第40話:備えあれば患いなし

 俺は戦争に備えて素材を提供することにした。

 砂漠の魔物は武器や防具の素材になる。

 攻撃力や防御力のわずかな違いで、生死が分かれる事もある。

 だからサンドスパイダーやサンドワームの素材を提供したのだ。


「職人はできる限り集めましたから、モンドラゴン男爵が提供してくださった素材で武器と防具を作ります。

 こちらから戦争を始める気はありませんが、いつまでも隠しておけることではありませんから、今から準備をしておきます」


 エリザベス王女が決意に満ちた表情で口にする。

 股肱の家臣たちも同じような表情をして頷いている。

 全ての元凶は俺なので、とても胸が痛む。

 今更俺にできる事など限られているのだが、責任はとらないといけない。

 そこで色々と考えたのだが、目立たずにやれる事はとても少なかった。

 更にサザーランド王国に気がつかれないようにするとなれば、少ない候補が更に限定されることになる。


「私にできる事など限られているのですが、幸い土魔術と土木魔術が使えます。

 そこで色々と試してみたのですが、薬草の促成栽培に成功しました。

 大量の薬草があれば、多くのポーションが作れるのではありませんか。

 ポーションがあれば、敵の数が多くても、何とか戦えるのではありませんか」


「それは助かります、モンドラゴン男爵。

 今までも返しきれない支援をいただいているのに、更に薬草まで支援していただけるとなると、お礼のしようがありません」


「いえ、お礼なんてとんでもありません。

 ぎりぎりの選択をしなければいけない原因を作ったのは俺です。

 その責任を取るのは当然の事です。

 まあ、そんな事よりも薬草を確認してください」


 俺は話を打ち切ると魔法袋から促成栽培した50種以上の薬草を取り出した。

 部屋一杯とは言わないが、小山のように薬草を積み上げた。

 英雄の無限魔力を駆使して促成栽培した薬草だ。

 家畜を買う時に村や街で薬草や薬草の種を買っておいたのだ。

 野生動物を生け捕りする時にも、図書館で見知った薬草を集めた。

 もちろん絶滅しないように少しだけ採取して、巨大城砦内の放牧地で魔力任せて促成栽培したのだ。


「こっ、これは、これほどの量を魔力で栽培したと言うのですか?!」


 薬草やポーションの知識にも秀でた魔術師団長の娘ソフィアが驚きの声をあげた。

 15歳から18歳の間に結婚するのが普通のこの世界で、21歳になっても結婚せずにエリザベス王女を護っている、股肱の家臣と言える人だ。

 その彼女が驚いているのだから、ちょっと作り過ぎたのだろう。

 だが少ないよりも多い方がいいと思うのだが。


「ありがとうございます、モンドラゴン男爵。

 これだけの量があれば、いざという時にもケガの心配をせずに戦えます。

 ですがさすがにこの量は多過ぎてポーションを作りきれません。

 職人がいませんから、1割だけ受け取らせていただきます」


 なるほど、だったら別の方法で役に立たせてもらおうか。

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