第37話:家畜集め

 牛を飼う、牧場を作ると決めてからの俺の行動に迷いはなかった。

 他の事など目に入らず、生きた牛を集める事に専念した。

 だが、牛を探す間にどうしても他の魔物や獣にも出会うことになる。

 今までなら問答無用で狩って魔法袋に保管した。 

 だが今の俺には牧場を作るという目標がある。

 何よりタンの燻製を食べたいという想いがある。

 だから魔物は殺したが、飼えるかもしれない獣は全部生きて捕らえた。


「後の事は任せたからね。

 砂漠を横断する時に勝手な行動をしないように、よくしつけておいてくれ。

 頼んだよ、我が愛するデザートウルフ」


 俺は集めてきた獣をデザートウルフに預けた。

 一旦捕獲して巨大城砦内に入れれば、逃げる場所などどこにもない。

 城壁内はとても広大なので、村人たちに被害を与える事もない。

 何より俺のやる事に文句を言う村人はいない。

 もう今では元々の村人と元奴隷の間に区別はない。

 俺が区別や差別は嫌いだと口にしたから、少なくとも表面上はない。

 彼らは城壁に併設された部屋に住み、見張りもしてくれている。


 日に日にデザートウルフが管理する獣が増えていく。

 同じ獣でも細かい種別が違うのだが、俺にはどうでもいい事だ。

 牧場として成立する動物かどうか、美味しく食べられるかどうかだけが大切だ。

 ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ダチョウ、ネズミなど、自動翻訳されるので日本で知っている動物に近いのだろうが、微妙に違う所がある。

 そんな動物達を美味しく食べられるように肥育するのだ。


「パーフェクトグラス」


 この魔術もある意味俺の独自魔術言えるかもしれない。

 穀物や果実などいった、人間が食べられるところのない草を促成する魔術など、この世界の人間は研究しなかったようだ。

 だが、牧場を作るのなら、家畜が食べる牧草を急いで成長させなければいけない。

 だから想像力と魔力を駆使して、強引に巨大城砦内に牧草地を創り出した。

 これで今使われていない城内空間は全部放牧地になった。


「この牛を売って欲しい、代価はこの金貨でどうだ。

 金貨を使わないと言うのなら、こちらの銀貨や銅貨でもかまわない。

 なんならこの薬草や魔物の肉や素材でもかまわないぞ」


 俺は野性動物を狩り集めるだけでなく、新たに発見した村や街に行って、金や素材を代価に家畜を買い集めた。

 野生動物よりも、既に人間に飼われたことのある動物の方があつかいやすい。

 こちらには牛を飼った経験のある、しかもデザートウルフに猟犬スキルを発動するような、才能豊かな少女がいるのだから。


「分かった、全部売るわけにはいかないが、雄は売らせてもらう。

 どうせ冬前には大半の家畜を殺さなければいけないのだ。

 少し色を付けてくれるのなら、他の家の連中にも話しをしてやろう」


 地下用水路を引くときに見つけた村や街から多くの家畜を買い集められた。

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