第52話:剣の勇者・館野伊織

「あくまでも私の感じたことなので、うのみにはしないでくれ。

 勇者のうち3人は完全に支配下に置かれていると思う。

 最初に高級娼婦を王女と偽ってベッドに引き込んで支配の腕輪をはめさせて、次に奴隷契約を使わせたうえに、奴隷の支配を確定する入れ墨を彫ったはずだ。

 だがそれを表に出したら勇者ではなくなってしまう。

 民や他国に知られてしまったら、勇者ではなく奴隷兵と評価されてしまう。

 だから人に見られない場所に奴隷紋を彫っていると思う」


 なるほど、フランセスから見ても3人がおとしいれられているのか。

 この世界に召喚された直後に感じた印象では、3人はバカで1人が疑い深かった。

 疑い深い奴がおとしいれられずに生き残っているのだろう。

 それでもサザーランド王国に残っているという事は、機会を見て自分がこの世界の支配者になろうとしているのかな。

 少なくとも不良仲間を助けようとするような奴じゃないと思う。


「支配から逃れている奴は、剣の勇者ですか」


「よく分かったな、その通りだ。

 あいつはとても疑い深いようで、どんな娼婦を送り込んでもだまされないらしい。

 女は抱くが一緒に寝るような事はなく、戸締りを厳重にして寝込みを襲われないようにしているも聞いている。

 まあ、直接見たわけではなく、各騎士団内に流れている噂だがな」


 フランセスの話し方が徐々に豪快になっている。

 男の騎士も指揮下に置いている関係で舐められないようにしているのか、そもそもの性格が男っぽいのか、俺にはどちらか分からない。

 だが堅苦しい王宮内の礼儀作法や言葉遣いに肩がこっていたから、聞いていてとても清々しい感じがするな。


「恐らくその通りなのでしょう。

 俺が受けた印象もそうでしたから。

 それともっと重大な事を聞きたいのですが、いいですか」


「おい、おい、おい、何を聞く気なんだ。

 ちょっと怖いぞ」


「大したことではありませんよ。

 勇者達のスキルを教えてもらいたいのです」


「それは無理だ、あいつらも結構成長していて、私たちと言えどもそう簡単にスキルを見る事はできないんだ。

 それなりのレベル差があっても適性がない者がスキルをのぞき見するのは難しい。

 スキルをのぞき見する適性があるか、圧倒的なレベル差がなければ無理なんだよ」


「それは分かっています。

 ですが、いつ戦うか分からない敵のスキルは予測していたでしょう。

 百戦錬磨のゴア男爵が殺し合いかもしれない相手を予測したのです。

 それほど狂いがあるとは思えません。

 それを教えてください」


 俺がそう言うと、フランセスは苦笑いしながらも勇者のステータス予測を教えてくれたが、それは俺の推測の範囲内だった。

 3カ月前に見た槍の勇者のステータスから、国に命じられて必死でレベル上げをしたであろう予測に似た値だった。

 問題は剣の勇者のステータスだった。


 奴は俺の予測以上に努力したようだ。

 しかも生き残るために適性のあるスキルは全てあげていた。

 サザーランド王国を逃げだす時の事も考えていたようだ。

 剣の勇者を追い込み過ぎたら、どこか遠くに逃げ出してしまい、そこで悪逆非道の限りをつくすかもしれない。

 逃がす事なく確実に殺すにはどうすればいいのだろうか。


剣の勇者の予測ステータス

『氏名:館野伊織』

人体:基礎/レベル47

職業:勇者/レベル8

  :HP/2209/2209

  :MP/2209/2209

注 :勇者職のHPとMPはレベルの2乗

  :不良の中で一番猜疑心が強く狡賢い

「戦闘スキル」

木魔術:レベル3

火魔術:レベル5

土魔術:レベル3

金魔術:レベル3

水魔術:レベル3

風魔術:レベル3

剣術 :レベル8

短剣 :レベル3

馬術 :レベル3

「生産スキル」

野営:レベル5

木魔術:レベル3

火魔術:レベル3

土魔術:レベル3

金魔術:レベル3

水魔術:レベル3

風魔術:レベル3

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る