第15話:駆け引き
「ふむ、よくこれだけの隠し財産がありましたな。
これは宗主国に対する裏切りですぞ。
さっそく本国に知らさせていただきます」
大使が狡猾さと獣欲を隠さずに脅かしてくる。
父王や母親の王妃、叔父や大叔父、更には従兄弟たちまで病気で倒れてしまい、急遽本国に帰ることになったエリザベス王女を、腐れ大使は辱めるつもりだ。
あまりにも腹が立ったので、大恥をかかせてやることにした。
水魔術は奴隷仲間に配るために反復して練習していた。
だから今ではレベル10の水魔術も使える。
まあ、今回はそれほど難しい魔術など必要ないけどね。
単に大使の腸の中に水を発生させればいい。
水を取り寄せる先は異世界でも異次元でも構わない。
大量の水を創り出して、エリザベス王女との正式な謁見の席で、大量の下痢便を垂れ流して歴史に名を残してもらうだけさ。
「ぎゃああああ、うそだ、何かの間違いだ、こんな事はありえない」
全く何の前兆もなく大量の下痢便を垂れ流した大使が、現実を認めることができなくて、狂ったようにわめく。
「大使殿、これはあまりにも失礼過ぎますぞ。
サザーランド王国の王侯貴族には、特殊な性癖の方が数多くおられるとは聞いていましたが、事もあろうに国家間の正式な会談の席で脱糞されるなど、我が国をバカにするにもほどがあります。
この事は我が国の正史に書き残したうえで、サザーランド王国にも正式に抗議させていただきますので、覚悟していただきたい」
エリザベス王女の側近、イザベラが顔を真っ赤にして怒っている。
一方の大使は自分の失態に平常心を完全に失っている。
普通ならとても交渉にならない状況なのだが、アンには事前に大変な事が起こると言ってあったから、何とかしてくれるだろう。
「あああああ、はん、ちょっとこれはあまりにもあまりな事ですな」
アンが俺を非難するような視線を向けてくる。
まあ、確かに、ちょっとやり過ぎた気がしないでもない。
俺の臭気の事を忘れていたので、臭くなり過ぎた事は反省する。
俺は昔から間の抜けた事をよくやってしまうのだ。
最初の計画では、もっと別のやり方をするつもりだった。
スタンフォード王国に伝わる、他国にも知られたティーカップを大使に割らせる予定だったのだが、そんな大切なモノを割るなんてもったいないじゃないか。
ちょうどいい方法を思いついたから、臨機応変に変えただけなのだが、やはりどこか1つ抜けた所があるのだよな。
「どうでしょうか、大使には賠償金を支払わせますので、本国に抗議するのだけは止めてもらえないでしょうか。
そうですね、大使。
賠償しますよね、大使。
歴史に一族の汚点を残すことになったら、一族に殺されるのではありませんか」
「払う、払うから抗議は止めてくれ。
それと、記録に残すのも止めてくれ。
この通りだ、頼む」
「それは困りましたね。
大使殿は我が国の歴史を嘘で固めろと言われるのですか。
そのような下劣な行為は、スタンフォード王国ではやっておりませんの」
「そこをなんとか頼む。
この通りだ、全てなかった事にしてくれ。
私が集められるだけの金を用意する。
それに、この奴隷の値段もできる限り安くする。
だがら頼む、全てなかった事にしてくれ、お願いだ。
もう無理な税を要求したりもしないから」
エリザベス王女は穏やかに笑っているだけで交渉を有利に運んで行った。
穏やかな笑顔の中に隠れる気配。
権謀術数の渦巻く王宮で生き残ってきた大使だ。
エリザベス王女が何を言いたいかくらいは理解できたようだ。
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