第4話:自己強化

 強くなるための方法で思いつくモノを片っ端から試す。

 まずは想像力を駆使して骨を強化する。

 人体骨格模型を思い出して、その全ての骨に魔力を付与する。

 硬くしなやかな強い骨にする。

 ヒーローがどのような攻撃をしても、敵からどのような攻撃を受けても、折れる事がないような強靭な骨をイメージして魔力を付与する。


 次にその骨につく筋肉に魔力を付与して強化する。

 アニメやラノベで知っているあらゆる攻撃ができる強い筋肉を想像する。

 魔力によって身体強化されたあらゆる攻撃が可能な筋肉だ。

 魔力を放出する攻撃をしても、その反動を受け止められるだけの筋肉だ。

 魔術攻撃を受けても弾き返せる筋肉だ。


 それは皮膚も同じだ。

 あらゆる直接攻撃を行う時には、同じ破壊力が自分にも返ってくる。

 それを受け止められるだけの強い体が必要なのだ。

 骨も筋肉も皮膚も内臓も強くなければならない。

 もちろん爪や髪、目も忘れてはいけない。

 習い覚えた解剖学を思い出して、身体の全てを強化する。


「なるほど、勇者殿もかなりの悪のようだ。

 だったら話が早い。

 金も女も与えよう。

 国を一つ滅ぼすたびに、金貨100枚と女を与えよう。

 それでどうかな」


 国側が明らかに不当な条件を提案してきているのが分かる。

 一国を滅ぼして広大な領地と莫大な財宝、それに民まで手に入れたのに、報酬が金貨100枚と女では安過ぎだが、不良にその事が分かるかな。

 おっと、今はそんな事を考えている場合じゃない。

 少しでも早く強くならなければいけない。


 習い覚えた東洋医学を思い出して、全経絡経穴に魔力を流す。

 少しでも早く魔力を身体中に流すことができれば、生き残る確率が高くなる。

 やれるかどうか分からないが、主要な経穴に魔力を貯める器官を想像する。

 アニメやラノベによっては魔力器官と呼んでいるものだが、大きいと邪魔だ。

 魔法袋のように、別空間に魔力を貯められる事を想像する。


 経絡経穴だけではなく、インド医学のアーユルヴェーダも考える。

 経絡経穴と同じ物が多いが、ここは別物だと考えればいい。

 予備の回路だと考えておけば、経絡経穴が使えなくなった時に助かる。

 チャクラと言われる場所にも魔力器官を作っておく。

 ここまでやっておけば、ここで殺し合いになっても生き残れるだろう。


「やったぜ、金と女だ」

「おい、引き受けようぜ、なあ」

「ふん、人を殺して金と女がもらえるなら文句はねえよ」

「お前らは黙ってろ!

 交渉は俺がやる。

 国を相手に金と女だけで利用されてたまるかよ。

 それに金貨100枚の価値が分からねぇのに、簡単に約束するんじゃんえよ。

 女だって美人だと約束させておかないと、ブスをよこされて終わりだぞ。

 おい、お前、権力だ、権力もよこせ」


 よかった、また話が俺から外れてくれた。

 その間にやるべき事をやって強くなるぞ。

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