第24話:買い物
俺は誘惑に負けてしまった。
危険かもしれないと分かりながら、山羊の乳を与えてしまった。
何かあったらパーフェクトヒールやパーフェクトデトックスを使えばいい。
そう自分に言い訳して、隊商が運んできた山羊を全頭買い占めた。
隊商の頭に牛や豚、魚でも香辛料でのも高値で買うと言ってしまった。
やってはいけないと分かっていながら、言ってしまったのだ。
「そんな事をしてもらっては困ります、モンドラゴン男爵。
それでなくても色々と噂が広がっているので。
モンドラゴン男爵の実力を確かめるようにと本国から指示か来ています。
予定されていた履歴を送りましたが、信じてもらえるかどうか分かりません。
危険視した本国が討伐を早めたらどうするおつもりですか。
もっと自重していただかなければ困ります」
思いっきり怒られてしまった。
アン騎士長に、言葉は丁寧だがボロクソに怒られてしまった。
60前の初老男が、21歳の美しい女性に叱られる。
特殊な性癖の人にはごほうびなのだろうが、健全な男ならへこむできごとだ。
当然俺は思いっきりへこんでしまった。
隊商の頭に依頼した事も、狂人のたわごとだとアンから中止が伝えられた。
だがこの程度の事で俺の子供たちへの愛情はとどまらない。
山羊乳を美味しそうにペロペロする子狼たちを見ればなおさらだ。
日本で色々と問題だった事も、パーフェクトヒールやパーフェクトデトックスを使えれば何の問題もないのだ。
子供たちが食べたい物を食べさせてあげられる力が今の俺にはあるのだ。
だったら自重する必要など全くない。
だが、俺は身勝手な人間ではない。
アンやスタンフォード王国に迷惑がかかると分かった以上、もう二度と隊商から購入する気はない。
だが、自分でサザーランド王国に買い物に行くとなると、関所を通るのが面倒だ。
だからと言って関所を破ると、万が一関所破りがバレた時にサザーランド王国がスタンフォード王国に戦争をしかけてしまう。
そこで俺は砂漠を横断して別の国で買い物をすることにした。
南方にあると王家の書物に書いてあった香辛料も手に入れたい。
砂糖やハチミツも手に入れられるのなら欲しい。
日本にいる時は、甘味などほとんど食べなかったのだが、手に入らないと無性に欲しくなるのが人間の性というものか、あるいは身勝手と言うべきか。
だが、ここで1つ大きな問題がある。
今の俺には20頭もの子供たちがいるという事だ。
今までなら何も気にすることなく遠くに行くことができた。
行った事はないけれど。
だが今の俺には、一日二度の食事と散歩という、絶対のやらなければいけない親の責任があるのだ。
「団長、しばらく長期の狩りに行くから、帰らなくても心配しないでくれ」
結局俺は子供たちを連れて買い物の旅に出ることにした。
砂漠を縦断するのか横断するのかは分からないが、夜に移動して昼は眠る。
一日一度、砂漠の砂を固めた秘密基地、狩りと買い物に必要な仮小屋を建てた。
地下に水槽を作って水を貯める。
日差しを裂ける家の中には山羊や羊、牛や馬が飼えるような牧草地を作った。
少々やりすぎたかもしれない。
街を造るゲームに熱中していた若い頃、あれを寝落ちするまでやっていた事を思い出したが、今さら止める気にはならない。
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