第44話:下痢大使
俺は伯爵になっただけではなく、大臣にもなっていた。
この国の法律では、寄付で爵位をもらえるのは男爵までだ。
だから俺がいくら莫大な寄付をしても男爵以上はもらえない。
正式な計算をすれば、男爵位を100以上もらえそうだ。
いらんけど。
この国の法律内で、目立たないように爵位を与えようとすると、子爵なら各部隊の団長に任命することになる。
団長を交代させるような事があると、内部で争いが起こってしまう。
嫉妬で憎まれるのは絶対に嫌だし、対外戦争前に絶対やってはいけない事だ。
そこで最初は書類上だけの架空部隊を設立して俺を団長にする案がでた。
だがここで、どうせ書類上だけの架空部隊を設立するのなら、同じ書類上だけの大臣に任命して、伯爵に陞爵しようという案がでたのだ。
俺のやってきた事に対して、男爵から子爵に陞爵するだけでは少な過ぎると言うのが、王族や国の重職を担うものの一致した考えだったようだ。
別にいらんけど。
その流れて誰かがいっそ侯爵に陞爵しようと言ったそうだが、さすがにそれは隠しきれないと却下されたそうだ。
伯爵は現役大臣に与えられる爵位なのだが、侯爵は宰相や筆頭大臣、もしくは重大な交渉をしなければいけない外務大臣にしか与えられない。
書類上だけであろうと、宰相がいるのに筆頭大臣を設けるのはマズイとなった。
まあ、本音はよそ者を侯爵にしたくないという考えかもしれない。
本当にそんなもんいらんわ、犬にでも食わしておけ。
「サザーランド王国の大使が来られました」
侍従が小さな声で国王陛下にささやいている。
これから格式ばった謁見が始まる。
こんな場所にいるのは肩がこるので嫌なのだが、出席させられてしまった。
書類上だけの大臣と言っていたではないか。
そう心の中でだけ文句を言う。
本気で嫌だ出席したくないと言えば、この場にいなくても許されただろう。
だがエリザベス王女に頭を下げて頼まれたら断れない。
エリザベス王女がそこまでやるという事は、とても重要な謁見なのだ。
恐らくだが、本国から下痢大使に厳しい指示があったのだろう。
そうでなければ、致命的な弱みを握られている下痢大使が、強引に謁見を求めてくるはずがないのだ。
「モンドラゴン伯爵閣下。
申し訳ありませんが、非常時にはこの国に力を貸してください」
儀式慣れしていない俺を助けるためにつけられている侍従がささやく。
国王陛下直々につけてくれた侍従だから、この頼みは国王陛下の願いなのだろう。
同じことを事前にエリザベス王女からも頼まれているから、覚悟はできている。
この謁見しだいでサザーランド王国が攻め込んでくるかんしれない。
もう国境近くに大軍が駐屯していると考えておく方がいいだろう。
そのためにどう対処すべきかは、もう事前に決めている。
問題は俺のような間抜けが考えた事が正しいかどうか……
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