第19話:デザート・ウルフの習性
「気をつけろ、サンドウルフじゃないぞ。
大型のデザートウルフの群れだ。
急所を食い破られないように気をつけろ。
いや、手足だって一咬みで喰い千切られるぞ」
俺にはこの群れが普通な群れなのか異常な群れなのか判断できる経験はない。
だが、周りの猟犬団員の表情を見れば直ぐに分かる。
この群れは異常な群れなのだと。
経験豊富な猟犬団であろうと、生き残るのが難しい相手なのだと。
猟犬団にもサンドウルフはいる。
砂漠で生きて行けるように進化した特殊な中型狼だ。
だが、相手は大型の虎以上の大きさの超大型狼なのだ。
体格差を利用して逃げる事はわずかに可能かもしれない。
だが正面から戦っても勝てない事は、尻尾を巻いて全身がたがたと震えているサンドウルフ姿からも一目瞭然だ。
犬は幼い頃にケツを咬まれて以来、ずっと怖いのだ。
だが同時に、小学生高学年になってからずっと飼っていた。
俺にとって犬とは、怖くてかわいい存在なのだ。
まあ、目の前にいるのは犬ではなく狼なのだが。
自然美というのだろうか、とても美しいと思ってしまう。
特にボスだと思われる狼は、白銀に光り輝いていてとても美しい。
そのボスがじっと俺の事を見ている。
人と違って狼の心の中を読むのは難しいが、恐らく俺の事を品定めしている。
何が目的なのかは分からないが、俺の本性を確かめようとしている。
いったいどういう目的でそんな事をしているのか、全く思い当たることがない。
いったいどれだけ睨み合いをしていたのか分からない。
デザートウルフは俺の本性を見極めるために襲ってこない。
猟犬団はデザートウルフの群れが不意に襲ってきた時のために動けない。
猟犬団から動かなかったのは、サンドウルフが怖がっていたからだ。
とてもではないが猟犬団から攻撃をしかけられる状態ではなかった。
突然緊張の雰囲気が崩れた。
周囲から新たな魔物が集まってくる気配がしたからだ。
気配は地中から近寄ってくるから、相手は強敵サンドワームだろう。
人間とサンドウルフに集団に加えて、100匹以上のデザートウルフの群れだ。
いつも飢えているサンドワームが見逃してくれるはずがなかったのだ。
「ウォオオオオオオオン」
デザートウルフのボスが遠吠えをした。
それと同時に多くのデザートウルフが子狼をくわえてこちらに来ようとする。
猟犬団員たちの緊張が一気に高まる。
「止めろ、子預けだ、伝説の子預けだ。
俺たちはデザートウルフに養父と認められたんだ」
「ウォオオオオオ」
猟犬団長が何を言っているのか全く分からなかったが、何か特別な事が起きているのだけは理解できた。
そしてデザートウルフを攻撃してはいけない事も理解できた。
「ウォオゥオ、ウォオオオン」
デザートウルフのボスがまた遠吠えをした。
今度はどんな意味なのか俺にも分かった。
子供を預けるから後は頼むという意味だ。
なぜなら自分たちがおとりになってサンドワームを引っ張って行こうとしている。
そんな漢気のある所を見せつけられて、何もしないわけにはいかない。
「土魔術、サンドスネーク」
俺の必殺技が誰の目にも触れない砂の中で炸裂した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます