肉体
バブみ道日丿宮組
お題:免れた体 制限時間:15分
肉体
いつか夢の中で会えるから。
そう彼女はつぶやいて屋上から飛び降りた。
僕は必死に手を伸ばしたけれど、彼女がいたという認識だけが残された空間を掴むだけで本当の彼女を掴むことはできなかった。その後に残ったのは彼女という肉の塊で、彼女という存在はいなくなった。
それからの僕は彼女を追うためにあらゆる手段を試した。
けれど、いくつもの傷が僕をそのたびに叱咤する。お前は死ぬことはできないと。彼女が直してくれたこの身体は何者にも支配されないと。
そして僕は夢の世界を探し始める。
彼女がそこで会えるというのなら本当のことだろう。小さい頃から先頭をはしる彼女は間違いをいわない。間違ったことがあるとすれば僕が事故にあって彼女を悲しませたことだ。
でも……と振り返るなら、あの時死んでおけば彼女と同じ世界にいけたかもしれないし、彼女が死ぬことはなかったかもしれない。
美しかった彼女の身体に傷をつけた僕には罪しかない。
僕を助けるために彼女が研究してたウィルスは彼女を侵食した。それは少しずつながら彼女を確実に死という色を塗りたぐった。
そんな彼女は自死という道を選んだーー僕という存在を残して。
なぜ彼女は僕を助けた。なぜ彼女は死んだ。
わからない。わからない。わからない。
世界は僕を傷つけるだけで祝福を与えない。だから、僕は世界の悪に染まる。こうすれば、最後は誰かが僕を殺してくれる。憎しみは強さだ。僕が一番知ってる弱い心だ。きっと願いを叶えてくれる。
夢の世界はすぐ近くにあるはず。
それを彼女は許すはずもないと確信しながらーー。
肉体 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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