第38話:緘口令
「いいか、お前ら、ここで見た事は絶対に話すなよ。
どれほど酔っぱらっても絶対に口にするな。
この事がサザーランド王国に知られたら、間違いなく攻めてくるぞ。
もし、万が一、口にする奴がいたら、酔った勢いであっても殺す。
俺がこの手で殺すからな」
「「「「「はい」」」」」
猟犬団長がとても厳しい事を言う。
俺には実感がないのだが、俺のやった事はそれくらい影響が大きい事なのだろう。
実際にしでかしたのは俺だから、怒られないように口出しをしないようにする。
「まあ、それはそれとして、せっかく目の前に泉があるんだ。
しかも飲み水と水浴び用に2つもある。
砂漠でこんなぜいたくは2度とできないだろう。
遠慮せずに水浴びさせてもらえ」
「「「「「おう」」」」」
団長にそう言われて、猟犬団員たちが一斉にプールに飛び込んだ。
プールとは言っても、子供が溺れないように徐々に深くしてある。
特に子狼の事も考えて、遠浅に作ってある。
子狼だけでなく、子牛や仔馬、子豚や子鹿が溺れても困る。
なんと言ってもここは砂漠の真ん中に作られた牧場なのだから。
まあ、飼っているのは微妙に地球の牛や馬とは違う所のあるウシやウマだけど。
実際に食べた味は日本で食べたのと大差ないと思う。
牧場を開くことや市場で金を得るために、砂漠を横断してから狩ったウシやウマは食べなかった。
だが、牧場を開くために生きたウシやウマなどを集めた時に、村や街で買い物をした際に、すでに殺され料理されているウシやウマ、ブタやヤギは食べたのだ。
結構おいしかったし、日本で食べた安価な肉との違いも分からなかった。
「ぶっもオオオオオ」
放牧されているウシがプールで泳いでいる猟犬団員に迷惑だと文句を言っている。
ウシたちにとっては、ここは泳ぐための場所ではなく水を飲むための場所だ。
人間には水浴び用と飲み水用の両方のプールがあるが、動物はここだけだ。
動物たちは平気で水場で排尿排便をするから、人間が飲むには不衛生だ。
本当なら猟犬団員たちも水浴びしない方がいいのだが、デザートウルフやサンドウルフが気持ちよさそうに水浴びしている見ると、がまんできなかったのだろう。
「すまないな、モンドラゴン男爵」
団員たちが夢中で水浴びしている間に、団長が話しかけてきた。
団員たちに聞かれたくない話なのだろう。
「ちょっと確認させてもらいたいのだが、このような牧場は他にもあるのか。
まさかとは思うが、こんな牧場が砂漠に点在していて、それを使うと砂漠を横断できたりしないだろうな。
そんな事になっていたら、サザーランド王国はその道を使って横断先にある国を奇襲しようとするぞ。
邪魔になるスタンフォード王国は間違いなく滅ぼされる」
どうやら俺は本当にやっちまったようだ。
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