第21話:個人的見解

「多くの先人は伝説通り弱い子供を預けに来たと信じていた。

 だが俺はその弱いと言われた子供の子孫が狩りが上手い事を知っている。

 賢く強く、何度も俺たちを危険から救ってくれた。

 だから弱いという表現が単なる強さとは違うのだと思ったのだ」


 猟犬団長がとても熱を込めて話してくれる。

 個人的見解、自説を情熱的に聞かせてくれる。

 少しうっとうしいのは確かだが、聞くべき事もあるのかもしれない。

 聞き流すことなく、真剣に聞かせてもらうしかない。

 少しは合いの手を入れた方が団人たちもうれしいかもしれない。


「確かにそうかもしれないね。

 団長の考えは正しいかもしれない」


「まあ、自分では正しいと思っている。

 古老などは真っ向から否定するが、若い連中はありえると言ってくれている」


 猟犬団長が周囲にいる団員に目をやった。

 ろこつに目を避ける団員はいないが、困惑している者が多い。

 現役の団長に逆らうのは嫌だけど、古老に小言を言われるのも嫌なのだろう。

 何よりどちらでもいいと思っているのかもしれない。

 預けに来てくれても来てくれなくても、弱くても弱くなくても、彼らには何の問題もないのだから。


「それで俺は色々と考えてみたのだよ。

 俺がこいつに水をやっている時に、ふと思いついたのだ。

 サンドウルフもデザートウルフも、狩った獲物の水分だけで、この過酷な砂漠で暮らしていくのは不可能だと。

 現にこいつらも人間が水を分けてやらないと生きて行けない。

 だから、サンドウルフやデザートウルフも水魔術が使えるんだと。

 人間に預ける子供は、水魔術の適性がない子なんだと思ったんだ」


 猟犬団長の私見はとても斬新な考えだった。

 古老たちが頭から否定するのも分からない訳ではない。

 魔物の中には魔術を使う種族や個体もいるらしい。

 だがその全てが敵と戦うため食糧になる動物や魔物を狩るための攻撃魔術らしい。

 だが、それも突きつめれば生き残るためだ。

 生き残るために魔術で水を得るようになってもおかしくはない。


「団長の考えはとても斬新だが、俺もあり得ると思う。

 今日預けられたデザートウルフの中には立派な大人も多い。

 だとすれば今日まで過酷な砂漠で生き残っていたことになる。

 決して弱い個体だとは言えないだろう。

 だが全頭とても渇いていて、与えた水を貪るように飲んでいた」


「そうなんだ、それには俺も注目していたんだ。

 だがそうだとすると、残念ながらデザートウルフの所有権は、猟犬団ではなくモンドラゴン男爵にあるとしか言えない」


 おい、こら、何でそんな話になる。

 俺は20頭もの命を預かるのは嫌だぞ。

 確かにボスに頼まれたのは俺だが、責任は他に押し付けたいと言うのが本心だ。

 20頭もの命を預かってしまったら、最悪の場合に逃げるという手段が使えない。

 だから責任は猟犬団に背負って欲しいのだが、ダメかな。

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