感じて、飲み込まれる事無く逃げた。
3人同時に食い殺されてくれれば楽だったし、俺も罪の意識を感じなくてすんだのだが、そう簡単にはいかないようだ。
しかたがない、また人間の血でこの手を汚すしかないようだ。
そう思ったのだが、3人の勇者はデザートワームと戦うことなく逃げ出した。
これは、ちょっとこまったことになりそうだ。
敵がこちらが困るような戦術を使いだしたのかもしれない。
このままでは、じりじりと不利になってしまうかもしれない。
俺が直接サザーランド王国に乗り込まないといけないのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます