第18話:魔物料理
「土魔術が使えるのなら、砂を固めて日差しを避けるんだ
土魔術が使えないのなら、砂を掘って日差しを避けられるようにするんだ。
ただし、絶対に油断するなよ。
砂の下からはサンドワームが狙っているし、音もたてずにサンドスパイダーやサンドスネークが近寄ってくるぞ」
俺は猟犬団の団長に色々教わりながら狩りをした。
砂漠で生きていく全ての知識と知恵を直接教えてもらえた。
国王陛下から猟犬団長に直接指示があったそうだ。
お陰で短時間に1人で砂漠で生きて行く術を手にれる事ができた。
砂漠で1人生きていく気なんてないけど。
まあ、何かあってこの国を逃げ出さなければいけなくなった時には役に立つ。
そんな事にはならないように立ち回るつもりだが、俺は間抜けだから。
どこかで大きな失敗をしている可能性がある。
だから非常用の食料もたくさん魔法袋に蓄えてある。
王家秘蔵の図書を読めるようになって、一番最初に調べて作ったのが魔法袋だ。
お陰で手加減なしで狩った魔物を市場に出さずにすんでいる。
最初は食べるのが嫌だったスパイダーやスネークも、一度食べれば平気になる。
調味料が塩しかないので味に変化はつけられないが、スパイダーは部位によってカニやエビに似た味かして、塩味だけでも十分美味しく食べることができる。
スネークの方は鶏のささ身に近く、元の姿を思い出さない限り美味しく食べられるのだが、正直バターでソテーしたいと思ってしまう。
たっぷり香辛料をまぶして、唐揚げにしたいと思ってしまう。
南方の国に行けば香辛料があるかもしれないと心迷う事もある。
別にこの世界に責任があるわけでも恩があるわけでもない。
それに勇者召喚が行われていなくても、スタンフォード王国はサザーランド王国に滅ぼされていたと思う。
その時にはフランセス騎士団長とアン騎士長は誇り高く戦って死んだだろう。
彼らにはほんの少し助けられたけれど、別に助けてもらわなくても、自力で斬り抜けられたと思う。
だから恩に着る必要などないのだが、不完全な良心がうずいてしまう。
「お、美味そうな料理だな。
モンドラゴン男爵は魔力量が多くていいな。
普通ならそんな大量の水は創り出せないぞ」
猟犬団長がうらやましそうに言葉をかけてくる。
猟犬団に所属している者の多くがサンドウルフとペアを組んで狩りをしている。
自分の飲み水だけでなく、サンドウルフの飲み水も創り出さないといけない。
不意に魔物と戦闘になったときの事も考えて、魔力残量に気をつけながらだ。
だから猟犬団に所属する者は水魔術が使えて基礎レベルも高くないといけない。
ある意味では砂漠の民のエリートなのだが、それでも飲み水には苦労する。
「まあ、たくさん修羅場をくぐっていますからね。
そうでなければ単独で大型のサンドスパイダーは狩れませんよ。
色々教えていただいたお礼に、水分たっぷりのシチューをふるまいますよ。
味付けは俺の国のモノなんで、保証しかねますけどね」
「おお、それは助かるよ。
水分補給ができるのなら味は二の次さ」
えらい言われようだが、これは仕方がない。
生まれ育った国の味付けが一番だからな。
さて、魔力と想像力に任せて砂漠の砂からデミグラスソースを創り出したけど、果たして受け入れてもらえるかどうか。
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