第47話:槍の勇者・平内勇夢
下痢大使を使った時間稼ぎは思っていた以上に役に立った。
直ぐに確認のための密偵が送られてくると思ったのだが、そんな事はなかった。
内通者がいると疑っていたのだが、その心配はいらなかったようだ。
だとすると、やっぱり俺のしでかした事による噂が原因かもしれない。
そうだとしたら、俺が全責任を取らなければいけない。
そう思って敵の密偵が入り込まないように全力で見張っていた。
下痢大使の詰問があってから1カ月、ついに偵察がやってきた。
「くそ、なんでお俺様が使い走りのような事をしなきゃいけないんだ。
俺様は勇者だぞ勇者。
だが、まあ、王女に頼まれたら仕方がないな。
将来国王になるために軍功が必要のベットの中で頼まれてはな」
性根の腐った不良勇者が、ニタニタと下品な思い出し笑いを浮かべながら、ひとり言を話しているのは見るに堪えない醜悪なモノだ。
平内勇夢も自分の言動を多くの人に見られているとは想像もしていないのだろう。
だが、平内勇夢の言動は常に見張られているのだ。
トリと同調している俺や鷹匠団員によって、砂漠に入ったその時から。
「どうされますか、モンドラゴン伯爵」
嫌なのだが、俺がこの場の指揮官という事になっている。
本来なら鷹匠団長が指揮を執るのだが、運悪く交代時間なのだ。
副団長や幹部団員が指揮を執るべきだと思うのだが、急遽筆頭軍務大臣にされてしまった俺が、各団長がいない時には指揮を執ることになってしまっている。
今まで軍務大臣をやっていた奴にやらせろよ。
そう文句を言ったのだが、鷹匠や猟犬スキルのない者には無理だと言われてしまったが、だったら最初からそんな奴を軍務大臣にするな。
「このままできるだけ王都近くにまでおびき寄せる。
この程度の敵なら、いつどこであろうと撃退できる。
だが時間を稼ぐためには、俺たちではなく魔物が襲う形にするしかない。
それもサザーランド王国側が侵攻をためらうほど強力な魔物にな」
そうなのだ、よく考えれば魔物に襲わせるのが一番いいのだ。
この国を滅ぼすためには、必要以上の損害が出ると分かったら、サザーランド王国も開戦するのをためらうだろう。
人間対人間の戦争の損害は計算していただろうが、行軍中に魔物から甚大な被害を受けると分かったら、無謀な戦争を始める気にはならないと思う。
「さっきからめざわりなトリだな。
とっととどっかいけ、さもないと焼き鳥のするぞ」
「全員もっとトリを離れさせるんだ。
トリの目を信じて遠くから見張るんだ」
危ない危ない、大切なトリを殺される所だった。
初めての対人戦で、鷹匠たちも余裕がなくなっているようだ。
いつもの狩りならトリの目を信じて遠くから襲わせるのだが、今は何一つ見落としてはいけないと、普段とは比べものにならないくらい近くで見張っている。
ステータスを見る限り、遠距離攻撃の技は持っていないと思うが、異世界の事だから、勇者魔術や槍術の中に遠距離攻撃内々とは言い切れない。
「猟犬団、迎撃のための準備をしてくれ」
『氏名:平内勇夢』
人体:基礎/レベル32
職業:勇者/レベル6
:HP/1024/1024
:MP/1024/1024
注 :勇者職のHPとMPはレベルの2乗
:魅了魔術と奴隷腕輪の影響下にある。
「戦闘スキル」
喧嘩術:レベル2
槍術 :レベル6
「生産スキル」
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