第51話:騎士団長対不良勇者
必要な会話も終わったようなので、俺も話をさせてもらう事にした。
「召喚に巻き込まれた時には助けていただきありがとうございました。
お陰様で何とか生き残ることができております」
なにを置いてもフランセス殿にはお礼を言わなければいけない。
あの時殺し合いになっていたら、たぶん生き残れたと思う。
だが、俺はこの世界の人間を信じられなくなっていただろう。
今のようにこの世界の人間と楽しくやっていけなかっただろう。
そう言う意味ではフランセス殿は大恩人なのだから。
「おお、巻き込まれたかたでしたか。
随分と立派になられて、見違えましたぞ。
無事でなによりです」
確かに今の俺はおやじ狩りで半殺しにされていた時とは比べものにならない姿だ。
まがりなりにも筆頭軍務大臣で伯爵だ。
俺自身は恥ずかしくて着るのが嫌なのだが、きらびやかなサーコートを着ている。
その下は、俺が狩ったサンドスパイダーの中でも特に固い個体の素材を使い、最高の職人が加工したフルアーマーを装備している。
「ありがとうございます。
今後のためにお聞かせ願いたい事があるのですが、よろしいですか」
「いいですよ、何でも聞いてください」
一瞬の迷いもなく答えてくれた。
俺がこの重要な席にいる事と鎧を装備している事で、俺がこの国でそれなりの役職に就いている事をさっしてくれている。
それくらいの観察力と推理力がなければ、一国の騎士団長は務まらない。
それだけの能力があるからこそ、おとしいれられて殺されることなく、ぎりぎりまでサザーランド王国の留まることができたのだろうな。
「勇者達のステータスはどれくらいになっているのですか。
今の彼らはゴア男爵でも勝てないくらい強くなっているのですか。
彼らはもうサザーランド王国に洗脳されているのですか」
俺にもとても失礼な質問をしている自覚はある。
ずっとこの国にいて俺の噂を耳にしていたアンはともかく、そうでないフランセスの腹心達には腹の立つ、とても失礼な質問だ。
恥知らずな国の命令にあらがい、地位や名誉、財産や友人知人を捨ててまで、慕いついてきた騎士団長に、不良勇者よりも弱いのかと聞いているのだから。
「恐らくだが、一対一なら勝負がつかないと思う。
だが二対一だと私が負ける。
戦闘レベルや基礎レベルはまだまだ私の方がはるかに高い。
だが勇者達には召喚特典がある。
その無尽蔵ともいえる体力と魔力はきょういだ。
私が100の攻撃を与えても、勇者の体力と魔力はなかなか削れない。
私が100の攻撃する間に、勇者は1の攻撃に成功するだけでいいのだから」
確かにその通りだな。
だがそれだけを聞きたいわけではない。
一番大事なのは不良勇者たちが国の支配を受けているかなのだ。
奴隷や支配の魔術や契約をさせられているかどうかなのだ。
「それで、洗脳の方はどうなのですか。
勇者たちは自分の意思で動けるのですか。
完全に国の操り人形になっているのですか」
「残念ながらそれは分からない。
私はあの国の権力者たちから警戒されていた。
だから勇者たちに関する情報を知ることは難しかったのだ」
「では感覚的なモノで構いません。
ゴア男爵が感じた事で大丈夫です。
ゴア男爵には勇者たちが操り人形になっているように感じられましたか」
3カ月前に槍の勇者を見た感じでは、徐々に支配下に置かれている感じだった。
普通ならもう完全に支配されているころだろう。
そもそも強大な力を持つ勇者を、いつ支配者になる野望を持つか分からない勇者を、支配下に置かずに強くするはずがないのだ。
自国の騎士団長よりも強い勇者を、4人も野放しにしているとは思えない。
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