第46話:操り人形
「パーフェクトパペット」
俺は罪の意識を感じる事無く下痢大使とその随行員を操り人形とする。
もうこれでこいつは俺の意のままに動くしかない。
「おい、下痢男、何をどう報告してもサザーランド王国軍は攻め込んでくるのか。
それとも、報告しだいでは攻撃を止めるこのか、嘘偽りなく話せ」
俺の呪文と詰問を聞いていたスタンフォード王国側の人間は唖然としている。
何の動揺もしていないのは国王陛下とエリザベス王女、それにエリザベス王女股肱の家臣たちだけだ。
「いえ、必ず攻め込んできます。
ただ、報告しだいでは、開戦の理由を作る工作をします。
開戦理由があまりにも無理難題で、戦争が長引くような事があれば、周辺国が参戦してくる可能性があるからです」
なるほど、その程度の計算はしているのだな。
だとすると、まだ完全に勇者が育っていないのだな。
普通なら完全に勝てるまで待ってから開戦するはずだ。
ジョージ王孫はそれくらいの我慢はできる人間だったと思う
なのにこの状態でスタンフォード王国を攻撃することにした理由はなんだ。
「なぜそこまで慌ててこの国を攻める。
もっと時間をかけて、勇者を育ててからなら、周辺国を気にすることなく、この国を攻めることができただろう。
なにかどうしても開戦しなければいけない弱みでもあるのか」
「それは分かりません。
本国からは何も言われていません」
本当になにも聞かされていないようだ。
下痢男は使い捨ての駒なのだろうな。
スタンフォード王国側が激怒して、殺しても気にもしない程度の奴。
品性下劣で欲深、スタンフォード王国側がガマンできずに開戦を覚悟させるためには、そう言う奴の方がよかったのだろうな。
「ならば重ねて聞く。
国境線に待機している部隊は誰が指揮している」
「分かりません、本国からは聞かされていません」
下痢男は本当に役に立たないな。
殺されることなく捕縛され、拷問や魔術で自白させられる事を恐れたのだろう。
サザーランド王国の機密を守って、自害できる漢とは思われていなかったのだ。
まあ、当然と言えば当然だが、本当に役に立たない。
いや、多少の時間稼ぎくらいには使えるか。
「ならば開戦を遅らせる状況を教えろ」
「それは、スタンフォード王国側に敵対の意思がなく、軍資金も兵糧も武器も準備されておらず、いつ襲っても簡単に滅ぼせる状況です」
「では何度も厳しく調べたが、スタンフォード王国側に敵対の意思がなく、何の準備もできていないと本国に報告しろ。
簡単に書くのではないぞ。
どの場所を誰とどのように調べて、先年と同じ量の物資や武器防具の量を書いて、本国が疑念を抱かないように書くんだ」
「分かりました、そのように書いて本国に提出いたします」
俺がひと通りに指示を出すまで待ってくれていたのだろう。
国王陛下が理解の追い付かない家臣のために確認してきた。
「モンドラゴン伯爵は人を操る魔術まで使えるのか」
「はい、意志の強い人間には通じませんが、意志が薄弱な者。
欲深で品性下劣な人間未満のモノなら操ることができます」
よく考えたら、この技って、思いっきり警戒されるよな。
とっさに嘘を口にしたが、誰も信じてくれないだろうか。
もう二度と使わないようにしよう。
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