第33話:巨大城砦

「分かりました、やれるかどうか試してみましょう」


 さて、砂漠近くのここが水不足なのは当然と言えば当然だ。

 話の内容から想像すると、畑を作物を作るだけの水もないのだろう。

 わずかに手に入る水も、飲み水とするには汚れているようだ。

 一番手っ取り早いのは、俺が膨大な魔力で水を創る事だが、それでは俺が死んだり長期で来れなくなったりした場合に、村が全滅してしまう。

 手間で時間がかかっても地下用水路か上水路を作るしかないな。


「この近くに大きな川か湖はないのですか」


 ダメもとで村長に聞いてみた。


「そんなものがあるのなら、どれほどの労力と時間がかかっても、水を引いている」


 分かりきっていた返事が返ってくる。

 少し遠くても、一番近くの川や湖から水を引くしかないのだが、そうすると今その水を利用している人たちが水不足で苦しむことになる。

 少々水をこちらに回しても大丈夫なくらいの大河か巨大湖から水を引くしかない。

 魔力はともかく、時間がかかるよな。


「分かった、遠くの大河から地の底に水の道を創ろう。

 だがそれにはどうしても時間がかかる。

 それまでの間水に困らないように、我が水を創り出してやろう」


 俺は言葉を改めて神の使徒としてふるまうことにした。

 あざといやり方で、内心赤面してしまうのだが、もうそれしか方法がない。

 元奴隷たちに悪心を起こさせないためにも、元々の村人の心をつかむためにも、何より両者の争いを未然に防ぐためにも、圧倒的な力を見せつけなければいけない。

 だが、毎日何度も水を創り出すのは面倒だ。

 それに、元奴隷たちの住むところも創らなければいけない。

 どうでやるなら手加減なしに思いっきりやる。


「まずは神の奇跡を見せてやろう。

 パーフェクトキャッスル」


 俺は自分の想像力を駆使しながら、この世界にある土木魔術の呪文を唱えた。

 だが俺の頭の中にあるのは、日本にいる頃に空想していた自分だけのお城だ。

 西洋風の城壁と塔が外敵に備えて5つの山を内包するように囲んでいる。

 そんな城壁が三重に護る内側にみんなの家々がある。

 大好きな日本式の天守閣も創り出したが、材木がないので土で代用だ。

 土とはいっても魔力で圧し固めているので、版築やコンクリートのような物だ。

 本当なら鉄筋が竹筋を入れないのだが、ないし魔力も節約したいので諦めた。


 少しかわいそうだが、元々の村は1つの城壁にしか護られていない。

 元々の村は乏しい水脈を利用しようとしたからだろうか。

 乾燥したはげ山とはげ山の間、谷間につくられていた。

 だが100年に1度の豪雨に見舞われたら、水害でひとたまりもなく滅ぶ。

 それに山頂を中心に防御を固めるには、山間の村では一重が精一杯だ。

 城壁や塔に十分な居住空間があるのだが、自分の家も欲しいだろうから、圧縮した土で30畳分くらいの家を手あたりしだい創り出す。


「な、なんじゃこりゃああああああ」

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