第14話:創造魔術
「アン騎士長殿、折り入ってお願いしたい事があるのですが」
俺は他の人間の目がない時を選んで話しかけた。
「何かな、ヒデオ殿。
ヒデオ殿の事情は召喚の儀式に参加していたのでよく知っている。
だから大抵のことは叶えてあげるが、無理な場合もあるからな」
「はい、無理ならしかたがないのですが、私をスタンフォード王家に売る事はできないでしょうか。
はじめは死んだ事にして逃がしてくれとお願いするつもりだったのですが、それでは万が一捕まった時にアン殿とフランセス殿に迷惑をかけます。
表に出す形で堂々とスタンフォード王家に仕えたいのです」
「ふむ、ヒデオ殿が奴隷制度のないこの国で暮らしたい気持ちは分かる。
だが私の勝手で王家の財産である奴隷を売り払う事はできない。
それに勇者達が成長したら、真っ先に狙われるのはこの国だ。
そして国民のほぼ全てが奴隷にされてしまうだろう。
だからこの国で自由を手に入れても一時の事だぞ」
「隠さなくてもいいですよ、アン殿。
アン殿とフランセス殿がこの国に肩入れしている事は分かっています。
もしこの国が滅ぼされそうになったら、サザーランド王国から離脱して助けるのですよね、見ていれば分かりますよ」
「……ヒデオ殿の言い方だと、団長や私を売って自由を手に入れる気はないようだ。
だがこのように全てを明らかにして話すのは、少々危険すぎるぞ」
「アン殿が誇り高い性格なのは、普段の行動を見ていれば分かりますから。
他の人間が相手ならこんなやり方はしませんよ」
「ああ、はん、分かった、分かった。
だが私が思いつく方法は実現不可能だと思うぞ」
「それでもかまいません。
思いついた方法を教えてください」
「フランセス団長や私が表にでない方法でやれる事は、スタンフォード王家側から大使にヒデオ殿が欲しいと言ってもらって、莫大な対価を払うしかないだろう。
あの欲深い大使の事だ、信じられないくらいの額を要求するぞ」
アンの実現不可能という方法は俺には簡単な事だった。
「それでいいではありませんか。
必要な対価は俺が自分で用意しますから、心配しないでください」
「大口を叩くではないか。
こう言ってはなんだが、ヒデオ殿は勇者召喚に巻き込まれただけの老人だ。
とてもそれほどの対価を自分で用意できるとは思えないのだが」
「では、これを見てください」
俺は自分の想像力を駆使して創り出したダイヤモンドと真珠を見せた。
魔術や錬金術で創り出したわけではない。
元の世界で手に取ってみた事のある宝石、テレビや動画で観た巨大な宝石。
それを想像力と魔力を総動員して再現しただけだ。
材料は砂漠の砂から集めたり、異世界や異次元から呼び寄せたりした。
もしかしたら、異世界では宝石盗難事件になっているかもしれない。
「な、これは、いったいどうやって手に入れたのだ」
「勇者召喚に巻き込まれた被害者に、神様が特別なスキルをくれたようです」
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